東へ西へ編 その22 帝都、入城

前話の国王陛下との会話に『お義父さんの呼び方』を追記いたしました。


―・―・―・―・―


ホントにみんなの顔を見に帰ったくらいの時間しか滞在時間がなかった今回の一時帰宅。南都に滞在した時は一週間くらいのんびりしたのに?だってあの時はエオリアが残って仕事してくれてたしさ。

もちろん夜は・・・家族対抗大運動会だった。いや、全員でいたしたわけじゃなく、俺が順番にお部屋巡りをしたんだけどね?

何故か一緒に行動してたメルティスとサーラの部屋も回っちゃいました。

最後はもちろんミヅキと一緒だったけど。腕枕ならぬ腹枕をされながらものんびりと睡眠。


そして帰宅したという事はまた出発もしないといけないわけで、今回も帝国まで黒馬車の旅・・・と思ってたんだけど、よく考えなくともすでにヴァンブス家の2人、転移魔法を経験してるからトンネルの帝国側までは転移することにした。

全員揃っての家族旅行とかならもっとのんびりするんだけどさ。時短、とっても大事。

さすがに他国領内でのショートカットはなんとなく不味いことはわかるのでそこからは黒馬車での移動。


今回は前回とは違い俺たちが戻ってくる事を『皇太子(元第二皇子)殿下』も知っているからそのまま帝都に向かおう・・・とも思ったけど、迷宮都市を離れてそれほど経ってはいないし帝都ではなくまだ迷宮都市に滞在してるかな?

運転はメルティス、先導はサーラに任せて街まで移動する。


「ん、これはラポーム候。何か忘れ物でもあった・・・そちらは確かヴァンブス公爵であったかな?知らぬ女性も増えている様だが・・・もしかしてもう王国まで往復したのか!?」

「ええ、早く交渉を纏めたほうが両国の民の為にもよいと思いまして早めに戻ってまいりました」


決して面倒事はとっとと済ませて食っちゃ寝生活に戻ろうとしているわけではないのだ。

いや、そもそも言うほど食っちゃ寝してなくね?俺。


「ご存知かと思いますが一応改めてご紹介を。こちらは王国公爵、西都を治めていらっしゃるヴァンブス公ブルートゥース様、そしてお隣がご令嬢のヴェルフィーナ嬢、前にいるちみっこいのがミヅキと申します」

「ヴィルヘルム殿下とは王都でお会いしてから久方ぶりであるな!婿殿より両国の通商、外交の草案をつくる様に懇願されたので参ったのである!」

「いや、頼んだのは私じゃなくて国王陛下ですからね?」


「私はヴェルフィーナ、ハリスの妻の代表として同行させていただきました。何をしに来たのかと問われると少々困るけど・・・よろしくお願いいたします殿下」

「そこはもう新婚旅行とかで良いんじゃないかな?」

「ミヅキなのだ。我は神であり正室だからな!ちゃんと敬い、奉るのじゃぞ?」

「無駄に偉そうだなおい」


「さすがラポーム候、本人だけでなく同行者まで個性的な面子揃いなのだな・・・あれだ、そちらに預かって貰っている妹は王国の皆に迷惑はかけていないかな?」

「はい、ギリギリ大丈夫な範疇です」

「何かもう色々と申し訳ない」


いや、別に嫌いではないしいいんだけどね?


さて、お互いに顔合わせが終わったら俺は特に交渉に関わることはないのでメルティスをブルパパの護衛に残して迷宮都市見学に向かう。

最近ミヅキと遊んでやって無かったしヴェルフィーナとの時間もあまり取れてなかったしさ。

いや、そもそもミヅキと『遊んでやってない』はオカシイ気もする。

だって見た目幼女だけど中身3000歳なんだよ?見た目だけじゃなく態度も幼女っぽいからついつい忘れちゃうけど。


「と言うか迷宮都市、ゴチャゴチャしてるだけで特に見るべきところもなさそうだよね」

「おう、何かごめんね?」

「いや、君を責めてるとかじゃないからね?だって、こうして二人で手を繋いで歩いてるだけで私は幸せだもの」

「反対側では我も手を繋いでおるがの?」

「私も後ろから閣下の背中に穴が空くほど見つめております!」

「まぁそれでいいならいい・・・のかな?」


全員特に問題はないらしい。

ちなみに街の散策は二日で飽きた。

そして護衛として屋敷に残したメルティスがちょっと拗ねたので夜にいっぱい甘やかした。


てことで翌日からは借りた部屋で閉じこもり愛欲の日々を繰り返し・・・とはならず。

いや、連れの幼女がくっついて離れないしさ。常識の範囲内でイチャイチャするに留めた。

他所様のお宅でイチャイチャしてるのがすでに常識の範囲では無いのは置いておくとして。

てかミヅキが「ここのご飯は美味しくないから主に作って欲しいのだ」とかちょっとここの料理長に失礼な感じのわがままを言うものだから毎食料理してたんだけどさ、どうして毎回皇太子殿下と帝国宰相殿が混ざって食べてるのかな?


