東へ西へ編 その14 もしかして:砲艦外交

てなわけで翌日。


お昼からナンタラ伯爵家のお屋敷の謁見の間(応接室)をお借りして俺と第二皇子(今はもう皇太子殿下か)とこの前王国に来てたおじさん(帝国の宰相らしい)とエオリア・・・と、皇女殿下の5人でお話。

いや、本人を前にして言いにくいというか、口にはしないけど皇女様・・・別に要らなくね?

てか一緒に入って来ようとしたわん子は一体何を考えてるのだろうか?

ちなみにメルティスとサーラは近くにいると皇子が怯えるのでドアの外で待機中である。


「話し合いに先んじてまず帝国からの謝罪を。わざわざ帝都まで使者を送ってもらっておきながら適切な対応が出来ず誠に申し訳ないことをした」

「いえ、実害は何も無かったようですのでお気になさらず」


普通ならここで『いえいえ、こちらこそ~』的な流れになるんだけどね?

下手(へた)にこちらに否があるみたいな態度に出るとそれを後から聞いたメルティスとサーラが責任を感じて『しゅん』としちゃうじゃないですか?

むしろ何らかの手段で責任を取ろうとするじゃないですか?

だから俺としては一切の謝罪はしないでそのまま受け入れることに。


エオリアがこっち見ながら『えっ?頭を下げてる他国の王族相手にまさかの上から目線なの!?』みたいな顔してるけど気にしてはいけない。

もちろんこの非礼の分は出来る範囲で何らかの譲歩をする予定である。

なので殿下はそんなに顔をひきつらせなくてもいいですしおじさんも青い顔で冷や汗を流さずとも大丈夫。


「それで、書状を一読させてもらったのだが帝国と王国間の山脈にトンネルを開通させたいとの事。もちろん両国のこれからの繋がりを強化するにあたって是非もない事ではあるのだが・・・恥ずかしながら予算的な物がすぐには用意できそうもないのだ」

「ああ、予算は特に掛からないですよ?と言うよりももう既に開通しておりますし」


「えっ?」

「えっ?」

「えっ?」


釣られて一緒に反応してしまった皇女様が赤い顔をして『コホン』と可愛く咳払いをする。


「ええと、両国の間にある『レーコルヌ山脈』の麓に大トンネルを通したいと言う話で合っているのだよな?」

「はい、そのレーコルヌ山脈?でたぶん合っております。現在は主に夏場に大掛かりな商隊を組んで行き来している山道から少しだけ北に移動した場所にトンネルを通しました」

「ん?聴き間違えたかな?トンネルを・・・通した?」

「ええ、通しました」


むっちゃ困惑顔で言葉に詰まる帝国の一同。

うん、勝手に通しちゃったんだ。

そしてみんなにはナイショだけど『トンネルじゃなくダンジョン』なんだけどね?

略すと『T&D』だな!20面ダイス用意しなきゃ!

あと4面ダイスは出目がよくわからないと思います。


「ほら、トンネルを掘るとなると流石にこちら様にも連絡をしておかないといけないじゃないですか?でも連絡の使者を出すとなると山越えになるじゃないですか?それだと時間も掛かりますし?そもそも危険ですし?もし、もしもですよ?殿下がその使者として嫁を送り出す立場だとしたら・・・どうします?」

「嫁・・・?ハリス、もしかしてなのだがあの2人は『嫁というていで』の嫁ではなく本格的な婚姻関係にある娘だったのか!?」

「ティア、少し静かにしていなさい。まず・・・そうだな、妃を使者として送り出すことはそうそう無いと思うが・・・徹底的に身の安全を確保するかな?」


「そう!まさにそれなんですよ!私、こう思いました。『山越えが危険ならトンネルを掘ればいいじゃない』と」

「ふむ、つまり『トンネルを掘る為の連絡を送るためにトンネルを掘った』と言うことですかな?」

「流石は帝国の宰相閣下、話が早くて助かります」


さすがおっちゃん!理解が早い!美味い!安い!

・・・顔を見る感じあんまり理解はされてないなこれ。


「いや、簡単に言うがレーコルヌはそこそこの大山脈だぞ?それを容易く掘るなどと・・・王国は一体、どれ程前から準備していたのかな?」

「そうですね、何だかんだで実質2日程度ですかね?」

「まったく意味がわからな・・・くもないか。侯爵は大湿原を大草原に変えることが出来るのだものな」


それは『草生えるwwwww』ってことかな?

アレは精霊さん達の力が大きいから俺がどうこうでは無いんだけどね?

でもそれを言うなら今回だって俺じゃなく魔導板さんの力なんだよなぁ。


「何というかこう・・・凄まじいことが起こったことだけは理解した。ああ、トンネルの件、事後ではあるがもちろん了承した」

「ご理解いただきありがとうございます。以降のトンネルの管理につきましてはヴァンブス公爵家が引き継ぎ行いますので調整などはそちらでお願いします。ああ、話が付く前に勝手にトンネルを利用する人間がもしもいたとしたら」

「・・・いたとしたら?」


「消えます」

「消えるのか!?」


だって頑張ったのにタダで使われるのは気分が悪いじゃないですか?

