南都編 閑話 元メイドさんの再就職

公園の次は今回のメインとなる施設である『百貨店』というかショッピングモールというかデパートというか。

もちろんそれらの違いはまったくわからない。

ショッピングモールは屋内に吹き抜けの中庭(?)みたいなのが有るイメージ。

あとよく潰れる。お前のことやぞ!○○○モール!


まぁそんなことはどうでもいいとして。

今回新しく王都に出来た巨大商業施設である。

もっともまだ開店予定なのは地下一階の食料品売場と一階に全部まとめた専門店だけなんだけどさ。

売れる商品、まだまだ数が少ないから食料品以外はほぼ予約販売と言うか受注生産なんだけどね?


さて、デパートなんだけど・・・オープンしようと思ったら商品以外にも必要な物、否、者がある。

そう、売り子さん、店員さん、デパガ、マヌカンなどなど呼び方は色々在るかもしれないけどいわゆる従業員さんだな。

今、市中で営業してるお店自体も家族経営に毛が生えたような店か丁稚奉公真っ盛りの江戸時代みたいな店しかなく。

そうだね、一から育てないとどうにもならないよね。


そして育てるとしても人員をどうすればいいのかわからない。

だって、ある程度の計算が出来る地頭があって、接客が出来るだけの社交性があって、貴族相手でも最低限相手を怒らせないだけの礼儀作法がなっていないと駄目なんだもん。

優秀な人材はすでにどこかの貴族やお金持ちの家などで働いているのだ。


「そんな人材が大量に欲しいんですけどどうにかなりませんかね?とりあえず二百人くらいで大丈夫です」

「むしろ南都でもそんな人材を大募集してるんだけどな?てかいきなり二百か・・・」


義務教育とかない世界でそんな人間を探すことがどれだけ難しいと思ってるんだこのコケシ少女は・・・。

てことで、困った時の王族&大貴族頼み。

アリシアとスティアーシャに相談してみる。あ、白い人も居たんだ?

いや、別に出て行けとかじゃないからそんな泣きそうな顔にならなくていいけどさ。


「ふむ・・・おそらく商売などはしたことがないだろうからそのあたりは教育が必要であろうが今ならそれなりの人数をそろえられるのではないかな?」

「ああ、確かに今ならそろいそうだな。さすがにあれだけのことがあったので喜べることではないのだがな・・・」


いきなり何かに思い当たった黒い人。

いや、あなた他所の国のお姫様ですよね?

どうしてそんな王国事情に詳しいんですかね?

アリシアも納得してるみたいだから同じ様に何かに思い当たったみたいだしさ。

やはり全部嫁任せで俺はヒモ状態でいるほうがいろいろはかどるのではないだろうか?


てことでそちらもヤマナシ姉とお姫様二人――ああ、白い人も手伝いたいんだ?――姫様二人と捕虜一人に任せることに。

フィオーラや、リリアナや、ヴェルフィーナも内政面の力はあるけどやはりヤマナシ姉を含むこの三人(四人?)は行動力って言うか行動範囲が違うからなぁ。


二人の話によると


「なるほど、先の戦争で亡くなったり取り潰された貴族家に仕えていた使用人や兵士の未亡人の雇用か」

「ああ、それなりの一時金などは支払われているがいつまでも生活できるほどの金額ではないからな」


なんとはなしに白い人に全員の視線があつまる。諸悪の根源の国出身者だからなこいつ・・・。

うん?帝国皇女も似たようなもの?

戦争に反対したスティアーシャは城の奥に押し込められてただけだからかなり違うんだよなぁ。


「どうせならメイドさんや執事経験者だけじゃなく引退した騎士や衛兵なんかも警備隊として再雇用したいところだな。戦争に出るわけじゃないからそこまでの体力はいらないし」

「確かにあれだけ大きな店舗・・・いや、店だけでなく元ダリア地区全体を警らするには既存の衛兵だけでは目が届かぬものな。メイドの件もだが衛士のことも国王陛下に話を通しておこう」

「なら私も皇帝陛下に話しておくとするか」

「いや、俺、帝国では商品の輸出以外の商売とかしないからね?」


帝国にも大量の未亡人とかいそうだけれども・・・。



ちなみに後日集められて話を聞かされた元メイドさんと執事さん、元騎士と兵隊さんの大量雇用に成功したのは言うまでもない。

特に家督を譲るために隠居しただけの、暇を持て余した元騎士や兵士のおっさんや爺さんが大量に集まったのでこちらは素行に問題の在る人間以外は全員雇用しておいた。そして


「ああ、メイドも執事も優秀な人間は南都の屋敷や南都で新しく立ち上げた貴族家(オッサンとエオリア、そのうちヤマナシ家もか?)の屋敷でも雇い入れするからそのつもりで」


と声をかけたら全員の目の色が変わったりだとか、ヤマナシ姉デザインのデパートの制服が発表されたら現職のメイドさんや商家の娘さんなどが雇用希望で大量に押し寄せてきたのはまた別のお話しである。


開店もしていないのに大忙しだな。




「てことでヤマナシ姉、卿の功績を称え、とりあえず女準男爵としての地位をあたえる。ああ、地方貴族ではなく王家の方から都貴族として取り立ててもらうか?」

「なんですかいきなり、なにかのついでみたいな感じで・・・えっ・・・私・・・そんなのいらない・・・」

「うん?どうしてだ?何かの時に地位はあったほうが便利だぞ?」

「だってそれ、受け入れちゃったら閣下のご側室候補から完全にフェイドアウトしちゃうヤツじゃないですか!」


「別にそんなことはないし現状でも側室候補ではないんだけど?」

「なら側室候補、むしろご側室にしてくださいっ!!」

「んー、そのへんの話は俺じゃなく奥さんたちとしてもらえるかな?」

「最近アリシア様たちとはお話しできるようになりましたけど、他の奥様方はものすごく怖いんですよ・・・特にヘルミーナ様、あの方って本当に9歳なんです?転生した異世界人とかじゃないです?」

「そもそもヘルミーナ嬢とちびシア殿下に関しては嫁じゃなくいつの間にか勝手に屋敷に住み着いてるだけなんだけどなぁ」

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