北へ南へ編 その10 反省はしていない(キリッ)皇女様

商国到着当日の夜、屋敷は建てたものの家具や魔道具の設置などは一切していないのでとりあえず今晩使用予定の部屋にだけ色々と並べていく。


「ああ、私は皆と同じ部屋で良いからな?」

「・・・わたしもみんな一緒がいいなぁ」


もちろん貴女達二人は別室なんだけどね?一言で表すと『いらないです』である。

いや、黒い人はいらなくないんだけどね?むしろ『皇女様』って肩書さえなければこちらからお願いしてるかもしれない・・・。

白い人?そっちは普通にいらない・・・でも尻がなぁ。良い感じなんだよなぁ。

そんなこんなで時間を取られたので晩御飯は簡単なモノに。


一応メイドさん二人&サーラは料理スキルがあるんだけどさ、一緒に居る時くらいは出来るだけ奥さんには手料理を食べさせてあげたいし。

はたして料理スキルバリバリで調理するご飯を手料理と言っていいかどうかの疑問は残るけど気にしてはいけない。

ちなみに今夜のメニューは焼きうどんとおにぎり。

お姫様がおうどんをちゅるちゅるしながらおにぎりにかぶりつくというなかなかにシュールな光景である。


「それでアリシア、第二王子殿下の事はどう思う?表面上は取り繕ってたけど内心では真っ黒、完全に敵認定されてたんだけど?」

「うむ・・・アレはなぁ・・・。昔から上の兄が居るというのに王位に固執していたからな。その兄や私と近しいハリスが気に入らんのだろう」

「ああ、そう言う・・・てか、少なくとも王太子殿下は国を纏めるだけの求心力も能力も持たれているけど、アレ、もしかして王太子殿下よりも優秀だとか?」

「いや、まったくそんなことはない・・・どちらかと言えば机上の空論だけで物事を判断する無能者だな。物事は全て自分の思う方向で良いように転がって当然だと思っている」


何だその楽天家・・・頭お花畑とか絶対に支配者層においてはいけないタイプのたちの悪い人間だな。


「戦争の時は安全圏(商国)に居たし、そのくせ王国に向けて商国に何の対応もさせ無かった上にこちらから情報も送ってきてないんだよな?それもう完全に戦争を企てた方に加担してるんじゃないのか?」

「半分は血の繋がった兄妹としてこんな事を言いたくはないが間違いなく加担、むしろ先導していても不思議とは思わんのだよなぁ・・・」


憂鬱そうな顔で頬杖を付くアリシア。


「スティアーシャは・・・と言うか帝国では、特に戦争前後の話で商国の事で何か伝聞はなかったかな?」

「ふむ・・・これと言って何も聞いてはいなかったな。そもそもその当時、私を含めた上の兄以外の王族も戦争に反対していた上級貴族も城の奥に軟禁されていたからな」

「それもそうか。えーっと・・・ついでに聞くけど白い人は?」

「セルティナ!です・・・皇国では『商国の船が港に対して海上封鎖をして王国に荷留をする』って言ってたけど・・・」


「やっぱり皇国と商国の間でそれなりの密約があったのは確かか。てか白い人、しおらしい姿が非常に気持ちが悪いから普通に話してくれない?」

「それはつまり『出会った頃のお前のほうが好きだよ』って受け取れば良いの?」

「いや、出会った頃から大嫌いだけどね?むしろ好かれる要素が有ったと思ってるのか?」


「うう・・・うううう・・・やっぱり黒い人の言うように捨てられるんだ・・・もしかしたらこのままここで殺されるかも・・・いやぁぁぁぁぁぁ!!やっと、やっと何もしなくても生きていける場所が見つかったのにっ!!これから、私の時代はこれから始まるはずなのにいぃぃぃぃぃ!!」

「黙れク○ニート。あとスティアーシャ殿下、変な事を吹き込まないでくださいね?見てもらえば分かると思いますがコレに関してはとても面倒くさい上に物凄く扱いにこまってるんですから・・・あ、そうだ!このままヴィルヘルム殿下に送りつけるとかいいかも?」

「そいつ、帝国に連れて行ったら普通に処刑される未来しかないと思うが・・・。あと腐っても一国の皇女を送りつけるとか・・・あれ?もしかして私の扱いも帝国から送りつけられた厄介者なのかな?・・・おい、ハリス、どうして視線をそらしたのだ?大丈夫だよな?命がけで二度も助けてくれたんだものな?」

