南の都編 その18 オッ(↑)サン(↓)
ハウス栽培じゃなくてダンジョン栽培の作物も特に問題はなく、と言うよりも想像以上に美味しかったので全く問題がないようなので収穫係であるヴィーゼンの領民のお引越しを進めることにする。
お塩関係の引き継ぎもちゃんと終わってるみたいだしもう連れて行っても大丈夫だろう。
そう、丁寧に説明するうちの領民に対して少々横柄な態度を取ってくれた下級役人がなにかしらの致命的な失敗をしても俺には関係のない話なのだ。
・・・今度会った時にフリューネ侯、じゃなくてマルケスお義父さんにチクっておこう。
もちろん領地に来てもらった『おっちゃん&愉快な衛兵達&その家族』も全員ドナドナである。
「えっと・・・お引越ししたら・・・私のことお嫁さんにしてくれるって認識で合ってるんだよね?」
「お姉ちゃん!?私も!私もちゃんといるからね!!」
「もちろんそんな予定は1ミクロンも無いけど?」
ダーク姉妹も居たんだよな、うん。
決して忘れてたわけじゃないよ?本当だよ?
・・・迷宮区画に新しい食堂も建てなきゃ駄目だな。
迷宮神殿(仮名)の前に建てた倉庫の中に農作物の収穫用に新しい農具を大量に用意。
ついでに収穫物を入れるのに麻袋も大量に用意。素材が麻って言うか草だから正確には草袋になるのかな?
奴ら、放っておくと1日12時間労働とかしちゃうワーカーでホリックな連中な上にいくらでも作物が実るしダンジョンの中は日が暮れない不思議空間なので労働時間は9時から17時、12時から1時間お昼休みを徹底させることにする。
ああ、あと、小月(10日)に2回は必ず交代で休みを取るように。
賃金は塩作りの頃の収入を加味して月に金貨10枚くらいでいいかな?
安すぎると一揆とか起こすかもしれないからな。
領民がみんな『精霊教』なので宗教的な一揆の心配が無いのだけが救いか。
多少真面目に働いているからといって油断してはいけないのである。
ああ、その日に家で使う分の野菜なんかは持ち帰りもオッケーだ。
てか今さらだけどうちのダンジョン『ベジタリアン専用』みたいになってるよな。
いくら収穫しても減らないお野菜とか牧草が勝手に生えてくるんだから牧畜とか畜産にも適してるはずなんだけどね。
さらに排泄物とか全部ダンジョンが取り込んでくれるし牛のゲップによる温暖化とか気にしなくていいし牧場の臭いとかも問題なくなるし家畜が逃げる心配も野生動物に襲われる心配もないし住環境も常春に出来ると言うまさに至れり尽くせり。
問題点は人員面だな。そもそも農作物の収穫だけでも人が足りてない上に畜産業のノウハウが当然のように皆無だもん。
どこかから引き抜いて・・・じゃなくて紹介してもらって連れてくるのがベストか?
まぁそれはそれとして今はお引越しお引越し。
「てことでここが新しい勤務地になるからよろしくね?」
「いや、もう・・・何がなんだかわかんねぇよ!?さっきのってたぶんだけど転移魔法的な感じのアレだよな!?えっ、何なのここ?でっけぇ城があるわりに家はほとんどねぇしでっけぇゴーレムがうようよいるし。魔界?」
「いや、南都」
「南都って・・・初耳なんだけどいつの間に出来てたんだよ!?マジでもうちょっとちゃんと説明してくれよ!!あとゴーレムが怖えぇんだよゴーレムが!!」
黒馬車で輸送すると無駄な時間がかかるので全員転移で移送したら衛兵隊長(おっちゃん)が騒ぎ出した。
顔が厳つい割に肝っ玉の小さなおっちゃんである。おそらくキン○マも小さいのではないだろうか?興味は皆無だけど。
まぁ元北都の探索者だし?久しぶりに知り合い(ゴーレム)に会ったんだから仕方ないか。
ちなみにうちの子、あそこのダンジョンにいたゴーレムとは比べ物にならない高性能なんだけどさ。
「もういい歳なんだから少しは落ち着いて?」
「普通の感性を持ってる人間は転移魔法とか初体験したらだいたいこんな反応を示すんだよ!むしろ兵隊以外の領民がみんな落ち着きすぎてて意味分かんねぇわ!!何なんだよ兵隊よりも訓練の行き届いた領民って!あとゴーレムに関しては素無視なのか!?」
「ああ、それとおっちゃんは今日から『南都衛兵隊総長』になるから。やったねおっちゃん!給料が増えるよ!あ、ついでに嫌がらせで準男爵にしてやろう。家名は『オッサン』な」
「物々しい役職だな!?給料は今でも十分もらってるよ!あと貴族様はついででなれるもんじゃねぇんだよ!!・・・えっ?なれるの?それから家名でオッサンってなんだよオッサンって!もうツッコミが間に合わねぇよ!!」
なんたって侯爵様だからな!あれだぞ?そのうち王女様も降嫁してくるんだぞ?まだほとんど手は出してないんだけどな!
そして下手をすれば知らない王女様まで押し付けられそうなの!」助けて!
ちなみに『オッサン』準男爵の発音は『オッ(→)サン(→)』ではなく『オッ(↑)サン(↓)』である。うん、まったくわかんねぇなこれ。
「詳しい業務とかはうちの軍務担当の嫁シアが説明してくれると思うからそっちに丸投げなんで。頑張って?」
「自分の言いたいことだけ言い終わったら立ち去ろうとするんじゃねぇよ!あと『ヨメシア』様ってどなただよ!何となくご尊名の後半に『シア』って付くお方をお1人しか存じ上げねぇけどそのお方とは違うよな?そのお方とサシで話すなんて一般人では無理だからな?最低限御簾とか取次役とか用意してくれよ?」
「とりあえず俺はララちゃんに説明しないといけないことがあるから行くね?」
「お前、マジ本当にそういうとこやぞ!?」
今日はいつも以上にハイテンションなおっちゃんだった。
「あなた、今のってヴィーゼンのご領主様の旦那様よね?あんな馴れ馴れしい態度でお話するとか普通ならお手打ちにされても何も言えないわよ?」
「ヴィーゼンのご領主様の旦那様ってかご自身が伯爵様なんだよなぁ・・・いや、今はもう侯爵様だったな。ご本人から畏まった態度はとってくれるなと言われてるんだからしかたねぇだろ。これだけ世話になってるのに俺だって本来なら土下座して話してぇよ」
「えっ・・・侯爵様ってなに!?ハリスちゃん様って幼女のヒモじゃなかったの!?そんなに偉い方だったの!?」
「何だその胡乱な呼び方は。そして侯爵閣下のことご領主のヒモだと思ってたのかよ・・・まぁお近くに幼女が多いのは確かだけども!ああ、そう言えばその辺はまったく説明してなかったっけか?」
「されてないわよ!えっ?準男爵様のご領地で兵隊さんをするって話だったのにどうして侯爵様が出てくるの?」
「左腕の治療をした時にちょっとだけ話しただろうが。まぁ色々あるんだよ。ああ、あと準男爵様の・・・じゃなくて今は男爵様だったな、ご領地の兵隊さんが何の間違いか準男爵様になるらしいぞ?」
「ちょっと何言ってるのかわからないんだけど?」
「でぇじょうぶだ、俺も何言ってんのかわかんねぇもん」
そして残されたおっちゃんは嫁と2人で困惑顔になるのであった。
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