北へ南へ編 その11 上様の御成!

朝食を食べ終わってから玄関前でたむろする他所の人(主に商人)を迎え入れるまでの時間、もちろん俺が何もせずにボーっとしてたはずもなく。

てかそこそこ大忙しだったからね?

殺風景な庭の手入れとか中庭のパーティルームにシャンデリアぶら下げたりとか家具を備え付けたりとか近くにトイレを増設したりとか。

まぁほとんどは魔導板さんのワイヤーフレーム画面で操作出来たんだけどさ。


これ、むっちゃ楽しいんだよ!OTONコレクションにあった古のPCゲーム、マイホームド○ームみたいで!

トイレの増設?だって家族用のスペースのトイレを他人、とくにおっさんに使われるとか絶対に嫌じゃないですか?

ちなみに中庭(パーティスペース?)にはうちの奥さんと精霊さん全員分の大理石像も設置しておいた。うむ、実にいい出来である。


てかさ、外で待ってたやつら、いくらタダだとは言っても果物食いすぎなんじゃなかろうか?

俺、サーラと二人して奥でむっちゃ切り分けしてたからね?無駄に日本料理の飾り切りみたいなのも作ってたし。そして黒い鎧姿、厳つい籠手を付けたままでちっさい果物を加工するサーラの姿が物凄いシュールでした。

そもそもさ、これ、絶対に侯爵様の仕事じゃないよね?人が居ないから仕方ないんだけどさ。まぁそんなことはどうでもいいとして。


ある程度もったいぶったことだしそろそろ目通りでもするかなっ!て感じなんだけど・・・はたして俺、どう言う態度でこの国の一般市民的な人と接するのが正解なんだろうか?

いや、上層部に関しては状況証拠だけでもグレーじゃなくブラック無糖なんだけどさ、普通の商人とか他国の商人には全く無関係じゃん?

さすがに荷留をされた程度でほぼ何も知らない住民ごと街を焼き払おうと思うほどアタオカじゃないからね?俺。ただしうちの奥さんに害が及びそうな時は除く。


商国の場所的にも今後の市場的にも出来れば本当の意味で友好的な国になってくれれば有り難いんだけど・・・やたらと暗躍してそうな上層部の総取っ替えくらいはしないと期待出来そうにないんだよなぁ。

少なくとも近隣最強の海軍を持っていると自負してる国だし、一度現状での国力と言うか武力の違いを見せつけるくらいはしておかないと納得はしないだろうな。

その後の細かい話し合いはアリシアとスティアーシャにでも丸投げすれば上手くまとめてくれるだろう。姫騎士様?あの子はほら、加減せずに徹底的に潰しちゃいそうだから。

現状での最悪は何も考えない馬鹿が意味のない武力蜂起とかしちゃうことだけど・・・一人微妙に危なっかしいのがいるんだよなぁ。そうだね、第二王子だね!

とくになった覚えもないけど一応身内だから笑い事じゃないんんだよなぁ。


まぁウダウダ悩んでてもまずは相手の出方を見ないとどうしようもないし?基本いつでも出たとこ勝負!なるようになーれ☆のハリスくんなのだ!

てわけでサーラとメルティスに先導されながら中庭に登場する俺。

Cさんに太鼓でもトントン叩かせて「ラポーム侯爵閣下、御出座ー」とかやってもらおうかとも思ったけど肩に入れ墨を入れたくないので止めておいた。あ、金さんじゃなく暴れん坊な八代目の人とか大岡越前なら入れ墨いらなかったな。

知ってる?大岡越前。お母さんがいっぱい出てきて子供の両手足を引っ張りあって八つ裂きにしちゃう逸話がある人。何そのそこそこ重罪人の拷問・・・。


ガラス張りの中庭、果物が並ぶテーブルに人が固まってるけど登場した護衛の二人、そして俺の姿を視認した人たちから順番に床に膝をついていく。

別にそんなこと求めてもないんだけど一応貴族様なので鷹揚な態度で「うむ」とか言っておくことにした。

「うむ」、貴族になってみてわかったけど使い勝手の良い言葉ナンバーワンだと思う!ちなみにメールとかメッセのやり取りで返事をする時に使っても特に違和感が無いのでオススメしたい。


