商国のアル・・・何でも無いです

東へ西へ編 その1 不穏な隣国

試食会と言う名の、ただただオッサン連中が自由に米を食い散らかして帰っただけの食事会の翌日。

小粋な冗談だと思ってたら本当に各お屋敷から料理人さんが派遣されて来たんだけど。

仕方がないのでドーリスと2人でお米の炊き方をレクチャーして俺渾身の炊飯釜、ヒヒイロカネ合金で熱伝導率を良くした羽釜を持ち帰ってもらったからね?

希少金属の凄まじい無駄遣いである。


そんな事はどうでもいいとして・・・畜産業。

そう、ダンジョン畑の見学会の時は後回しにしてたやつだな。

自分で言ってて話の振り方がいきなりすぎるけれども気にしてはいけない。

ほら、今回は野菜メインの料理だったじゃないですか?

だから食べたいじゃないですか?乳製品、そして美味しいお肉が。


俺は脂の乗った、美味しい牛バラ肉が、食いたいんだよっ!!

もちろん美味しい豚トロや三枚肉も食べたいし美味しい鶏もも肉の唐揚げや照り焼きも食べたい。

現状で買えるお肉も赤身に関してはそこまで不味いって訳じゃないんだけど固いし・・・いかんせん脂がさ。

国産の牛肉を味わった事がある人間からしたら脂の甘みとか臭いとかがとても気になるのだ。


当然畜産農家に知り合いなど居ないので各地方のご領主様、うちの奥さんのお義父さんにお肉のおすそわけ前提で紹介してもらうことに。

普通に引き抜きとかしたら親子喧嘩(せんそう)になるけど目に入れても痛くないほど可愛い娘さんに

「お父様、お・ね・が・い」とか微笑みながら頼まれれば断れないはず。

・・・ヴェルフィーナ以外はちょっとした脅迫としか思えないなそれ。


あ、ついでに鍋とか包丁程度なら打てる鍛冶師とか簡単な家具くらいは作れる木工職人とか機織り職人とか服屋さんとかもお願いしたいです。

ん?『ついでが図々しい。そして面倒事全部嫁に押し付けて自分は昼寝とか良いご身分、いや、ゴミ分だな?』って?

ふっ、否定はしない。昼寝はしてないけれども。

てかさ、俺、最近働きすぎだと思うんだよね。そもそも基本性能『大ナマケモノ』なのにさ。


だいたい俺って七つの大罪で言うところの怠惰を司ってるじゃないですか?

悪魔で言えばみんな大好き『ベルフェゴール』だね!他のメンバーと比べるとやたらと出てくるよねベルフェゴール。

そしてこっちの世界で目覚めてすぐにトイレ関係の改善ばっかりしてた俺にピッタリ過ぎるよなベルフェゴール。

最近は怠惰だけじゃなくて色欲も・・・いや、それは俺よりもフィオーラの方が・・・むしろ露出癖のあるヴェルフィーナ・・・でも一番はドーリス・・・それともサーラかも。


ちなみに畜産、酪農に関わっている農家の人に関しては大量に派遣と言うか融通と言うか本人たちの希望で移住してもらえることになった。

もともとあまり儲かってはいなかったみたいなので月給制でって話に全員飛びついてきたらしい。

売値は高いけど生き物を扱ってるから下手に病気で牛さんとか豚さんが全滅したりしたら農家の方も全滅しちゃうし。

てか食べ物のことになるとみんな、特に馥郁おじとかビックリするほど本気出すからなぁ。

迷宮地区に新しい領民のお家を増やしておかなければ。



順調に少しずつ整ってきた南都の発展と引き換え全然進んでいないのが北、もちろん北都じゃなくてもっと北――皇国の話。

今年の収穫とかどう考えても不足してるだろうに未だにちゃんとした降伏も謝罪も言ってこない。

もちろん一方的に殴りかかってきた相手に手を差し伸べることなんてするはずもないし、むしろ二度と立ち上がれないように徹底的に叩きのめしておくべきだし。

そのために王国、そして帝国からは一切の輸出をしてないし他国からの商人も止めるようにしてるからね?



