東へ西へ編 その2 おこづかいを貰いに来ました!

はたして誰が一緒に旅に出るのか!?・・・などというセンシティブでデリケート話題は一旦保留にしたまま俺、そして護衛のサーラと男爵位を叙爵したエオリアが向かうのはもちろん港街エルドベーレ。

叙爵、イメージ的には剣の腹で肩をぽんぽんするアレだな。

もちろんこの国ではそんな習慣はないんだけどさ。


「ていうか僕、物凄く忙しいんだけどね?誰かさんに今までに経験の無いような色んな管理を押し付け・・・任されてるから」

「それは酷いやつもいるもんだな。よし、うちの嫁、いや、ヘルミーナ嬢を派遣」

「すいません生意気言いました匍匐前進むしろ匍匐全身で廊下掃除しますから勘弁してください」

「お、おう・・・なんかごめんね?」


綺麗な土下座の姿勢で道に頭を擦り付けるエオリア。

姫騎士様とはこれと言って接点は無いはずなのに物凄いアレルギー反応を起こしてるのは何故なんだぜ?

ちなみに俺がエオリアを引き抜いてからはエルドベーレに伯爵が、王都にはご長男が滞在しているらしい。

一応伯爵のお屋敷に挨拶だけでもしておくか。お久しぶりですー、あ、息子さんがいらっしゃるので案内は大丈夫でーす。


・・・とてつもなく心配そうな顔をされたんだけど俺はトラブルメーカーだとでも思われているのだろうか?

確かに街に来る度に毎回そこそこの騒ぎを起こしてる気もするけれども。

俺は悪くない、そう、俺に絡んでくるこの世界が悪いのだ!


てかさ、商国までの船旅、いや、商国に限らず船の旅ってそんなに簡単なモノじゃないんだよね・・・。

だって船旅で想像するような豪華客船、そもそも豪華じゃないのも含めて『客船そのものが存在しない』んだもん。

これは王国に大きな港街が一つしか無いからとかじゃなくてこの世界の俺が知ってる範囲全般的な話で。


『だったらみんなどうやって海を渡ってるんだよ?』


知り合いの商人に頼み込んで商船に便乗させてもらうのが一般的らしい。

まぁわざわざ海を渡ってまで旅をしようなんて酔狂な人間は殆ど居ないんだけどさ。


なら俺も商国に渡るためにペルーサにでもお願いしてどこかの商船に乗り込むのか?と言えばもちろんそんなことはしない。

ほら、一応王国貴族の端くれだからね?王国の軍船を使わせてもらえるのだ!

そう、使わせてもらえるんだけどさ・・・。


「何かこう、予想を遥かにぶっちぎる勢いでボロボロに見えるんだけど?これ、よく浮いてるよな」

「うん、まぁほら、予算的なモノがね?そんなに無いんだよ・・・」


俺ご一行様に途中から海軍の責任者であるセグラース子爵も加わってやってきたのは軍船専用の船着き場。

そして栄えある王国海軍旗艦の『翡翠色の海竜号』を見上げた第一印象がソレである。

船種で言うならばナオとかキャラックとか呼ばれてる小型~中型の帆船。

全長は25mくらい、三本マストの木造船。

・・・見た目はほぼ幽霊船なんだけどね?


もちろん大砲などの遠距離武器は搭載されてはいないんだけど・・・戦闘の際にはどうしてるんだろうか?

他所の国とは戦争をしてなかったと言っても海賊くらいはいるだろうしさ。

もしかして普通の弓矢と切り込みメインとか?一応魔法はあるけど威力はお察しな感じだし。


「とりあえずこの船で数週間に渡る船旅とか絶対にしたくないんだけど?あれか、もしかしたら回りくどい感じで伯爵家が俺のことを暗殺しようとしている・・・?」

「洒落にならないから物騒なこと言うの止めてね!?ちなみに近海に日帰りで出るだけだとしても僕は乗りたくないなぁ」


もちろん海軍ってくらいだから旗艦以外にも大中小、いや、大きいのは無いから中小合わせて17隻の船があるんだけどどれもこれも老朽化が酷い。

近くで立ってため息をついてるセグラース子爵の背中が煤けてるのも仕方のない状況だよね。

他の訓練してる水兵さん達も覇気のかけらもないしさ。


てかさ、日本って島国だから海軍って物凄く大事なイメージがあるじゃないですか?

