涸れた涙
思い浮かんだことを書こうとして、ピタリとペンを止めた。
顔を上げ、深く息をつく。
だめだ。これ以上書いたらどんどん沈む。
ペンを置いて、大きく伸びをした。
目頭がキュンと熱くなる。
あくびのせいで涙で視界が滲む。
それも僅かな時間で、すぐに視界は鮮明になる。
涙がこぼれて頬を伝うことはない。
――いつから、泣かなくなったのだろう…。
ゆっくりと瞳を閉じ、思い起こしてみる。
いつだったかも、なぜだったかも、もう忘れてしまったけれど、大泣きしたことがあった。
それはもう、一生分の涙を使い果たしたのではないかと思うほど。
とても悲しくて、寂しくて、切なくて、苦しくて、たくさん泣いた。
それから、泣かなくなった。
無意識に泣くまいとしていた。
いつしか「泣かない」じゃなくて「泣けない」になった。
泣きたくなって、目頭が熱くなって、でも涙は絶対に出ない。
その事実に溜め息だけがこぼれる。
その事実に余計泣きたくなる。
涸れた涙は戻ることはなく、ただ雨にうたれるだけ。
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