南都編 その11 ダリア地区再開発会議

「これまで長い間問題視され続けながらもこれといって対抗策も出せず放置されていたダリア地区が僅かな時間で更地になってしまうとは相変わらず意味がわからぬな・・・」

「婿殿は西部大湿地ですらあっという間に穀物の大生産地に変えてしまったのであるからな!あの程度の広さの土地を更地にするなど造作もないことなのである!」

「さすがに何もない湿地と入り組んだ王都の中を同じ扱いにするのはいかがなものかと思うのだが・・・。それで、今回集まったのはあの場所の開発をどうするかの話であったか?」


相変わらずの人相の悪い顔で威圧感を放ちながらそのように話すのは北都プリメルを治めるキーファー公ガイウス様、西都セルメルを治めるヴァンブス公ブルートゥス様、東都レマメルを治めるブリューネ公マルケス様の三人。


「あのままでほうっておくと馬鹿な貴族が手を回して勝手な事をするかもしれませんし早急に対応しておくべきでしょうしね」

「勝手をする馬鹿な貴族・・・もしも現れてもラポーム公に潰される・・・か?」

「そうであろうな。いや、この男のことだからな、もしかするとそれ待ちをしているのかもしれぬぞ?」


そしてそれに続くのは白狼(笑)コーネリウス様と皇太子殿下と国王陛下の三人。

『はっはっはっはっ』と高笑いをするこの国の重鎮たちなんだけど・・・この人達は俺のことを罠猟をする猟師だとでも思ってるのだろうか?

あれだよ?別に好き好んで他所の貴族に喧嘩売ってるわけじゃないんだよ?

何故だかわからないけど絡まれやすいだけで。そう、ちょっかいをかけられているのはこちらなのだ!俺は一切悪くはないのだ!


それはさt・・・はっ!?俺としたことが無意識の内に『例のアレ(閑話休題)』を使いそうになっていた。

前回というとそこそこ時間が経っているように思われるけどスラム殲滅戦・・・だと人聞きが悪いな、悪所浄化作戦を敢行してから五日間。

俺の隣に座り寝不足で黒く凹んだ瞳を爛々と輝かせるこけしのようなヤマナシ姉(一応弟も用心棒で参加予定)が王都で開業することになった『高級八百屋』の設計図を完成させたので、それをもとに俺&嫁のアリシアと何故か最近やたらと仲の良い帝国皇女スティアーシャ、そして役に立ったのかどうかはいささかどころかおおいに疑問な皇国皇女セルティナが完成させた『ダリア地区再開発』のプレゼンをしている俺達。


もちろんわかってるんだよ?どう考えても八百屋の敷地面積ではないことは。外観とかも難波にある高○屋っぽいしさ。

そう、これから建てようとしているのは『高級八百屋(地下食料品売場)』を備えた『五階建ての高級デパート』なのである!

「そんな巨大なショッピングセンターを建てて需要があるのか?」とも思わないでもないけど・・・そもそもそこに並べる商品、食料品は南都の迷宮産である農作物や香辛料がメインで、こちらも南都に移住してもらった職人が作った高級武具とか高級寝具とか高級装身具などなどのうち(南都だな)で生産される産物を並べておくだけ。つまり仕入れ値は限りなく抑えられる。


そして出費は人件費以外――もちろん儲けに対して国に納める税金は必要だけど――土地は無料レンタルで言質をとってあるし、水道光熱費は魔道具を使えば魔水晶代が俺に入ってくるし、二階以上は様子をみながらオープンしていけば人件費も最低限でいいしで特に問題は無かった。

とうぜん今回用意できた土地はデパート一件で敷地がうまるほど狭くはないからね?

デパートに隣接させてフードコートのような誰でも気軽に利用できる飲食街を併設。

あれだ、火を扱うからデパートの中には置きたくなかったんだ。


さらには王都民の憩いの地となるように大きな公園をつくる。

こちらもこの世界ではまったくみたことのない遊具をヤマナシ姉が提案してきたのでそれらを設置!!

まぁ普通のブランコとか滑り台なんかの児童公園にありそうなものなんだけどさ。

雲梯とかジャングルジムとかね?さすがに大きなタイヤを半分埋めたものは無い。

日本ではすでに肩身の狭くなった、むしろどんどん封印撤去されている『ぶら下がりシーソー』や『回転ジャングルジム』なども設置予定だ!

子供が怪我をしないのか?そんなもの自己責任にきまってるだろうが。

道具なんだから使い方、使い手次第で怪我をするなんて当然の結果だからね?


子供の遊び場の次はもちろん大人の遊び場。

まぁ・・・あれだ、ひらたくいえば国営の賭場と娼館と飲み屋だな。

どれもこの場所でひっそりと営業されていたものなんだけどさ。

特に気になったのは娼館の環境。

そもそもそんな概念がないのだから当たり前なのだが、衛生面にせよ、女性に対する福利厚生にせよ、非常に悪かった。最悪だった。

うん?娼館に対する忌避感?身売りって形で無理やり働かされる人に対して以外は特に無いな。娼婦にせよ男娼にせよ本人が納得しているならば立派な職業なんだしさ。

これらの施設はかかるお値段で地区を三つに分け、入場料を取ることで区別することにしてある。


破落戸とか場内で暴れる人間は大丈夫なのかって?

そんな連中はもちろん(平民貴族問わず)翌日の朝に吊るされるだけである。

『国営』舐めんなって感じだな!


「てことでもともとあの場所にあったモノも含めてこんな感じの再開発でいかがでしょう?」

「いかがも何も・・・このような大規模な建造物をどうやって・・・いや、お前が造るというのなら資材の運搬や建設作業員などは考えなくともよいのか」

「確かにこれだけの量の木材や石材を集めるだけでも数年掛かりになるでしょうからねぇ」

「その辺の貴族の屋敷どころか王城にも匹敵する規模の商店・・・商国にも帝国にもない新しい商いの方法、さすがは勇者の国の知識、なんとも凄まじいものであるな!」


「しかしその・・・なんだ、貴族が娼館を差配すると言うのは少々世間体が悪くはないか?」

「ふっ、これは娼館ではないのですよ。そう、ここは王国民の為の憩いの場・・・そこで男女が一夜の恋におちてしまうだけなのです!」

「ただの詭弁ではないか!しかしその区画を三つに分けた上で入るための入場料をとるというのはどうなのだ?」

「規模はまったく変わりますが各区画にある共同浴場の入浴代だと理解してもらえれば問題はないかと」


いくら理解力も先見性もある大貴族様たちでも、まったくみたこともきいたこともないデパートや風俗街の構想までは想像出来るはずないもんね?


「とりあえず図面だけですと何が何だかわからないと思いますので一旦建物を建ててから改めてご説明しようかと思ってます」

「ハリスはあいかわらず言ってることが無茶苦茶だなぁ」

「いや、それですませる話なのかいまのは!?村どころか街規模の建造をとりあえずでやってしまうと言っているのだぞ!?」


だってほら、ここにはウサギさん以外の聖霊様も全員そろってるからさ。建物の建造解体はいつも以上に簡単に出来ちゃうのだ。もちろん最大の功労者は魔導板さんなんだけどな!


―・―・―・―・―


満を持して風俗王ハリス編突入!(しません!)

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