☆一巻発売記念☆ エデンへようこそ!(その2)

今回も令和生まれの方にはわからないネタ満載でお送りします!

いや、令和生まれの子はまだカクヨムを読んでないだろうけれども・・・


―・―・―・―・―


歓楽街にその建物が出来たのはそれから三日後。

一から設計デザインをしたことを考えればほぼ超特急の仕事である。

まぁ設計とか内装は全部ヤマナシ姉の仕事(趣味)なんだけどね?


外観は「ドーリア式の大きな神殿にしましょう!」と言われたので白亜のパルテノン神殿っぽい建物になった。

もちろん柱が建ってるだけじゃなくちゃんと壁に囲まれてるからね?

てかドーリア式とかコリント式とかネジ式とか言われてもわかんねぇよ・・・。

図面があるからその通りに建てるけれどもっ!

真っ白な神殿の入口には吸い込まれそうなくらい真っ黒な、重厚な扉が設えられており、その扉を開くと横幅十m、縦幅三十mの玄関ホールとなっている。

天井にはガラスがキラキラと光りを反射する巨大なシャンデリアが二つ吊り下げられ、床には真っ赤な絨毯が敷き詰められたお出迎え用のエントランス。


「ここで左右に数十人の男前を並べて『メロメロにようこそジュリエッタ!』ってやってください」

「もしかしてだけどメロメロって店名なのかこの店?」


絶対に流行らねぇだろその店・・・。

そしてこちらも絶対にそんな出迎えをしたくないので拒否したんだけど・・・ヤマナシ姉が頑なに譲らない。

仕方がないので店名を変更して「エデンにようこそマイエンジェル!」で妥協した。

いや、最初のがあまりに酷くて妥協しちゃったけどこれはこれでそれなりに、最初のモノと比べても遜色なく恥ずかしい出迎えだよな?


エントランスに並んでいるキャストからその日のホストをお客が指名すると腕を組んで奥にある金色の扉をくぐってご入場となるわけだな。

もちろん扉を開くのはホストではなく黒服の役目である。

言われたままに作ったけど金色の扉とかむっちゃ悪趣味だな・・・。


あとホストが集まっている所でヤマナシ姉が

「うちの店は永久指名などと言う生ぬるいシステムは採用しない!そう、夜の世界は弱肉強食なのだ!一期一会の精神を持ってゲストを心より楽しませ、そして次回もお客様から指名して頂けるよう精一杯努力するように!」

などと激を飛ばしていたが次回など存在しないのだが・・・。


扉をくぐって奥に進むと先ほどとは比べ物にならない大きなパーティルーム。

地下部分二階、地上部分一階分を使った、三階層吹き抜けになった楕円形の空間。

先程のエントランスの比ではない、真昼の明るさに照らされた広間が広がる。

この世界で夜にここまで明るい場所はうちの屋敷とここ以外皆無じゃないかな?


入口から左右に広がる階段を下り、踊り場からまっすぐ、さらに階段をおりれば広く取られた空間にマーライオン・・・ではなく、ドラゴンの噴水。

噴水っていうより温泉のお湯が出てくるところみたいだけど噴水なのだ。

その隣、一段高い場所には黒く磨き抜かれた大きなグランドピアノ。

『グランド』って付いてるんだから大きくて当然か。


それらを中心にぐるっと囲むように接客席が設えられ、最奥にはレースのカーテンで仕切られたひときわ広いVIPルームがある。

壁、床、天井、テーブル、ソファなどなど無駄に指定が細かったので事細かに装飾などを説明してると一日で終わりそうもないので建物の話はこれくらいで終わるとして


「とりあえずオープニングキャストとして暇そうな知り合いとその知り合いを集めてみたけど服の威圧感も相まってチンピラの集団みたいだな」

「ハリス、流石に義父をつかまえてチンピラはどうかと思うよ?あと私が既婚者だってわかってるかな?女性をエスコートするのはやぶさかではないんだけどね?もしもうちの奥さんに見られでもしたらとんでもないことになるんだよ?」

「ちなみにまわりの連中のチンピラ感の原因の半分以上はインテリヤクザにしか見えないコーネリウス様が原因なんですけどね?あと義父ではなく義兄ですのでお間違いなく。そして義母さんも奥様も妹さんも娘さんもご来店予定なので大丈夫です」

