北へ南へ編 その18 次回!反乱軍・・・壊滅!

商国からのお迎え、先導の騎士・・・ではなく騎兵が来たのは日暮れまでもう少しという時間だった。

パーティの開催場所は議会なども開いている丘の上の商議会会館らしい。

会館、パルテノン神殿の様な切り立った崖の上に立っているので防御には最適・・・にも見えるがとくに籠城の為の施設も、まともな防壁すらも無いので攻め落とすのは造作もないことだと思える。

いや、別に攻める予定は無いんだけどね?


こちらもメルティスが魔導騎馬(バイク)で先導の騎兵に並び、その後をサーラが運転する魔導馬車が続く。お馬さん、先導のはずなのに並び掛けられたバイクにビビってほぼ全速力で走ってるんだけど・・・。

人数が多いから本日はお姫様ーズと俺、メイドーズと勇者一行で馬車の方は二両編成である。

乗り込む時じゃがいもがうちの嫁その他を見て顎が外れそうなほど口を開いてたんだけど・・・人の嫁を下品な顔で見るなぶちころすぞ?

まぁ会館に到着した時もずらっと出迎えに並んだ商議会議員が目を剥いていたのでそんなものなのかもしれないが。


「閣下、本日はわざわざのご足労感いただき心より感謝いたします。そして奥様方の女神様もかくやというお美しさに皆が見とれてしまうご無礼、商国を代表して謝罪を」

「ははっ、なんの、妻を褒められて腹を立てるほど私は狭量ではないぞ?それに美しいと言えばそちらのトゥニャサ嬢の美しさもこの商国一、我が至宝たる妻にも勝るとも劣らぬのではないかな?ふむ、しかしその美貌、胸元を飾る胸飾りが少々物寂しいかもしれぬな」


お姉さんの前まで進み俯いたままの顔を人差し指で優しく上を向かせてその首に用意しておいた首飾りをかける。


「貴女に気に入っていただければ良いのですが」

「ああ・・・ハリス様・・・私はこのまま、幸せな気持ちのまま死んでしまいたい」

「もしも貴女が居なくなってしまえば商国は月が消えてしまった夜空の様に寂しくなってしまうではないですか」


「ハリス様・・・」

「トゥニャサ・・・」


「・・・」

「・・・」


「主よ、早く行くぞ?」


などと『キッ○オフごっこ』を二人で楽しんでいたらミヅキに邪魔されたので全員の下車が終わった黒馬車とバイクをしまってから頬を染めたお姉さんにそのまま案内される形で会館の奥、広めの待合室へ。

ミヅキちゃん、もうちょっと空気読んで?いや、振り返ったらアリシア&黒い三連星が物凄い形相(凍りついた笑顔)でこっちを見つめていたから空気を読んでの結果なのかもしれないな。



その場に残された商人達。


「女性とはあれほどに美しくなれるものなのか・・・後ろに控えていた使用人の娘までこの商国では探しても見つからぬほどの器量良しとは」

「聞いただけでは信じることが出来ませんでしたがあれが『紅玉』『黒薔薇』『白雪』と呼ばれる姫様方ですか・・・と言うかもう一人のお小さい姫様は何方だったのでしょう?」

「さすが各国が手中の玉として今まで慈しみ外に出すことも無かった姫様方、息をするのさえ忘れるほどの美しさでしたな。小さな方はおそらく演劇にも出てくる『小さな姫騎士』殿ではないかな?」


「その仕草はもちろん纏っているドレス、その身を飾る髪飾り、胸飾り、腕輪に指輪に足飾り・・・その全てがどれほどの価値のあるものなのか。もちろん一番の価値があるのはそれをまとわれたご本人であるが」

「装飾といえばトゥニャサ嬢にも贈られていた大きな魔水晶を装飾した胸飾り!回りを縁取るのは幻の緋緋色金でしたよ!?どの様な商人がいくら金を積もうと手に入れられぬ赤金、それを惜しげもなく他国の娘に与えるなど王国貴族とはどれだけの財力を持っているのか・・・」

「しかしトゥヤーム商会は上手くやったものですな、さすがは『荒海のサムサール』という所でしょうか」


まだ晩餐会を開く前だと言うのに完全に場の雰囲気を飲み込まれていたのだった。

あとミヅキはヘルミーナ嬢と間違われていた。


「ねぇちゃん!俺も貴族様になればあんなお姫様を嫁さんにもらえるのかな!?」

「そうね、あんたも男爵くらいにはなれるかもしれないしメークインくらいならお嫁にきてくれるかもね」

「それ両方じゃがいもじゃないかよっ!」


そして一緒に降りたじゃがいもと姉は特に誰にも気にもとめられなかった・・・。



パーティ会場は王国や帝国での『貴族の夜会』と言う雰囲気とは少し違い、どちらかと言えば日本のホテルなどで行われていた立食パーティに近い雰囲気のもので、なんとかして王国との接点が欲しい商議員が列を成して並んで挨拶に来るという非常に面倒なものだった。

てか参加者がおっさんとその奥さんだから年齢層が非常に高い。加齢臭とか化粧臭が・・・。

アリシア&スティアーシャに関しては本日は完全な外面、外交モードだしミヅキは料理を食い散らかしてるし白い人はオロオロしてるし。

てかセルティナも一応、そう、一応はお姫様なんだから晩餐会とか慣れてるはずだよな?それとも皇国ってパーティも開けない感じだったの?

