南都編 その14 カッとなってやった、もちろん反省はいっさいしない!!
俺が斬り裂いた目から血を流しながら、その痛みに床をのたうち回る教国の偽聖女こと『異世界の魔女』。
とっさのことで今は転がってるけど、魔女ってくらいだから放っておくと自分で治療くらいは出来そうなので、魔法を使えなくした上で拘束を・・・俺、そういう関連の魔法もスキルも一切持ってないや。
攻撃特化ってわけでもないんだけどね?
「聖霊様!どなたかこの魔女が魔法を使えなくすることとか『ワン!』黒柴ちゃんが出来るんだ?お願いします!ついでに体が動けないように拘束または脱力させる『ニャン!』いや、確かに燃やして灰にすれば全部解決するけれどもっ!それはこいつから話を聞いてからで・・・てか体は縄か鎖で縛ればいいだけか。近衛兵!その偽聖女を今すぐ拘束するように!」
「はっ!」
いちいちこちらに無駄な確認をしてこないのはさすが王様付きの騎士といったところか。仕事が早くて助かる。
闇の聖霊様により魔法も封じられた上、近衛兵三人に押さえつけられて縛り付けられる顔を血で真赤に染めた女。なかなかのショッキング映像だな。
そうこうしてる間に突然のことで唖然としていた、その場に集まっていた全員も少しずつではあるが冷静さを取り戻してゆく。
・・・もちろん偽聖女と一緒に教国から来た外交官である司教たちも例外ではない。
「な、何を・・・いったいどういうつもりで聖女様にあのような行いをされたのか!?ラポーム候が頭を下げる程度の謝罪ではとても許されることではありませんぞ!!」
抜き身の血の付いた刃物をぶら下げてる人間に苦情を呈する勇気、なかなか肝の座った坊主だな。
なんとなくコーネリウス様が目で『そいつらも斬るのかい?』って問いかけてきてる気がするけどそんなことしないからね?まったく、人を何だと思ってるんだと。
この連中も魔女の仲間には含まれるけど魅了で支配されていたわけだからね?
・・・もちろんこの後の流れではそういうこともなくもないんだけどな!
「最初から謝罪をするつもりなど一切ないから安心しろ。そもそもキルシブリテ王国、国王陛下及び国家の重鎮に対し魅了の魔法を使用したルクレシア神聖教国の傀儡にせんと目論んだ魔女を討伐しただけだ、それの何が悪い?貴様ら無能な教国の人間も全員あの女の術に嵌っていたこと、魔法の解けた今ならその身でわかるだろう?教国人は助けてもらった礼も言えないのか?」
「なっ・・・そのような、そのような事実あろうはずがないだろう!そこまで言い切るからには侯爵には証拠があるのだろうな!?」
「ほう・・・貴様は事実であると認めないのか?それならばその隣に座る・・・何某もその男と同じ意見ということでいいのかな?」
「当たり前であろう!!友好国に対してこのような暴挙、とても許されることではございませんぞ!!」
そちらからいろいろと仕掛けておきながら友好国とは聞いてあきれるが・・・。
まぁ彼らの立ち位置的にね?自分たちも魅了されてたって気づいたとしても、外交官という立場上、この場でそれを認めるわけにはいかないからね?
でもほら、周りの状況とか考えるべきだと思うよ?例えば身内にちょっかいを出されてはらわた煮えくり返ってる俺の顔とかさ?
「そうか。なら納得させるには証拠を見せてやるのが一番だろうな」
「ええ、そのとおりです!!ぜひとも、この場で!!今すぐに聖女様が魅了などという外法を使ったという証明をしていただきたい!!」
「いいだろう。見せて・・・いや、聞かせてやろう。貴様ら自分自身の口から貴様らの悪事をな」
『何いってんだこいつ?』って表情で数秒ぽかんと放心する教国の三人。
もちろん頭の回転が遅い人間が外交など任されるはずがない――とも言い切れないんだよなぁ・・・こいつらと同時期に頭の回転が遅いどころか頭が付いてるのかどうかも怪しい人間を外交官として送り込んできた蛮族がいるし――ので俺の言わんとすることにすぐ気づきそのばで数歩後退りする。
何をするのか?聞かなくともわかるだろう。
自白の魔法?そんなしち面倒臭いことしないよ?
痛みに慣れていないインテリ階級なんてちょっと体に聞けば何でもペラペラと喋り出すさ。
もちろん性的な意味じゃないからな!!
いきなりの俺とコーネリウス様の入室から始まる魔女退治、そしてその場に居合わせた教国人三人の拷も・・・尋問が進み、その口から今回の企みの全貌・・・が聞こえることはなかったんだけどね?