そんな失礼極まりない連中には『出口の無い』通路をひたすら彷徨ってもらおう。

まぁ現地の見学は後で案内するとして


「それから王国では年明けを目処に今使われている貨幣の改鋳を行う予定となっております。ああ、改鋳と言っても金の量を減らすなどといったものではなくむしろ純度を増してこれまでのものより金の保有量を多く致します」

「それは、それでは王国が損をするだけでは?」

「もちろんこれまで一律であった各国との通貨交換比率も変えますよ?予定では王国新通貨1に対して帝国貨幣なら2、商国貨幣で3、皇国貨幣が10。ちなみにこちらが新しい硬貨の見本となります」


金銀銅、大小2種類で6枚の硬貨をテーブルの上にパチリと並べてゆく。

ちなみにこの見本品、大小共に裏面にはアズ表記で統一した金額とそれを包み込む様に桜花の柄。


そして表面には


大金貨(12500アズ)が国王陛下で、金貨(1250アズ)がお后様(美化1000%)

大銀貨(250アズ)が王太子殿下で、銀貨(50アズ)がアリシア王女(嫁)

大銅貨(10アズ)がオースティアお姉様(一番精巧な出来)で、銅貨(1アズ)がフィオーラ公爵令嬢(嫁)


と、なっている。


銅貨に関しては毎年図柄変更予定と言うなかなかクソ面倒くさい仕様の予定である。

こちらのお姉様もあちらのお姉様も区別などしてはいけないのだ!

ちなみに国王陛下その他の反応は『お前、ホント嫁大好きだな!!』であったのだがガイウス様だけはポンポンと優しい笑顔(凶悪な面)で嬉しそうに肩を叩いてくれた。

『何となく既視感のある顔だな?』と思ったら『ターミ○ーターが溶鉱炉に沈んでいく時の顔』だった。


そして銅貨にはミヅキやメルティス、ヴィオラやドーリスやサーラもそのうち登場予定なので一般庶民は『お前、誰だよ?』ってなるかもしれない。

あれだ、記念硬貨って体で『精霊様の御姿ミスリルコイン』とか出しても良いかもしれないな。

むっちゃ高いけど6種類(6匹分)発行だから全部揃えたくなる罠。

お値段はもちろんボッタくり価格で!


交換枚数に関しも本当は『全部10枚で上位の貨幣に変わるよう』に揃えたかったんだけどなぁ。

そのままだから額面がキッチリして無くてちょっと気持ち悪い感じ。

でもほら、交換枚数の比率をいきなりいぢると物凄く現場が混乱しちゃうからね?

間違いなくそれを利用した詐欺とかも出ちゃうだろうし。

まぁどうせ一般的には「銅貨~枚と銀貨~枚ね!」みたいな使われ方しかしないから気にしてはいけない。


「これはまた・・・凄まじく精度の高い硬貨だな・・・1枚作るのにどれほどの手間暇が掛かっているのか」

「ふむ、こちらはアリシア王女と聖女フィオーラ嬢だな。はて、オースティア様とはどなただろうか?」


こちらを鋭い目で見つめるのはもちろん皇女様。

オースティア様とはお姉様でありそして御義母様でもありママであり恋人のような・・・。


金とか銀の重さを量って手で型押ししている時代にいきなり精巧な、プレス機で打ち抜いたようなコインが出てきて目を丸くする皇女様以外の帝国の面々。

てかフィオーラ(嫁)ってこっち(帝国)でも聖女様扱いされてるのか。


「で、相談と言うか提案があるのですが王国の物と質を合わせて帝国でも新硬貨を発行しませんか?もちろん新貨幣同士の交換比率は1:1で」

「ふむ・・・譲位に合わせて私の顔を描いた新しい硬貨の発行か。民に認知させる方法として悪くはない、むしろかなり良い話だと思うが・・・ボールス、どうであるかな?」

「いやいやいや!恥ずかしながら帝国でこの精度の硬貨を量産などとてもとても、技術的な問題でどうやっても無理ではないかと思われますが」

「ああ、それに関しましては魔道具をお貸ししますよ?」


そうだね!いつものペットボトル(以下略)の形の魔道具だね!

てか魔道具を貸し出すって言ったらエオリア含めて全員の顔が凍りついたんだけど。

もしかして『そんな魔道具があってたまるか!!』とか思われてるのかな?

もしろうなら敢えてこう言わせてもらおう『できらぁ!!』と。


「そ、それはさすがに・・・いや、なんと言うか・・・」

「そんな遠慮なさらずとも大丈夫ですよ?稼働させるための魔水晶もお手軽価格で融通いたしますし」


いや、だからどうして少人数しか居ない室内なのに部屋全体が『ざわっ』て言う単語で埋め尽くされた様な空気になってるんだよ?

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