ああ、ただの人見知りなのか。剣を持てば人が変わる?俺の回りはそんな娘ばっかりかよ・・・変わらなくていいから向こうで飯でも食ってろ。


「サムサール、一通り挨拶は終わったが我が国の第二王子殿下は参加されておらぬようだな」

「随分前からご連絡はしてありましたのですが。本日も午前中、お昼の二度使いの者を送ったのですがお忙しいと言うことで直接お会いすることは叶わなかった様でございます」


忙しい・・・ねぇ。出来ればこのまま大人しく俺の帰国時に一緒に帰ってくれれば・・・なんて考えは当然の様に甘かったみたいで。

『パーン!』と言う破裂音が散漫と響き聞こえて少ししたあと、大慌てで警備に当たっていた兵隊が会場に駆け込んできた。


「ご注進したします!潜伏していたタノヴァ商会ルツフィが乱心!手勢を率いて会館に続く道を封鎖しながらジワジワとこちらに進軍しております!その数大凡五百!」

「なっ!?手勢だと!?身一つで次男と隠れていた奴の手下など多くとも十人程度であろう!ソレが道を封鎖するなど、どこからその様な数の軍勢を集めたのだ!?」

「それが・・・その、情報では先頭に王国旗が掲げられキャスパール殿の姿も見かけられたと・・・」


でしょうねー・・・。そもそもその『ルツフィ』とか言う奴が見つからずに商国内で逃げ隠れ出来る場所なんて王国の大使館(?)、キャスパール王子のところくらいしか無いもんね?


「兵が五百・・・それも逃げ道を塞いでこちらに向かっていると・・・」

「ど、どうすればよいのだ!?あの音から察して恐らくルツフィは工廠よりアレを持ち出しているのだろう!?」

「奴はこの機を利用して我々を皆殺しにするつもりなのか!?」


などと騒がしいおっさんと倒れ込むおばさんを横目にそれを冷めた瞳で見つめるお姫様チームの前まで歩み出て膝を突く俺。


「殿下、何やら馬鹿どもが外で賑やかに騒いでいる様子、歓迎としても少々おいたが過ぎます。御身を煩わせる連中を軽く撫でてまいりますのでご許可を頂けますでしょうか?」

「ダンスまでに戻るなら許そう」

「むしろ私も一緒に行きたいのだが?あの黒い鎧と白い剣の予備はあるのだろう?」

「これが守られるという事?初めての感覚、心がポワポワする・・・」


相変わらず白い人がバグってちょっと綾○みたいになってるけど気にしてはいけない。

そして黒い人は『あの』と言われるだけあって一緒に暴れようとしてるし。

それに比べてうちの嫁シアのなんと凛々しいことか!身内贔屓?あたりまえだろう。

うちの姫様が一番可愛いのは自然の摂理なのだ!


「閣下!お話中失礼いたします!たかだか五百程度の雑兵、何も閣下がお手を煩わせる事などございません!ここは私!一人に!お任せくださり、今晩はたくさん労って頂くというのはどうでしょうか?」

「サーラ!それはズルいだろう!ハリス、私も出よう。だから労うのは一緒に・・・ね?」


会場内からは「何を言ってるんだこいつら・・・」って目で見られてるけど二人ともすでに殺る気満々である。


「んー・・・。許可する、一人残らず、いや、可能な限り首謀者二人だけ残して殲滅せよ!ああ、戻ったら全身くまなく確認するからね?打ち身や擦り傷など少しでもあればご褒美は無し、その後はお説教だ!」

「畏まりました!」

「ふふっ、了解した!」


お説教でも労うのでもすることは一緒なんだけどな!

ちょこっとだけ心配だけど二人なら何の問題もないだろう。

廊下に向かって走り出す・・・かと思えば窓からそのまま飛び出す二人。まぁ二階や五階から飛び降りたくらいで怪我をするほど軟な鍛え方をしていない二人だからどうと言うことはないんだけどさ。


「では夜会の続きを楽しもうか。楽団は少し激しい曲を!さて、誰から一緒に踊ってくれるのかな?」

「むしろ妾以外の誰が居るというのかな?」


アリシアの手をとり、大きな動きでダンスを始める俺だった。


―・―・―・―・―


令和も五年に片足つっこんだこの時代に『キック○フごっこ』・・・自分でもリアルタイムでは読んでなかったマンガのネタを放り込んでくる暴挙(笑)

読んだことはあるんだよ?親戚のお兄さん(現在はおじさん)の家で

海援隊とかチューリップのCDじゃなくてレコードもそこで聴かせてもらったなぁ・・・

そして『じゃがいもネタ』はどこかで必ず出してやろうと虎視眈々と狙っていたヤツなのだっ!!

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