南都編 その13 異世界の魔女

「まぁでも、そう言われても王国から教国までは結構な距離がありますしねぇ」

「確かに。教国は帝国、都市連合のそのまた向こうにある赤い風の砂漠の向こうだからね」

「よくよく考えなくてもそんなクソ遠いところからこんな極東の地までちょっかいかけてこなくても良さそうなものですけどね」

「相手は宗教国家だからね。私達では何を考えてるのかなんて理解できないさ」


ん?都市連合って商国と同じ様な名前だけど違う国なのかって?いや、まったく違う国だよ?

確か帝国のアレコレ(内乱騒ぎ)の時に名前は出てたと思うけど都市連合、正式には『パンダ都市連合同盟』って言うらしいんだけどさ。

レッサーの方だったら腹が真っ黒な人間しかいなさそうな国名だな。

覚えているとは思うけど、一応他の国の正式名称もおさらいしておくと、


俺が居るのが『キルシブリテ王国』で、俺命名おっぱい山脈(牡鹿の角山脈)を越えた西にある帝国が『べイオニア帝国』。

北は黒竜が住んでいた黒竜の塒(悪竜山脈)の向こう側にある皇国が『ヴァルタン皇国』で南都の南、白龍の背骨とも呼ばれる龍骨山脈のさらに向こうにあるのが商国こと『アルティール商業連合国家郡』。

帝国のさらに西隣に行くと都市連合こと『パンダ都市連合同盟』があってそのまた南西にある荒れ地『赤い風の砂漠』を挟んだ向こうが教国と呼ばれる『ルクレシア神聖教国』である。

もちろんこの他にも国は大小様々、いっぱいあるけど王国とは接していないし通商関係もほぼほぼ無いので以下省略。

いや、獣人国(わん子の話ではマッサラム獣人国というらしい)だけは是非とも訪れてみたいんだけどさ。だって国単位で全員モッフモフなんだよ?・・・問題は女の子だけじゃなくおっさん及びじいさんばあさんまでモフモフしている点だな。

老犬とか老猫は可愛いけどそれが人形(ひとがた)になると、とくにおっさんの姿だと愛しきれる自信が無いよ・・・。


「てことで残念ですけどこの度はご縁がなかったということで」

「そうだね、普通に考えればそうなるよね?でもほら、こっちから行かなくともご縁が出来ることってあるじゃない?」

「・・・もしかして向こうから来ちゃってる感じです?」

「・・・正解!てことで今晩はこちらで歓待よろしくね?」

「えっ?さすがに冗談ですよね?そういう話って普通半月とかひと月とか前に連絡が来るもんでしょう?当日に言われてはいそうですかと数時間で晩餐会の用意なんて出来るはずないじゃないですか」

「そうだね、ハリス以外には絶対に出来ないよね。もちろん私もこんな馬鹿げた話を受けるなんて思っていなかったし絶対に無理だと反対したんだけどね?陛下や父上含めて他の方々がどうしてもときかなくてね・・・」


そんな何のメリットにもならない信頼なんていらねぇYO!!

しかしあれだな、うちの王女様やご貴族令嬢様といい、帝国の皇女様といい、白い人といい、この世界の偉い女性は腰が軽すぎではないだろうか?

そして出来る出来ないで言えばもちろん出来るんだけどさ。少なくとも敵認定している国の人間、それも聖女なんて名乗ってる胡散臭い『異世界人』だと思われる外見をした人間を自分家に招待するとかまっぴらごめんなんだけど?


・・・てかそれ以前の話としてちょっと、いや、かなりオカシナ話だな。

陛下はまぁ?向こうさんから俺に歓待させろと言われたらそれを俺に伝えるくらいはすると思うんだよ、俺がそれを断るのも踏まえてさ。

そして他の、あまり面識の無い貴族連中もこれ幸いと俺の足を引っ張る・・・とまではいかなくとも少し困らせてやれとそれに乗っかるのは仕方がないと思うんだよ。この国では電信柱、むしろ巨大なオベリスクレベルで出過ぎた杭だからね?俺。

でもガイウス様含めて他のお義父さんたちが反対せず賛成に回るなんて・・・あり得るだろうか?だって俺の性格とかこの屋敷の特異性を知り尽くしてる人たちだよ?

