南都編 閑話 これも『国立公園』って言うのかな?

他の施設は徹底した従業員の教育が必要なのでしばらくオープンは出来ないが、こちらは遊具の使い方の説明――使用方法の看板でも立てておけばあとはほったらかしでも問題はないであろう公園施設。

オープン前の視察ということで訪れたのは俺と護衛の二人&ヤマナシ姉弟である。


「うん、ヤマナシ姉が追加の施設が欲しいって言うから自由に追加させておいていまさらだけど・・・なんだこれは?」


そもそもの広さが児童公園どころではなく学校の運動場四面分くらいある『王国公園』。

そこに並ぶのは見慣れた大量の遊具・・・のはずだったんだけど。

もちろんそれらを建てたのは全部俺だからどんな物を設置したのかはわかってるんだけどさ。


「はい、これは・・・そうですね、『ハンゾウ』とでも呼んでいただければ」

「いや、別にこの遊具の名称を訪ねたのではなくてだな・・・」


ハンゾウってなんだよ、どうみてもサ○ケの丸パクリじゃねぇかよ!

忍者繋がりで名前付けたんだろうけど日本人にしかわかんねぇ・・・いや、海外でも人気あるんだよなサ○ケ。


「それで、この大掛かりな施設は遊具なのか?」

「もちろんです閣下。ちなみに遊ぶだけではなく特殊部隊の訓練にも使用できます!」

「それは絶対に遊具とは呼ばないよな?・・・まぁいい、まずは使い方の実演をしてもらおうか」

「はい、畏まりました!ツルギ、お逝きなさい!」

「久しぶりの姉弟水入らずなのにいきなりの無茶振りかよっ!?」


渋々ではあるが姉に良いところを見せようと屈伸などを始めるじゃがいも勇者改めヤマナシツルギ、彼女なし。

うん、年末年始を一緒に過ごした(店の手伝いや年末焼肉会の手伝いをさせられてた)はずのダーク姉妹にはあいかわらず相手にされてないらしいんだ。

てか姉が気持ち悪いものを見る目をしていることに早く気づいてもらいたい・・・いや、あいつ、知っててあんな感じだったわ。真っ当に気持ち悪いヤツだったわ。

メンタルの強さだけは完全に勇者のじゃがいもである。


最初のエリア、トントンと左右に飛んで落ちないように奥を目指すアトラクションの三回目のジャンプで――足を滑らせて池に落ちた。


「おい、この寒空で水面に薄氷がはってる池に落ちたぞあいつ」

「大丈夫です、私の国では馬鹿は風邪を引かないという迷信がありますので」

「迷信っていっちゃってるじゃん、大丈夫要素ないじゃん。そして最初の最初で失敗してて一切あの施設の説明になってないと思うのだが」

「大丈夫です、最後まで到達するまで何度でも最初からやり直させますので」


失敗したら最初からスタートしないといけないんだ?

自ら水からあがってきたじゃがいもを再度走らせるヤマナシ姉。こいつ・・・鬼か?

ちなみに俺、それほどあの番組を見たことがないから初めの左右にジャンプしながら進むヤツくらいしかよくしらないんだけど見てる分には面白いな。

ドラム缶みたいなのに抱きついて進んだり、壁に両手足を踏ん張りながら滑っていったり。

最後の関門、綱登りに到着するまで何度も何度も池に落ち、寒さで真っ白な顔&真紫の唇というヘビメタバンドみたいな顔になっているヤマナシ弟。


「どうしたの?早く登りなさい、あんたが池に落ちまくるから見てるこっちまで寒いうえにそろそろ飽きてきたんだから」

「見てる姉ちゃんより落ちてる俺の方が圧倒的に寒いんだからな!?せめて焚き火、最低でもバスタオルくらいは用意しておいてくれよ!たぶん明日から熱出して寝込むからちゃんと看病してくれよな!?いやそうじゃなくて!これ、命綱とか落下地点に網とか無いじゃん!落ちたら大怪我するヤツじゃん!」

「関西人ならおいしいと思いなさいよ!」

「関西人でもお笑いに命まではかけてないんだよ!」


まぁあれでも勇者だからね?

ただロープを上まで登りきるくらいは普通にクリアした。

そしてそのあと「私もやってみたいです!」というサーラと「なら私も付き合うか」とそれに続いたメルティスがラクラクと最後までクリアしたのを見たじゃがいもが本気でガチ凹みした。

勇者より二人のほうがレベルも高いしそんなもんである。

俺?俺はほら


「いや、アトラクションなんですから全部ジャンプだけで越えるのはどうかと思うんですよ。何なんですか?閣下は赤いオーバーオールの配管工なんですか?あとロープを使わないで垂直跳びでゴールするとか人間の身体能力じゃないと思うんです・・・」


まぁなんだ、ステータスの基礎値が違うから仕方ないね?

そしてサ○ケ・・・ではなくハンゾウのコースは一般人が遊ぶには危険すぎるので回収。


「閣下、あれはあれで南都に持って帰ってエオリア卿とオッサン卿の体力作りに使えばいいと思います!」

「そうだな、難易度が低すぎるからもう少し改良が必要だと思うがな」


新しく設置されたその地獄の訓練コースを見た南都の警備隊員たちが涙目になったのは言うまでもない。



ああ、もちろんそのあと開放された公園の普通の遊具は大人気だったんだよ?・・・大人に。

まぁ初めて見るような道具ばっかりだからね?子供とか大人とか関係ないよな。

砂場で真剣にお城をつくるおっさん、キャッキャウフフとシーソーしてる爺さん婆さん、日本アルプスで暮らす少女みたいな笑顔でブランコをこぎ続けるおばさん・・・絵面は完全に地獄絵図だけどな!


そして平民地区にあるそれらの遊具で遊ぶわけにもいかない貴族(王族含む)から王城か俺の家にもそれらを設置してほしいと嘆願書が・・・。

いや、どうして家に設置させようとしてるんだよ。

しかたがないので王城の中庭に遊具を設置しておいた。


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月見里真利杏嬢、妙に登場回数が多い説

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