東へ西へ編 その5 大トンネル・・・貫通!(黒柴ちゃん登場の巻)

「てことで先にトンネルを掘ろうかと思いますのでウサギさんを貸してもらえますでしょうか?」

「卿はとりあえず結果の報告ではなく経過の説明をするということを覚えるべきだと思うのだが?」


やってきたのはウサギさんの実家ことフリューネ侯爵家。

お向かいに座るのはもちろんマルケス様だな。


「いえ、トンネルを掘るにあたり先に帝国に先触れを出して挨拶に向かおうと思っていたのですが」

「そうだな、いきなり目の前にその様なモノが出来たらあちらも大騒ぎになるだろうからな。卿にしてはえらく常識的な判断をしたものだ」

「私は常に常識人であると自負しておりますが・・・でも普通に先触れを出すと時間が物凄くかかるじゃないですか?ですので先触れにはうちのメルティスとサーラの2名を向かわせようかと」

「ああ・・・魔道具の馬を乗りこなすあの黒鎧の2人だな。・・・アレは使者として大丈夫なのか?使者が死者を作って帰って来そうなのだが?」


「でもほら、山道とかちょっと危ないじゃないですか?あのへんを根城にしてる山賊とか通りがかりの魔物とか崖崩れとか」

「山賊や魔物とあの2人を比べたなら危険なのはどう考えてもあの2人だと思われるのだがな」

「しかしですね、もし、もしも2人の身に何かあれば・・・八つ当たりで国の1つ2つくらいは火の海になると思うのですよ」

「最初から八つ当たりとわかっているのなら控えるべきではないかな?」


「ですので!2人の安全な往来のためにも先にトンネルを掘っておこうかと」

「トンネルを掘るための相談に向かうための安全のために先にトンネルを掘ってから相談に向かう・・・それを世間一般では本末転倒、または目的と手段が入れ替わると言うのではないかな?」

「まぁ最終的な結果は変わりませんので大丈夫でしょう」

「結果だけではなく経過も大切だと何度も言ってるよな?」


「あんまり細かいことを気にしてるとハ○ますよ?」とはさすがに言えないので心の中にとどめておく。

もしも現実になったら呪いでもかけたのかと思われちゃうかもしれないからね?ほら、ミヅキ、その様な力があるっぽい事言ってたし・・・。

逆に生やすことも出来そうだけど今のところ俺には関係のない話なので正確なところは不明なんだけどね?


お久しぶりのウサギさんを心ゆくまで堪能(もふりまわした)後は現地、西都の西の大平原の更に西に有る帝国との国境(くにざかい)の山脈の麓に向かう。

向かう予定なのだが。

ウサギさんの後ろに自分も撫でろ、そしておやつもよこせと集まる小動物(精霊様)。


「今回も精霊さん全員集合なんだ?いや、それは全然問題ないんだ。問題無いというか無かったはずなんだけど・・・知らない子が1人増えてるよね?」


そう、五大精霊様『光の子熊ちゃん、土のウサギさん、風の子ペンギン、火のにゃんこ、水のラッコちゃん』に加えて『黒柴の子犬』が増えているのだ。てか何度考えても子ペンギンだけ違和感があるんだよなぁ。

ちなみに黒柴の子犬、子熊ちゃんと2人で『シュバババババババ!』って感じで高速の殴り合いを演じている。


「そこの黒い子・・・多分だけど闇の精霊様だよね?王国の建国の時には出てきてなかったけどちゃんといたんだ?」

『キャン!』


わんこ可愛いよわんこ。

うん、何かこう誰かに報告でもしようものなら非常に面倒な事になりそうだし急いでるからとりあえず拾って帰ることにしよう。


「ではまたウサギさんを連れ帰った時にご挨拶させていただきますね?」

「おい待て!今とてつもなく聞き流してはいけないような独り言が聞こえたのだが!?」


アーアーアーきーこーえーまーせーんー!

精霊様全員が体につかまったのを確認して、大人気(おとなげ)なく騒ぐマルケス様に笑顔だけ残して侯爵邸から転移する俺だった。



さて、トンネルであるが・・・結果的には丸一日ほどで完成した。どう考えても早すぎである。

いや、正確には完成したのはトンネルじゃなくて『王国側と帝国側に出入り口のあるダンジョン』なんだけどね?

元気いっぱい頑張るぞオーラを出していたウサギさん、仕事が無くなったものだからショボーンとしてる。


最初は俺もトンネルを掘る気満々だったんだよ?でもほら、南都の地下、広大な迷宮になってるじゃん?下水道の代わりになってるやつ。

あれと似たようなものが創れたら物凄く便利だと思っちゃんたんだよねぇ・・・だってダンジョンってメンテナンスフリーなんだよ?

現代日本みたいにトンネルを通るのが自動車ならそれほど頻繁な管理は必要無さそうなんだけどこの世界の交通手段って基本的には馬車じゃない?いや、引くのは馬とは限ってないけど大体は生き物じゃん?


そう、やつら、所構わずのべつ幕なしに『う○こ』しやがるんだよ・・・。

普通のトンネルだとその掃除がとてつもなく面倒くさい。てか二重(う○こ)三重(獣臭)の意味で臭い。

トンネル内の明かりも魔道具にしろ松明にしろ交換が大変だし空気の流れが淀んじゃうと死人が出るし。

その点ダンジョンにしちゃえばう○こはエネルギー変換してくれるし補修は自動だし通行人からこっそりと魔力まで吸い取れると言う良い事尽くし!!いや、一般人から魔力を吸い取るのは危険だな、うん。ちょびっとだけ、先っぽだけにしておこう。


で、ダンジョンを創る時は魔導板さんがコアの管理してくれるからアッと言う間に完成したのである。

これまでは2週間くらい掛かって、とくに冬場はさらに時間と命までかけて山越えしなければならなかった道が直線距離で50㎞強、それも舗装された平坦な道になったんだから頑張れば1日、余裕を持って途中で休み休みでも2日あれば往来出来るようになったよ!

もちろん黒馬車及び魔導バイクなら一時間かからないんだけどな!



安全とトンネル内部の確認の為に1人でドライブ・・・は寂しいので暇そうにしていた奥さんを連れて来ようと南都経由で王都のお家に一度帰宅。

まぁ精霊さんの如く奥さんも全員参加になったんだけどさ。

もちろんトンネルの出入り口には『関係者以外立入禁止』の看板(石碑)とでっかいゴーレムを置いてきた。


アリシアは忙しそうだし姫騎士様はそもそも奥さんじゃないしアリシアに付いてなぜかちびシア殿下も参加してるしヴァンブス公はここの管理人になるんだから仕方ないとしてもその他のお義父さんまで全員参加状態でよくわからない状況に。

お義兄さん?2人ほど参加してますけどなにか?

てかよくよく考えると王国の第二王子だけ全然会ったこと無いんだけど・・・存在してるんだよね?

ああ、二年ほど前から大使として商国で居るんだ?色んな意味で不穏な存在だなぁその王子・・・。


「ほとんど昨日の今日な状況ですでにトンネルが開通しているとか意味がわからん・・・」

「精霊様のお力です」


『フス!?フスフスフス!!』

ちょっと不満げなウサギさんに抗議されてるけど・・・ほら、正直にダンジョンだって伝えると色々と話がややこしくなるからそう言う体でね?


「・・・てかさ、山越えしなくていいなら別に2人を送り出さなくてもそこまで時間かからねくね?」

「それはもう完全な本末転倒だな!?」


まぁ帝都までも距離はかなりあるしいいんだけどさ・・・。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る