国防的にも貿易的にも。

それがこのていたらく・・・ちょっとどころじゃなく不味いのではないだろうか?


「そもそも海軍って指揮権は国になるの?それともフリューネ侯爵家?はたまたラフレーズ伯爵家?・・・一応聞いておくけど・・・予算の中抜きとかしてないよね?」

「指揮権って言うか最高司令官はもちろん国王陛下だよ?あと中抜きとかうちは絶対にしてないからね?君が何かの拍子で奥様やそのご家族の前でボソッとそういう事言うと普通に大問題になるんだから本当に勘弁して?」


チラッと斜め後ろに立つ子爵の方にも目を向けてみるけど首を横に振っている。

どうやらただただ予算的な余裕がないだけらしい。

物凄い脱線になっちゃうけど後々に心配事を、後顧に憂いを残さないためにも王様に相談して軍船の更新だけでもしておくかな。

見ちゃったからには全滅とかされるとちょこっと後味が悪いし。

でも、さすがに勝手に軍船を新造艦と入れ替えて代金の請求だけしたら怒られそうだしなぁ。


「よし、王都に向かおう」


エオリアとセグラース子爵の肩にそっと手を置いてうちの屋敷まで転移する。

俺だっていきなり王城に転移することはしない程度の常識は持ち合わせているのだ!

サーラ?声をかけなくても雰囲気だけで察して俺の腰に抱きついてたよ?

傍から見たら魔族にさらわれる少年にしか見えないよなこれ。


「行動の早い上司はとてもありがたいんだけど・・・出来ればその行動に僕を巻き込まないでほしいかなって」

「なっ!?い、いきなり景色が変わった!?!?」


王城までメルティスを先触れに出した後、四人で黒馬車に乗り少し遅らせてお城に向かう。

エオリアもセグラース子爵も『ここの守りは俺に任せてお前は先に行ってくれ!!』みたいな顔してるけど一緒に連れて行く。

いや、意地悪とかじゃなくて海軍の実情の説明とか知らない人間には出来ないしさ。


王城に到着した後は待合室に通されることもなく奥の謁見の間・・・でもなくお城の庭にある東屋(あずまや)へ。

壁のない屋根だけの建物で『四阿(しあ)』とも言うんだっけか?

シアちゃん、なんかこう猫系の獣人っぽい名前だよね!


綺麗に整えられた庭の砂利道を歩いていくと大きな玉ね・・・屋根の下、広いベンチみたいな椅子に横になって待っていたのはもちろん国王陛下。

昼間からお后様――なのかな?いつものおばさんじゃないけど――に膝枕されてるとかなかなかいいご身分だと思いました。

いや、ご身分的にはこの国一番だからいいご身分で間違いはないんだけどさ。

そして親戚の子が遊びに来たみたいな扱いは止めていただきたい。知らないおじさん(子爵)も連れてきてるし。


「おお、ハリス、久し・・・くもないな。どうした?また前回のように食事会の誘いかな?どうせならこのまま城で行ってはどうであろうか?いや、后がな。自分だけのけものにされたと小うるさくてな」

「そもそも前回も一切のお声掛けはしておりませんでしたが。いえ、先程エルドベーレにて海軍の臨検をしていたのですがね。船舶の損傷があまりにも酷く。そもそも海軍というのは国防の要で」

「いや、待て待て!いきなり何の話だそれは?真面目な話なら真面目な話だと先に伝えておいて欲しかったのだが・・・」

「見方を変えれば可愛い娘婿がお小遣いをもらいに来たみたいなものですのでそこまで深刻な話でもないですよ?金額的には中型船10隻分くらいですけど」

「世間一般ではそれは小遣いではなく国家予算と呼ぶのだぞ?あとお前はそれほど可愛くはないと思うが」


何でや!ハリスくんむっちゃ可愛いやろ!!


結局城内に場所を移すことになり、他にも重鎮を集めると言う事なので待合室で待たされることになりました。


―・―・―・―・―


こっそりと爆風ス○ンプとか混ぜてみたり♪

カラオケ行きてぇなぁ・・・

ちなみに得意なのはジッタ○ンジンとユー○ンです!

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