司教なんていっても教国にはいっぱいいる使い捨てみたいな連中だからさ。
しかし自分たちも魔法にかけられたいた事は本人たちの口から出たわけで。
「なら次は直接偽聖女殿の口から詳しい説明をして頂こうか。ああ、別に言いたくなければ何も言わずとも構わないからな?むしろその身が形もなく朽ちるまで口を開いていただきなくないものだな。教国の偽聖女ディアナ・アルテミス。いや、異世界の魔女『マイカ・カネシロ』嬢とお呼びする方がいいかな?」
目の治療・・・はしていないがその傷口程度は塞いでやったので部屋の片隅で大人しく震えていた女にそう告げる。
てかディアナ・アルテミスってなんだよ。無理やり日本語に訳すなら『月野月』みたいな名前だな。某有名海苔屋さんかよ。
「えっ・・・・ど、どうして・・・こちらに飛ばされてきてからは一切名乗っていないはずの私の本当の名前をあなたは知っているの?」
震える声でそう問いかけてくる魔女。
俺には被虐趣味(Mっけ)も嗜虐趣味(Sっけ)もないのでまったくそそられない。
てかおっさん三人の尋問でちょっと冷静になっちゃった俺がいる。
まぁここで素に戻るのも何なのでこのままの態度で・・・いや、欲しいのは情報であってこの人をいぢめることじゃないからなぁ。
「ふっ、その程度のこと何ほどの物だと思っているのか。王国の双璧の一つであるキーファー家の、白狼と呼ばれる方の諜報力を舐めないでいただきたいな」
もちろん知ってる理由は『魔眼で視た』からなんだけどね?
そして場内の(コーネリウス様以外の)皆の畏怖の視線が一斉にコーネリウス様に向く。
コーネリウス様本人は目を見開いて、『何言ってくれてんだコイツ!?』みたいな顔で俺のことを見てるんだけどな!
「なるほど・・・先の戦争でも皇国軍、そして帝国軍の動向をいち早く察知していらしたみたいですものね・・・では、それではもう分かっているのでしょう?私がどういう立場の人間で、これまでどのような目に会い、どうしてこのようなことをしなければいけなかったのかを!!」
演技ではなさそうな、悲痛な声でそう叫ぶ魔女。
いや、そんなこと全く何も知らないし興味もないんだけどね?
「今のあなたは他国に捉えられた罪人。あなたがこれまで置かれた立場も都合も関係ないのですよ。今までのこと、これからの予定などすべて話していただけますかね?あなたが最初に迷い込んでしまった国の、胡散臭い利己的な指導者とは違い、キルシブリテ王国の国王陛下はお優しい方、情報と照らし合わせて内容に嘘がなければこれまで、そして今回の罪に対しての情状酌量を考えてくださると思いますよ?」
たとえば拷問してから処刑の予定をそのまま処刑に・・・とかな。
何かを考え込む魔女・・・いや、あの顔はすべてを諦めた顔だな。
少し追い詰めすぎたか?
でも身内に手を出された俺がこいつに優しくしてやる通りもないしなぁ。
かといって教国の情報は欲しい、あわよくばこいつを利用して他国にも教国の悪事と利用された国の愚かしさを喧伝したい。
俺のかわりにこいつをだまくらかせそう・・・ではなく、優しく説得出来そうな存在・・・一人というか二人いたわ!
「はぁ・・・魔女殿のような方とはこのような形で出会いたくなかったですね・・・いきなりのことであなたも混乱しているでしょう?ですので少し休憩・・・そういえばマイカ嬢は異世界、『日本』と言う国のご出身で間違いないでしょうか?」
「えっ!?日本!?あなたは、この国の方は日本のことをご存知なのですか!?」
「ええ、多少は・・・といっても同じ様に日本からのお客人からの聞きかじり程度のことしか知りませんけどね」
日本からの客人、そうだね、ヤマナシ姉弟だね!
うん?どうしていきなりあの二人の情報を出したのか?もちろんカッとなっていきなり斬り掛かった俺より情報を引き抜きやすそうだからである。
一言で言えば丸投げだな。だってダウナー気味の人生諦めた相手と話すのとかめんどくさいじゃないですか?
姉の方は冷静で損得勘定も出来るし案外演技派だからさ、年上相手でも余裕で丸め込めるだろう。
弟の方は・・・ダーク姉妹の本質すら見抜けてないヤツだからなぁ。
いや、女性にダメンズ好きな人間がいるように、もしかしたらダメウイメンズが好きなヤツという可能性も?
―・―・―・―・―
相変わらず更新の遅すぎなあかむらさきですm(_ _)m
某作業がほぼ完了、あとはその時を待つだけとなりましたのでこれからはもう少し更新頻度が上がると思いますのでお許しを・・・。
そして某作業の中身!MFブックス様のHPを欠かさずチェックされている方ならもうご存知かと思いますが、
『使い潰された勇者は二度目、いや、三度目の人生を自由に謳歌したいようです』
二巻の発売&発売日が『9月25日』と決定いたしました!
いや、もうね、いい、とてもいいんです!(内容が伝わらない自画自賛・・・)
おそらく月が変わればHPやAmaz○n様で表紙、口絵が公開されると思われますので『アリシア王女』、『ヘルミーナ嬢』、『ヴェルフィーナ嬢』、そして『ウサギさん』ファンの方!是非ともその勇姿をチェックしていただければ嬉しいです!!
(※いつものメンバー&コーネリウス様もいます♪)
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