久々に魔眼を使いコーネリウス様の状態を確認・・・肉体的にも精神的にも異常は見当たらないな。


「・・・あまり状況がよろしくない感じですか?」

「・・・現場に居なかったハリスが気づくくらいならどうやら私だけの思い過ごしってわけではないみたいだね。やっぱりそう思うかい?」

「それならそれで最初からそう言ってくださいよ!!皇国のおバカの話なんてどうでもいいでしょうに!!このまま王城まで・・・いえ、用意したいことがありますので少しだけお待ち下さい!!」


俺が聞いただけで疑問に思う程度の話に現地でその方々と接触していたコーネリウス様が気づいていないはずもなく。

まぁそれなのにこれだけ落ち着いているってことは今すぐどうこうなりそうな危険性はなかったんだろうけど・・・。



そこから半時間ほどで準備を済ませ、『ソレ』をメルティスとサーラ、もちろん自分とコーネリウス様も身に付けて黒馬車で王城まで急いで向かう。

もちろん『ソレ』以外にも万全に対策をしておきたいのでうちで暮らしている水の聖霊様(ラッコちゃん)に集合をかけてもらって王国の守護聖霊様(+1)大集合である!

相手は聖女なんて名乗っている異世界人だからね?聖霊様全員におやつ・・・ではなく各々の属性の魔水晶を食べてもらいエネルギーチャージも万全だ。

うん?『ソレ』って何かって?もちろん黒魔晶を使った『精神魔法抵抗の首飾り(魔導具)』である。緋緋色金も使って性能をオーバーブーストしてあるし、俺自身は魔力値もあげてあるのでそうそう精神魔法――おそらくなんらかの魅了の力――にはかからないだろう。


それなりに登城はしているので見知った門番には止められることもなく王城に入ってゆく黒馬車。

城門前で車を下りてコーネリウス様と二人並び、大急ぎで・・・行きたいところだけどこちらは王国の重鎮を人質に取られているも同然なので何事もない、何も気づいていないというよう、いつも通りに見えるように城の奥に歩いてゆく。

城内各所で控えているメイドさんの話では陛下たちはまだ聖女たち教国人と一緒にいるみたいだ。

謁見の間というほど堅苦しくない応接の間の扉を開くと中にはにこやかに談笑する国王陛下を筆頭に王国貴族の面々と教国関係者。真ん中に座る、コーネリウス様に聞いた外観のままの女・・・どうみても日本人の若い女。あれが聖女か。


「おお、ハリス。聖女殿に会いたくて自ら出向いたか!」


何が楽しいのか、暢気に声をかけてくる国王陛下及びその場の王国貴族を魔眼で見てゆくと全員に『魅了:異世界の魔女』の表示。

いや、王国貴族だけじゃなく教国人まで魅了状態なんだけどさ。


「黒柴ちゃ・・・闇の聖霊様、室内の全員の状態異常の治療をお願い!・・・聖女様、いや、異世界の魔女殿、少々おいたが過ぎるのではありませんかね?私は身内に害をなされて笑って許すほどおおらかな心の持ち主ではないのですよ?」


腰から剣を抜き放ち、黒柴ちゃんの力で魅了の解けた面々が今の状況が理解しきれず何があったのかと、ポカンとこちらを見つめる中ゆっくりと聖女・・・魔女に近づく俺。

目を見開き、慌てながらもこちらに向かってその力、『魅了の魔眼』のギフトを使ってくるが残念ながら対策は万全である。


「ど、どうして力が効かないのよ!?ま、待って!違うの!私のせいじゃないの!全部やらされてることなのよ!悪いのは全部・・・ひぃぃぃぃぃっっっっ!?あああああああああ!!」


剣を横に一閃、その両目を斬り裂く。話しかけてくる女性に向かってそれは酷い?

いや、言い訳がしたいならせめてその力を俺に向けずに話すべきだと思う自分は間違ってないよな?


―・―・―・―・―


更新が遅すぎて◯亡説が流れてきそうなあかむらさきです♪

アレでソレな作業に追われておりまして申し訳ございませんm(_ _)m


聖女様、2パターンのどちらにするか今でも迷ってたりしますのでもしかしたら書き直すかも・・・

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