南の都編 その17 ダンジョンアタック!!(食べ放題)

 てことで迷宮地区――と言っても


『おどろおどろしいダンジョンの入口がくちを開いて冒険者を待ち受ける!』


みたいな感じではなく神殿の様な建物の内部に扉がいくつか並んだモノ――が完成したので迷宮探索者と言う名の農民を連れてくることに。


 そうだね、ヴィーゼンの住民全員だね。

 こっち都合でお引越しさせちゃうので家屋敷はもちろんこちらで用意する。

 まぁ今ヴィーゼンで使ってるお家と同型の量産型なんだけどさ。

 新規設計がめんどくさかった訳じゃないんだからねっ!!


 シム○ティプロと言われた(誰にやねん)俺は住民の不満が軽減できるようにちゃんとお家だけではなく児童公園も用意してある。

 犯罪率とか下がるからね?うろおぼえだけど。

 てか新造の住宅地、昔日本でも流行った(?)ニュータウンみたいに整然と並んだ住宅地だから(と言うよりコピペ屋敷だから?)住人が迷子になりそうだけど屋根の色と扉の色を変えておけば大丈夫だろう、たぶん。門扉に表札も付けるし。


 お家の中は上水道は用意できてないので魔道具、下水道は先にも言った様に地下迷宮、キッチンとお風呂も魔道具と言う上級貴族のお宅も真っ青になって逃げ出しそうな最新仕様。冷暖房ももちろん完備である。

 動力源の魔石は自分のお給料でどうにかしてくれ。


 住民の移動の前にエオリアとバケツ幼女&いつもの3人(ミヅキとメルティスとサーラ)を連れてきて最終確認作業。

 いや、ヴィーゼンの住民に「代表者一人選んで着いてきて?」って言ったら何故か幼女が選ばれたんだよ。

 まぁ確認って言ってもお城と迷宮神殿と少数の住居以外は空き地と道路と防壁くらいしかないんだけどな!


「いや、なにこれ?広さだけでも王都の何倍もあるよね?遷都でもするの?あとそこかしこに危険度が高そうな魔物が徘徊してるんだけど?て言うかお城大きすぎない?」

「そのくだりの半分以上は嫁と済んでるんだよなぁ」

「僕は初見なんだからちゃんと説明してもらえないかな!?」


 パーティの時は借りてきた猫みたいになってたくせに今日はいきいきと騒がしいエオリアと俺の左手を握ってぽかんとしてるララちゃん。

 右手?もちろんミヅキが握ってるけど?

 仕方がないので施設の概要と今後の予定を大まかに説明する。


「しかし迷宮で食糧生産するとか想像以上にとんでもない都市だよねぇ。でもくさっても迷宮なんでしょ?一般人が入っても大丈夫なのかい?」

「そのへんは大丈夫!・・・だと思いたい。あと食べ物を扱う施設に『くさっても』は止めろよ」

「不安になるからそこは『大丈夫』って男らしく言い切って欲しかったなぁ」


 だって初めての試みだしさ。

 もちろん魔導板さんからは『1000%危険はありません』ってお墨付きをもらっている。

 じゃないと領民を中で働かせるわけにはいかないからね?

 百聞は一見に如かずってことで出来たばかりの『おこめ迷宮with主食』の入り口を6人でくぐる。

 てか俺、エオリア、ララちゃん、その他3人。メンバーが全員前衛職のパーティだな。


 軽い浮遊感、そして目の前に広がるどこまでも続くたんぼ。


「・・・僕の知ってる迷宮じゃないんだけど」

「そもそもエオリアは初迷宮だろうが」

「確かにそうだけどさ」


「すごい・・・収穫前のお・・・おめ」

「おこめ!おこめな!!」


「草生えてるwwwって感じじゃのう」

「見た感じは小麦と似てるようなそうでもないような」

「閣下、魔物、魔物が見当たりません!」


 幼女がなにかを言い間違えそうになったので慌てて訂正。

 他所で説明する時は『おこめ』ではなく『ライス』にすべきだろうか?


 日本の原風景からは程遠かったのでなんとなく昔話に出てきそうな茅葺屋根の農家っぽいのも建てておいた。

 中は板間になってるだけで家具類は置いてないので休憩所にでも使ってもらいたい。

 あと魔物が居ないのは最初に説明してあるはずだよね?