「いや、だってここのご飯、それほど美味しくないし・・・」

「それ絶対に他所で言っちゃ駄目ですからね?次期皇帝が口に出したらこのお屋敷の料理人全入れ替えが起こりますからね?クビになった料理人が世を儚んで俺のこと逆恨みしながら死んじゃいますからね?」

「さすがにそれはわかっているさ。しかしこの卵を焼いただけに見せかけて中に野菜の炒めたものが入った料理は美味いな!」

「ふっ、当然なのである!そこにこのウスターなるソースをかけると酸味と塩味と甘みと卵のまろやかさが渾然一体に混ざり合い、旨さ倍増なのである!」


妙に気の合った雰囲気のブルパパと皇太子。どうやら皇太子も食いしん坊らしい。

家庭的なオムレツにウスターソース、家庭的な焼き飯にもウスターソース、もちろんソースメーカーはイ○リソース。関西人のデフォルトだからな!ちがう?もしかして家だけだった?


大まかな取りまとめだけだったにも関わらず一週間ほどかかったキル(シュバウム王国)ベイ(オニア帝国)通商会談。

ああ、帝国側から『是非とも造幣の魔道具を導入させてもらいたい』と、要請が有ったので『金銀銅貨、大小2種類の6台、予備や故障にそなえてさらに3倍で18台』の魔道具を納入することに。魔道具の形状、みんなもう空で言えるくらいには覚えてるよね?

もちろん魔道具本体は出世払い。そのお値段なんと・・・特に決めてなかった、どうしよう?とりあえず試しに使ってみてから判断してくれと丸投げした。

でも魔道具を稼働させるのに必要な『魔道具専用魔水晶』の分はちゃんとお支払い頂いたので懐も暖かくなった。


設置場所はもちろん帝都のお城の奥深く、一見何の変哲もない古・・・新しい館とのことで、王国組以外の帝国組も黒馬車に乗せて移動する事になる。だって普通の馬車だと帝都まで5日から1週間くらいはかかるって言うんだもん。

流石に皇太子と宰相の二人だけを一緒に乗せていくわけにも行かず、最低限の帝国からの護衛も乗せなくてはいけないので黒馬車二台での移動になる。


サーラは相変わらず先駆け・・・じゃなく先触れに、王国組は馬車はメルティス、帝国組の馬車は俺が運転。助手席には皇太子殿下。

皇太子、助手席に乗るなら護衛を連れてる意味なくね?


「候にはそろそろ愛称のヴィリと呼んでもらいたいのだが?しかしこの馬車は・・・外から見ただけでも圧倒的な存在感だったが、自分で乗ってみると凄まじい性能だな・・・。そう言えば、王国ではご令嬢の嫁入りの際に各御家に結納として納車されていた様だが」


いや、そんな『チラッチラッ』とこっちを見られても・・・皇女様は嫁入りしてきたわけじゃなく『遊びに』来てるだけだからね?

うちの王様といい皇子といい最近は王族とか皇族の間ではフレンドリーに呼ばせるのが流行ってるのかな?


内乱が起こったのだからもう少し帝国領内がバタついてるかと思ったがその様なこともなく特に問題も起こらず帝都に到着した時はちょっとだけ肩透かしを食らった気分だった。

ちなみに帝都の城門でサーラが


「皇太子殿下をお連れした!速やかに迎えと案内の者を寄越していただきたい!」


と、伝えたら城門の上に白旗を掲げられたので慌てて黒馬車を降りて皇太子が説明に走るという心温まる一幕(ワンシーン)も。完全に拉致って来たと思われてるよねコレ・・・。

ちなみに白旗を見た時の『やりました!褒めて!!』って顔のサーラはとてもアホの子可愛いと思いました。

迎えに出てきた帝国騎士団に先導されながら帝都の大通りをゆっくりと進むご一行。

てか、サーラが門を潜る前に


「閣下!帝国の連中が持ってる国旗よりも大きい『ラポーム侯爵家の旗』を持たせて欲しいです!帝国人が掲げている旗が普段の閣下だとしたら、メルさんと三人でシている時の逞しい閣下の様な旗が欲しいです!」

「いきなりの下ネタは止めたまへ」


先に来た時に門前払いされたこと、そこそこ根に持ってそうなサーラであった。


―・―・―・―・―


聖○魔IIネタ・・・さすがにニッチ過ぎたかな・・・(笑)

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