「もしかしなくてもハリスは私を殺しに来てるよね!?」


こちらもヤマナシ姉のデザインで、男連中が着ているのは某ミナミの金貸しくらいしか買わないような、バブリーな原色系のスーツ。

肩パットの入ったダブルのショート丈ジャケットとタックの大量に入った裾を絞ったパンツに先端部分が長く尖った革靴。

そいや、ヤマナシ姉プロデュースでショータイムには歌って踊る予定だったのだがピアノ演奏でその歌は絶対に無理だと思いまそいや。


人のことは言えないけど女子校生がどうしてそんな古いグループ(?)の振り付けを完コピして覚えてるんだよ。

年齢詐称疑惑から『女子高生』が『女子校生』になっちゃったじゃねぇかよ。

あとローラースケートなんて誰も履けないから『頭中将の妹婿』も無理だから。下手したらコケて死人が出るわ。



キャストには物凄い嫌そうな顔をしていたエオリアや義父の寄り子の少貴族の中から暇そうな男前各種、バラエティ枠にじゃがいもとオッサン卿を取り揃え、上客向けにコーネリウス様、そしてルックスがイマイチ地味なうちの王太子の代わりに帝国から第二皇子を連れてきた。

じゃがいも勇者は演奏担当なんだけどね?あの顔でピアノが弾けたりするらしい。


少し前に

「いや、俺、ピアノとか猫ふんじゃったくらいしか弾けないんだけど!?」

「あんた、このご時世に猫を踏むとか蹴るとか言うと大問題になるわよ?あと弾けないとかいうのはただの甘えだからね?弾けるようになるまで命がけで練習しなさいよ!!」

「あくまでも曲の話だよ!俺が猫を虐待するわけじゃないよ!むしろそんな場面を見かけたら率先して助けるよ!てかどうしてピアノに命をかけないといけないんだよ!このまえの『ハンゾウ』といい俺はどこを目指してるんだよ!」

「文句の多い弟ね!あれよ?このプロジェクトには私の嫁入りとお手つきがかかってるんだからね?もしも失敗なんてしたら商国のときみたいにサーラ様に言いつけて全裸磔にしてもらうわよ?」

「マジ止めろよ!?あの人冗談が通じなさそうどころじゃなくまったく通じない人なんだからな!?本当に吊るされるから絶対に止めろよ!?」

なんて会話をしてたけど本当に弾けるんだよな?

あとサーラは普通に冗談も言うし笑顔の可愛い奥さんである。


「ハリス、帝国から付いてきておいて今更だが・・・これはなんなんだ?」

「細かいことは気にしないで大丈夫です。今から女性が来店しますのでいつも通りオラついていただければ問題ありませんので」

「そもそも私は女性にオラ付いたことなど無いのだが?どちらかといえば気のいい、優しくて頼りがいのある皇子様で通ってるのだが?」


いや、知らんけど・・・。


「あとおっちゃん、表情が固まってて怖いからもう少し笑顔に・・・いや、そもそも笑顔に爽やかさのカケラも無いからどうしようもないか。特殊メイクでもする?」

「普通のおっさんはお貴族様通り越して王族の方と同席したらこんな顔になるもんなんだよ!坊主のせいでそろそろ王都に来ることがトラウマになりそうだわ!」

「まぁ最初から色物枠だし問題ないか」

「わかっちゃいたけど凄まじく失礼だな!?」


などと賑やかな感じでこれからやることの説明と準備は進んだ。




「「「「「エデンにようこそマイエンジェル!」」」」」


開店時間の十八時、表には招待状を受け取ったお姉様とお嬢様が続々と集まる。

プレオープンってことで本日は完全無料!各地から取り寄せた高級酒や高級食材も食べ飲み放題だからね?

もちろんプレオープンと名乗ってはいるけど正式オープンの予定はない。

例えるなら『ビックリするくらい金のかかったおままごと』だろうか?

本当は知り合いだけ集めて遊ぶ予定だったんだけどオースティア様やマリア様の下着やアメニティなどの販売ルートからいろんな方面に情報が流れたらしく・・・仕方なく招待状を各所に(お姉様方が)ばらまいたんだよなぁ。

とりあえず貴族の派閥関係の話とか関わりたくないのでそちらで処理してくださいね?


―・―・―・―・―


サラッと終わらせるつもりだったのに何故だかまだ続く閑話。

そもそもタイトルの幼女組がまだ登場していないと言う・・・(笑)


『使い潰された~第一巻』好評発売中となっております♪(ダイマ)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る