北へ南へ編 閑話 商人の思惑

今回は文字数が少し多くなっちゃいましたので『18時半と21時』の二話に分けての更新です♪


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場所は変わってコラリエ港から見える小高い丘の上に立つパルテノン神殿のような建造物、連合国議事堂では商議員(議会参加権を持った大商人)が集まり、全員がゼ○レの会議に参加している碇ゲ○ドウの様な辛気臭い顔で話し合っていた。


「・・・王国の使者、ラポーム侯爵とはそれほどの大人物なのか?」

「そもそもヤツの乗り付けてきたあの船は何なのだ?見た者の言によると何らかの金属で出来ていたらしいが、その様なモノが何故水の上に浮かぶ?どうして錆びない?」

「赤い色をしていたらしいから腐食対策の塗料でも塗っているのであろう。何故浮かぶのかはわからんがな。その塗料により金属に見えたと言うだけで木製ではないのか?」

「そんなことよりもその船、かなりの大きさの船が消えたことの方が問題だろう!いったい何をどうすれば船がいきなり消えたりなどするのだ?それだけではなく船の出入りに転移の魔法を使用したとの報告もあるぞ?」


「最初から船自体が何らかの幻影だったのではないか?商人エトラが持っている魔道具にその様な物があっただろう?転移魔法と言うのも同じように幻影で姿を消していいただけではないか?」

「商人タノヴァ、私の持っている魔道具では船の様な大きな幻影は出せませんよ。そもそも幻だとしたらその侯爵様ご一同はどうやって王国からここまで海を渡ってきたのです?わざわざ姿を消して船から降りてくる意味もわかりませんし」

「なら本当に転移魔法を使ったとでも?船だけではなく馬車、それも魔導馬車や一人乗り用の魔導車をどこからともなく取り出したと報告があるし・・・まさかとは思うがこれは・・・」

「昔話に出てくる時空庫、かもしれませんねぇ。転移魔法に時空庫、まるで昔憧れた勇者様の物語のようだ」


「益体もないことを・・・はははっ、もしもそのような力を持っている男が居るならばわしの孫娘をくれてやって身内として迎えても良いぞ!」

「商人トゥヤーム、あなたのお孫さんはたしかにお美しい方ですが貴方がご結婚の邪魔をするから少々お年の方が。それにかの侯爵閣下は『王国の三大美女』、いや、今は四大美女でしたな、さらにさらに帝国の黒薔薇姫、皇国の白雪姫を加えて妃にしている方ですよ?その様な御仁がいきおく・・・としま・・・お孫さんを欲しがるとでも?」

「そう、それだ!帝国と皇国はどうなっておるのだ?どうして王国貴族が両国の皇女を連れ歩いている?偽物ではないのか?」

「・・・確かにそうですね。それこそ船ではなく人の顔くらいなら幻影の魔道具でどうとでもごまかせるでしょう。もっとも皇国の皇女殿下の方は先の戦争で討ち死にしたか王国に捕らえられたとも伝わっておりますがね。もしかすると帝国の皇女殿下も人質として送り込まれているのかもしれませんね」


「何にしても歓迎の宴を開かぬとならぬのだ、その時にじっくりと確認すればよかろう。何しろ三人ともかなりの美形らしいからな」

「これ以上つまらぬことで王国、いや、ラポーム侯爵を刺激するのはよろしくないと思いますがねぇ?海の中に建てた『アレ』、完全に用途なども見抜かれ、えらくご立腹であられたと聞いておりますよ?そもそも私はあのような物を建てること自体最初から反対していたのですがねぇ」

「今更その様な事を言っても仕方がなかろう。こちらには王国の第二王子もいるのだ、王国に対してはそれなりの切り札になろう?王国貴族などいざとなれば王家の威信で無礼討ちとして処分」

「馬鹿なことを口になさるな!そもそもその王子がラポーム侯爵の魔術を見て意気消沈されて様子ですけどね。何でも眼の前で巨大な砦のような屋敷をあっという間に作り上げたと。その時何事でも無いように『王国の魔術師ならこの程度誰でも出来る』とおっしゃっていたみたいですよ?」


「その話も信用の出来るモノでは無いのだがな?船を消した、馬車を出した、他国の姫を連れ歩いている、砦を小一時間で建てた。普通に考えれば報告している人間が狂っているとしか思えないが?」

「少なくとも馬車には商国の人間が乗っておりますし砦・・・屋敷もその造り上げられてゆく様を、それこそ近隣で暮らしていた人間全員が確認してるんですがね」

「黒竜を退治した、王国で迷宮を潰して回っている、などとも聞いておるしな。大げさ過ぎる伝聞だと思っておったが少し前に帝国に商売に訪れていた知人が『巨大な多頭亜竜を剣一本で退治した』のをその目でしっかりと見ておるしな」

「なんにしても侯爵は今のところ商国に対して良い感情は持たれておられぬようですね。はぁ・・・何方の何方様からのご提案かは覚えておりませぬが皇国に加担してさらなる商圏の拡大などと愚かな考えを」


「そ、それを今更蒸し返すのか!?だいたい皇国、帝国合わせれば王国軍の倍以上の兵数が居たのだ!そのうえ王国内での反乱分子の取りまとめを第二王子が執り行っておったのだぞ!その状況で王国が勝利するなどと・・・いったい誰が考えるというのだ!」

「直接的に兵を出していない事だけが幸いでしたね。まぁ侯爵様の滞在中は徹底的に歓迎して気持ちよくおかえりいただきましょう」

「そうだな、時間があれば『アレ』も数が揃うからな」

「まったく、もう少し早く我が国に・・・」


商国上層部の話し合いと言う名の愚痴と責任の押し付け合いは夜更けまで続くのであった。


―・―・―・―・―


ちょこっとだけ不穏な空気を醸し出しながら引いてみたり・・・。


そして登場した商人の名前の元ネタが解られた方、よろしければコメントをいただければ嬉しいです!(笑)

正解は・・・次話の最後で!(なんかテレビ番組の引延し方みたいだなこれ・・・)

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