てなわけで


「ちょこっと商国まで船旅をしてこようかと思います」


と伝えたら


「貴方・・・胸に手を当てて去年のことを振り返ってごらんなさい?ほら、とても胸が痛むのではないかしら?あれだけの前科を持っていながらあまつさえ新婚早々旅に出たいなんていったいどんな了見なのかしら?」


と、フィオーラに詰められた。


いや、確かに前回の旅立ちの時はいろいろあったけれどもっ!

お嬢のことほっぽっていなくなりましたけれどもっ!

知り合いの女の子も増えましたけれどもっ!


だってあの時は・・・ほら、まさか結婚するなんて思いもよらなかったし・・・。

離れれば諦めも付くかと・・・うん、その後自分から連絡入れたりした男の言い訳は見苦しいだけだな。


「ほら、今回はアレだよ?別に遊びに行くってわけじゃないし?」

「なら前は物見遊山だったってことなのかな?」

「ギャフン!」


リリおねえちゃま、揚げ足を取る(正論で論破する)のはお控えください。

それってモラハラって言うんだからね!・・・今晩じっくりとセクハラしてやる!(ゲス顔)

てか今回は本当に遊びに行くだけじゃないんだよ?もちろんお仕事だけでもないけれど。


商国って海洋国家じゃん?だから海上から皇国に輸出出来ちゃうんだよねぇ・・・。

例えるなら石山本願寺に兵糧を入れていた毛利(村上水軍)。

海軍力が違いすぎるから織田信長みたいに鉄甲船でドーン!!とかも出来ないしさ。

五本マストの5000トン級帆船とか量産してやろうか。動かせる人間がいないから意味ないけど。


そもそも王国が北(皇国)、そして西(帝国)と戦争してたのに南(商国)が一切何も言ってこないし何もしてこないのって物凄く気にならない?

一応外交的には中立を宣言してはいるんだけどさ。

何が信用できないって中立って言ってるヤツほど信用の出来ないものってないよね?

例えるなら日○不可侵条約。むしろ敵の方が信用出来るレベル。


もちろん外交、商国に様子見とご機嫌伺いしにいくだけじゃないんだよ?

ペルーサにも頼んであるけどどうせなら自分でも農作物の苗や種を買い付けに行きたい。

そして転移場所の確保、ディアノ商会の支部なんかも設営出来れば後々便利だし。

一歩進んで南都から山脈を挟んだ南側に土地の購入なんかも出来れば・・・流石に厳しいか。


「外遊に出かけるのは百歩譲るとして貴族が他国に向かうなら妻も一緒に付いて行くべきではないかしら?」

「外交の話なのだからここはミーナが行くべきだと思うのです!!」


俺(こども)が姫騎士様(こども)を連れて外交とかちょっとお相手の担当者が困惑すると思うんだけどなぁ。

初めてヴィオラを連れてエオリアに会いに行った時みたいに門前払い待ったなしじゃないか?

・・・それはそれで交渉を有利に進める材料に使えそうな気もしないでもないけれども。

そして嫁が付いて来るって話ならミヅキと護衛のメルティスかサーラで十分だと思われ。

ミヅキ、正室だしさ。あとヘルミーナ嬢はまだお嫁さんではないのです。

下手に『まだ』とか言っちゃうと墓穴を掘るので当然口には出さないけどな!


―・―・―・―・―


Q;『???編』ってなんぞ?

 A:しっくり来るタイトルが思い浮かんで無いだけだったり・・・。


Q:てか南都は放置なの?

 A:入れ物(都市の縄張り)は出来たけど人がまだ集まってないので身動きが取れないと言う・・・。


Q:商国の名前ってもしかしたら・・・。

 A:『アルティール商業連合国家郡』と申します。つまり『商国のアルティール』・・・ちょっとギリギリ攻めすぎじゃね?

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