東へ西へ編 その19 一時帰国?

「ふむ、数年ぶりの王都、街並みはそれほど変わってはいないが以前よりも民に活気があるように思えるな」

「もっとこう、帝国と比べてなにかしらこう、あるのかと期待してたのにそんなに変わらないワン」

「わー・・・凄いです!迷宮都市より通りを歩いてる人が多いです!あ、劇場だぁ・・・あれって侯爵様が主役の物語なのですよね?いいなぁ、私も観てみたいなぁ」


『チラッ、チラッ』て感じでこちらの様子を伺うのはブローチを直してあげた地味子ちゃん。

うん、どうしてだかわからないが帰国の際に馬車に乗り込んできたんだ。

てかさ、帝国からキリの良いところ(人目のないところ)まで黒馬車で移動したら転移で帰る予定だったのに何故だか付いてくる事になった『10名の帝国女性(帝国出身でない3名を含む)』のせいで最後まで馬車での旅になってしまった俺一行。

まぁ途中で一泊しても2日目には王都まで着くんだけどね?


「てか『10名』っておかしくね?どんだけお盛んなんだよお前?」もっともな話である。

そもそもさ、俺は誰も連れて帰る気なんて無かったんだよ?

ギリギリわん子1人の予定だったんだよ?


それなのに・・・


「エオリア、何か言いたいことはあるかな?」

「・・・何もないです」

「俺の記憶が確かならば、今回の帝国行きにエオリアが同行したのは『東都から付いてきた昔から身の回りの世話をしてもらっていた2つ歳上のお姉さん系メイド』を側室にするでもなく身ごもらせちゃったのが奥さんにバレて叱られるのが怖かったからなんだよな?それがどうして俺の留守中、それも一週間やそこらで5人もお手付きにしてるのかな?馬鹿なのかな?死ぬのかな?」

「・・・言い訳のしようも無いです」


そう、10人中半分の5人は俺に付いてきたのではなくエオリアに付いてきた女の子なのだ。

いや、ホントに何してんだよ・・・。もちろんナニしてたわけなんだけどさ。


「実家が上級貴族でも元は部屋住み、そこから独立して新しく貴族家の当主になったし?少しくらいはっちゃけるのは問題ないと思うんだよ?いや、もちろんそれにも限度はあるけどな?でもほら、あの子達他所の国の娘さんだよ?皇子と宰相に彼女たちの親御さんに手回ししてもらう交換条件で俺まで『お土産』をつけられたんだからな?」

「・・・面目ないです」


某隣国でハニトラかまされて帰ってるく外交官じゃないんだからさ、本当にもう少し自重と言う物を覚えてもらいたいものである。

まぁ俺の方は婚約者じゃなくあくまでも『皇女様の社会見学の一環』って体になってるからギリギリで耐えてるんだけどさ。

当の皇女様本人はもちろん完全に嫁ぐつもり満々なんだけどね・・・。


ちなみに皇女様、わん子、地味子、以外の残りの2名は皇女様の元パーティメンバーである。

メルティスとサーラが稽古をつけてやっていたら懐いたらしい。

こちらはおっちゃんにでも任せて鍛えてもらえば特に問題もなさそうなので大丈夫だろう。


てことで少々憂鬱な気持ちで馬車に揺られて・・・って程も揺れはしてないんだけどさ。

なんだかんだでひと月ほど留守にしていた王都屋敷である。

某ニュータイプじゃないけど帰れる場所があって待ってくれてる女性(ひと)がいるってそれだけで幸せだよね・・・。

サーラが先触れに出ていたので屋敷の前にはずらりとメイドさん&奥さんが並ぶ。

・・・姫騎士様はもう諦めてるから良いんだけどどうしてちびシア殿下までいるのかな?


馬車から降りるとお決まりのクルクルタイム。

飛びついてきたヘルミーナ嬢を抱えて回る例の『アレ』である。

うん?ちびシア殿下も回りたい?いや、未婚の王族の体に触れるのはちょっと・・・無表情で飛びかかってくるのは止めてもらえますかね?

