第一章 新米女中と嘘つき皇后③
◆
ニジェナの専属女中になって一週間。コチュンは
蓮華の宮には、ほかにも下働きをする女中や、
だから、コチュンが皇后付きの女中として蓮華の宮に入ったことは、ほかの使用人たちに大きな驚きをもたらした。
「若いのに皇后付きだなんて、どうやって取り入ったんだい?」
蓮華の宮の女中たちは、ちびで
「でも、あなたが来てくれてよかったわ。わたしたちは皇后様に
蓮華の宮の女中たちの言う通り、コチュンはニジェナのすべてのお世話と、自分の親世代より年上の使用人たちの
「ああ、元の仕事に
あまりの重労働に、
「おい、急に大声を出すなよ、びっくりするだろう」
すると、本を読んでいたニジェナが文句を飛ばしてきた。コチュンは、このひどい労働
ニジェナは愛用の
コチュンがぼんやり眺めていると、ニジェナが本から目を離した。
「団子、何をボーッとしてるんだ」
「な、なんですか、その〝団子〞って……」
急に
「お前の呼び名だよ、ぴったりだろ?」
にやりと笑うニジェナに言われ、コチュンは金物の
「わたしの名前は、コチュンです」
「団子、おれは
ニジェナは聞き入れてくれないどころか、
ニジェナは確かに美しいし、ユープー国の文化もよいものだと思う。でも、ニジェナは噓の皇后でしかないのに、あの
「ニジェナ様、皇后付き女中がわたし一人というのは、仕事に支障が出ると思います」
ニジェナにお茶を淹れながら、コチュンは思い切って切り出した。すると、ニジェナは青い
「支障が出る?」
「わたしだけでは、ニジェナ様の身の回りのお世話をするのにも
コチュンからしてみれば、かなり勇気を
「お前はバカなのか? さらに他人を近寄らせるなんて、
「ば、ばかって……。わたしは、ただ提案しただけです」
コチュンが弁明すると、ニジェナは重苦しいため息をついた。
「なんでおれが部屋に閉じこもってると思う? 自分の正体を知られないために、わざと人に会わないようにしてるんだぞ。お前以外に他人を近くに置くなんて、今までの努力を台無しにするも同然だ」
「でも、使用人は必要でしょう? わたしが蓮華の宮に入るまで、ニジェナ様の部屋は
コチュンが負けじと言い返すと、ニジェナは一瞬、図星を突かれた顔をした。
「うっ、うるさいっ。お前を傍に置いているのは、お前の
その言葉に、コチュンは刺すような視線を返した。
「あなたこそ、どこの誰だかもわからない噓つきの
コチュンはぴしゃりと言い放つと、くるりと背を向けて歩き出した。
「おい、どこへ行く!」
「王宮の外に食事をとりに行きます」
「勝手に外に出るなんて、許さないぞ!」
ニジェナはコチュンの腕を
「わたしがどこで何を食べるかまで、あなたに強制されるいわれはないでしょうっ。ご安心ください。わたしも命がかかっているので、絶対に秘密を漏らしませんから!」
コチュンがはっきりと主張すると、ニジェナは
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