「別に命はかけてませんけどね?」

「やっぱり捨てられるぅぅぅ!!何でもしますからぁぁぁ!!ハリスさまのお家で住まわせてくださいぃぃぃ!!ごはんをたべさせてくださいぃぃぃ!!お城のごはんよりここのごはんの方がおいしいんですぅぅぅ!!一日中(ピー)も(ピー)しますし(ピー)も(ピー)(ピー)」


「紛いなりにもお姫様が口に出しちゃいけない発言は控えろ」

「ハリスなら口に出しても大丈夫ですからぁぁぁ!!」

「ふざけるな!ハリスの(ピー)を搾り取るのは妾の役目なのだからな!そもそも口でなんてもったいないことをするな!」

「そうです!閣下の(ピー)は全て下のおく」

「色々と不適切すぎるから一旦全員黙ろうね?」


セルティナがアメフトのタックルの様に足元に絡みついてきたから危なく頭をスタンピングしそうになったけどギリギリで耐える。男なら遠慮せず踏んでたからね?あと住むどうこうじゃなくお前はまず働けと小一時間。

てか似たような奴をどこかで見たことがあるような・・・ああ、アレだ、寄生しようとする所がダーク姉、いや引きこもり的にはダーク妹、むしろ駄目な部分を寄せ集めたハイブリッドだな!はたして真面目に南都でごはん屋さんを営んでいるのだろうか?ホントあの姉妹にせよこの皇女にせよ美人の無駄遣いだよな・・・。


いや、残念系美人は全然良いんだよ?むしろ大好物、俺の主食と言っても過言ではない。でもクズ系美人はなぁ。裏切られても(俺の精神的外傷以外)何のダメージも無いダーク姉妹とちがってコレは色んな問題が発生するタイプだしさ。

てか足元からズボンを掴んではいずり上がってくるんじゃない。そして股間に顔を埋めようとするな!



結局その後は大した話し合いも出来ないまま翌日。

・・・話は出来なかったけど搾り取られはしましたが何か?

屋敷の外壁や裏庭には二羽庭には二羽ニワトリが・・・ではなく外灯と言う名の光の魔水晶が埋め込んであるのでこの世界から考えるとこの屋敷、圧倒的な明るさがあるのに忍び込んでこようとした元生きた人間・・・現焼け焦げた死体が堀の中に数体転がっているはず・・・はずなのに何も無くなってた朝。


数回、もしかしたら数十回『雷撃の魔道具』が発動してたんだけどねぇ。カーテン越しにチカチカドーン!してたもん。防犯って言うか完全に殺しに行ってるな。

まぁ特に興味が無いのでそのまま放置でいいか。

ちゃんと『この壁、登るべからず。キルシュバウム王国』の立て看板も出してあったから問題は無いね?


のんびりと朝食の用意をしていたら庭の掃除に出ていたCさんが


「旦那様、玄関先がやたら騒がしいのですがどういたしましょう?」

「外?・・・ああ、そういえばナントカ言うおっさんが朝から来る予定だったかな?来たんなら呼び鈴を押すとか門番に伝えるとかすればいいのにね?」

「旦那様、うちの屋敷には両方ございませんが・・・」


そういえばそうだった。

やっぱりジョシュアじーちゃんが居てくれないと屋敷の管理とか俺には無理だな。出来れば5人くらいに増えて150歳くらいまでは長生きして欲しいものである。

てか騒がしいって事は外にいるの、ナントカ一人だけじゃないよね?仕方ないから朝飯食ったらメルティスに確認してきてもらうか。

『すぐに対応しないのか?』って?それでなくとも(本人に自覚が無くとも)上級貴族、それも今回は王国代表として交渉に来てるからね?威風堂々としてないと舐められてしまうのだ。


―・―・―・―・―


さて、誰にも答えてもらえなかったクイズの答え合わせだよ!

・・・物凄く恥ずかしい状況だなこれ・・・。


正解は

エトラ  ・・・『越後』のちりめん問屋

タノヴァ ・・・お○ぎの『丹波』屋

トゥヤーム・・・越中『富山』の万○丹

でした!


他の二つはともかくエトラで越後は無理がありすぎたな・・・。

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