「小麦をパンにするよりは食べるのに手間もかからないし味も魔導板さんの保証付きだからきっと美味い!・・・はず」

「だからそこは言い切ろうよ?」


「美味いなら今すぐ調理してみるのだ!さぁ、早く!」

「ミヅキちゃん、賢者様はお仕事中なんだからあんまり我儘言っちゃ駄目だよ?」


「いや、旨いなら試食はたしかに必要ではないだろうか?」

「閣下・・・魔物・・・」


 完全に連れてくるメンバーを間違えた気がしてきた今日このごろ。

 ・・・いや、仮にお義父さんs’を連れてきてても似たような反応だったかも。

 妙に食べ物に煩いからなぁ上級貴族様達。

 あとミヅキは幼女に『ミヅキちゃん』って呼ばれてるんだ?見た目年齢的には同じくらいだもんね?


 ちなみに入り口の扉近くにある2つのスロープ、地下馬道みたいな道をくぐると片方はおこめ迷宮の地下2階部分である『こむぎ迷宮』、もう片方は地下3階部分である『おおむぎ迷宮』に繋がっている。

 いや、そもそもここ(お米ゾーン)が地下1階なのかどうかも定かではないんだけどさ。

 てかさすがに米を炊くのは少々時間がかかりすぎるので帰ってから食べるとして収穫方法、特に麦との違いは無いので軽く説明するだけで次のダンジョンに移動する。


「何かこう・・・凄まじく不思議な光景だね?」

「うわぁ・・・賢者様、木に実がいっぱいです!おっきい木に実がいっぱい、これはもういっぱいじゃなくておっぱ」

「違うからね?おっきくてもいっぱいはいっぱいのままだからね?」


「ふむ、見たことある果実もあれば初めて見る果実もあるな。とりあえず食ってみるべきではないか?」

「確かに、毒見も護衛の大切な仕事だからな!」

「閣下!あの木は襲いかかってくるんですよね?」


 幼女がちょくちょく不適切な発言をはさもうとするのをたしなめながらも『くだもの迷宮with春夏秋冬』を案内する。

 ちなみにここは『果樹ゾーン』でスロープをくぐると『畑ゾーン』となっている。

 そして言うまでもないが植わっている木はトレントではないので襲いかかってきたりはしない。

 つまり木の精が襲ってくるなんて思うのは気のせいなのだ。・・・なのだ!!


 まだそれほど変わった果物は入手出来ていないので果樹ゾーンには桃、蜜柑、柿、枇杷、林檎、梨。畑ゾーンには苺と真桑瓜と葡萄くらいしか無い。

 栗?はたしてあいつは果物と呼んでいいんだろうか?もちろん植えてはあるんだけどさ。

 そして葡萄はどちらに植えるべきなのか少し悩んだけど『ぶどう畑』って呼ばれてるくらいだから畑にした。異論は認める。

 もちろん全部糖度と酸味や風味をバランスが崩れない様にギリギリのラインまで高めてあるので『真桑瓜だけど高級メロンレベルの甘さ』みたいになってる。


 毎日食ったら成人病待ったなしだな。

 ちなみに俺の一番のオススメは枇杷。ものすごい地味だけど。

 むっちゃ美味いよね?枇杷。たぶん果物で一番好き。圧倒的に地味だけど。


 果物はもいで皮を剥く、または切り分けるだけで良いので全員で試食会。

 迷宮内には虫も居ないし外気も綺麗なので洗う必要もないからね?


「僕の知ってる蜜柑じゃない・・・なにこれ、小さな果肉のひとつぶひとつぶがみずみずしいし甘みが強いのに酸味も負けてない、でも酸味が強すぎない・・・」

「ああ・・・いくらなめ取ってもつぎからつぎととめどなくお汁が溢れてきちゃいましゅ・・・」

「とりあえず舐めるんじゃなくて齧ろうね?あとお汁じゃなくて果汁って言ってもらえるかな?」


「決めた、我ここに巣を作って暮らす!」

「裏山に実ってた柿と味が全然違う・・・」

「むぐ、かっ、むぐ、か。むぐ、まも、むぐむぐ」


 全員むっちゃ食うな!?あとエオリア食レポ上手いな!

 そしてバケツ幼女はエロ担当なの?

 確かに今日はちょっとアレなメンバーが集まってるけどそれはどうかと思うんだ。

 てか果物ってお腹がぽっこりするまで食べるものじゃないと思うんだけどなぁ。



 お腹いっぱいになってて最後に立ち寄った『やさい迷宮』の感想が全員「野菜だな」だけだったのはちょっと手抜きすぎると思いました。

 確かに試食はしてないけどお野菜も美味しいんだからねっ!!

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