非常に怖いです。とてもホラーです。


仕方がないのでついでにミヅキとヴィオラも回しておいた。

えっと、さすがにリリおねぇちゃまはちょっと・・・見た目的に非常に痛々しい感じになってしまいますので。

もちろんフィオーラもヴェルフィーナもアリシアも無理です。

知らない人の前だからね?自重するように。


「ええと・・・ハリス、思ったより本物の幼女がいっぱいいて噂通りであったのかと少々混乱しているのだが・・・卿の御正室はどちらの方なのかな?」

「もちろんミーナなのです!」

「正当性から言うならば私なのよ?」

「私は正室では無いわよ?どちらかと言えばハリスの姉ポジションだもの」

「我は正室だが幼女では無いの」


何この『正直者を探すクイズ』みたいな状況。

正解は・・・ギリギリでミヅキか?でも幼女は幼女だもんなぁ。

あとちびシア殿下には何の正当性もありません。むしろ現状そこまでの面識もありませんし。そして俺の認識ではただの痛い子です。

てかこの子に関してはお姉ちゃん(アリシア)に会いに来てるだけなんじゃないかと思うんだけどさ。お城、子供が1人で居るには退屈な所っぽいもん。


このまま自由に喋らせておくととても話がややこしくなりそう、むしろ絶対になるので幼女組以外の奥さんも順に紹介していくことにする。


「ええと・・・つまりまとめると、見覚えのある赤い人含めキルシブリテ三大美女全員が卿の嫁だと言うのか?いや、全員公爵家、侯爵家、アリシア王女に関しては王族だよな?その様な者を側室にするなどと言う暴挙、よく各々の実家が許したな」

「そんな感じです。でも『三大美女』ではなくヴェルフィーナ含め『四大美女』と言っていただきたいところですね。むしろうちの奥さんは全員絶世の美女ぞろいですし?そもそも奥さんに正室とか側室とかいう区別は付けていないんですけどね。世間的にはほら、神様が正室って感じですから特に問題は無いですよ?」

「その『神様』って所がまず理解し難いのだが・・・幼女を神聖視する変質者では無いのだよな?」

「絶対に違います」


ヴェルフィーナ、たぶん夜会とかお茶会にもっと露出していれば間違いなくそう呼ばれてただろうし。

てか露出癖があるのに露出が少ないとかちょっと意味がわからない。

そして俺は絶対にロリコンでもロリコン好きでも無いのだ!!

そこは絶対に譲れないんだからな!!


「そして・・・そちらの幼女は全員親戚であると?」

「私は嫁だけどね?そもそも幼女ではなくお姉ちゃんだからね?」

「ミーナはちゃんとした婚約者なのですよ?必要書類一式そろってますから出るところに出ても大丈夫なのです!」

「私は・・・そうね、ハリスとは生まれる前からの魂の友(ソウルメイト)なのだわ。つまりは嫁と言っても問題は無いのよ?」

「我は正室だと言うておろうが!そもそも3000歳オーバーぞ?この見た目は主の趣味でこうなっておるが本来ならムチムチのバインバインぞ?」


余計な発言をするミヅキの事をちゃんと説明するのにそこから小一時間を要したのだった。


「それで、そちらの女性のご紹介はしてもらえるのかしら?」

「ハリスちゃん、1人2人ならまだしもいきなり10人はちょっとどうかと思うよ?」

「と言うか半数以上の女性はハリスの趣味では無さそうに見えるのだが」

「お前はどうして黒い女など連れ帰ってきたのだ?あれだぞ?その女、見た目はそれほど悪くないが性格的に多大な問題があるのだぞ?最悪だぞ?」


やはり赤と黒で何らかの性格の不一致があるのだろうか?

『天○地と』でも赤軍と黒軍は仲が悪かったもんね?

てか年長さん達から物凄い圧がかかったのでこちらもちゃんと紹介することに。


「いや、勘違いしてるみたいだけど俺は何もやってないからね?少なくとも向こうの半数はエオリアが手とかナニとか出した結果だし」

「言い方がひどすぎる!?奥様方が僕を見る目が完全に生ゴミを見る目つきになっちゃったじゃないか!」


知ってるか?生ゴミは肥料に使えるんだぞ?


「で、こちらは・・・王国に修行に来た?みたいな感じの皇女殿下とそのお付きと・・・犬?向こうの2人は武者修行だから気にしなくていいと思う」

「よろしくだワン!・・・ではなく私は犬ではなく狼だと言ってるだろうがっ!!」

「ふふっ、ハリスのための花嫁修業、いや、花嫁見習いに来たスティアーシャと言う。これから末永くよろしく頼む」

「こ、皇女殿下の身の回りのお世話をさせていただきますカリーンと申します!」


地味子、名前あったのか・・・いや、あって当然なんだけどさ。

あとわん子は絶対にわん子なので狼ではないと思います!


―・―・―・―・―


エオリアくん、もちろんただのスケベで女の子に手を出してたとかじゃないんですが・・・本人が特に言い訳も説明もしないのでちょっと可愛そうな扱いに・・・。

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