そして全員が跪いてゆく中で・・・ただ一人、立ったままこちらを驚いたような視線で見つめる女性。

なんだあの子ってかあのお姉さん・・・超好みなんだけど?思わず親指と人差指でハートを作りかけたんだけど?いや、アレがハートマークだと言い張るのは無理がありすぎじゃないだろうか?キュンです♪・・・ちなみに現実に言ってる人間を見たことはない。みんな、くれぐれもマスコミに踊らされて黒歴史を残さないようにな!

相変わらず俺のマスメディアに対する偏見がすごい。


そんなことより今は目の前のお姉さんである!

褐色の肌に引き締まった体、身に纏う中東の踊り子さんみたいなふわふわしたドレスは落ち着いた赤。肩口で切りそろえられた黒髪におっとりとした雰囲気のタレ目。

動物で言えばタヌキ系の癒し系美女である。出会った頃のリリおねぇちゃまもあんな感じだったはずなのになぁ・・・。

もちろんべリーダンサーみたいにお腹は出してないんだけどね?肩から羽織ったレースのケープが非常に似合っている。


色気と姉味と落ち着きを兼ね備えた、完全に顧客(俺)のニーズに合致した褐色美人。そう、例えるなたダーク姉の完全なる上位互換である。

いや、あの姉妹はあの姉妹で普通に知人としては・・・そこそこ問題があるよな、親切な借金取りから金貨100枚も毟り取ってたしさ。姉妹揃ってあれだけの美人なのに恋愛対象にはなり得ない希少な存在である。あと『親切な金貸し』と言うこの世の全ての矛盾をかき集めたような存在。

最近ほったらかし気味だし南都に戻ったら一度ごはんでも食べがてら様子でも見に行くてやるか。金貸しの兄ちゃん?そっちはどうでもいいや。

まぁダーク姉妹は置いといて踊り子のお姉さんなのである!


年の頃なら24~25、こちらに向ける驚いた瞳が少し潤んでいて、目元のほくろも相まってとても色っぽい。そう、とても色っぽいのだ!

でも下品じゃないんだよ?清楚とエロの狭間。とてもいい。

まさかここに来て本当の意味でのハニトラを仕掛けてくるとか・・・商国、なかなか侮れないな!


などと思いながらそちらに向かって微笑んで(だらしない顔を向けて)いると俺の前に立つメルティスから冷気が。なんだかんだでメルちゃんとは付き合いが長いから俺の好みを熟知しちゃってるんだよなぁ・・・。

家主が立ったままでいるのも少々貫目に欠けてしまいそうなので大きめのソファにドスンと『車を売りに行った帰りの萬田銀○郎』レベルの態度の悪さで大の字になり腰を下ろす。もちろん竹○力の銀ちゃんだからね?


「顔を上げて楽にしてもらいたい。屋敷まで押し掛けて来たのだから知っているとは思うが私はキルシュバウム王国から来たラポーム侯爵だ。こちらとしてはハフィダーザ以外特に誰も呼び出してはいないのだが・・・朝っぱらから大人数で何用なのかな?」


いや、ホントに、マジで呼んでないからね?ご近所さんにも迷惑だから勘弁してくれる?

てことでそこそこ怒ってそうな嫌そうな顔をして、踊り子のお姉さん以外に向け『私、不愉快です!』アピール。面倒くさい恋人か。でも最終的にはお姉さんと仲直りのセッ・・・ぷんくらいなら許されないだろうか?

もちろん『キスだけじゃイヤ!』ってお姉さんに言われたらその先も・・・うん、メルティスに続いてサーラまで冷気を発しだしたからこれ以上は控えておこう。


―・―・―・―・―


西暦も2022年の年末になろうというのに銀ちゃんネタ、それも関西ローカルの『ユー○スのCM』ネタとか一体何人に伝わるんだろう・・・。まぁ金さんも出てきたしバランスが良いってことで(笑)

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