南の都編 その13 肩の荷を下ろした人達と引きずり下ろされた人達
「いや、これまで何度も立ち上がっては消え、消えては立ち上がった南都建設が私の代で実現するなどこれほど目出度いことはありませんな!」
「さてもさても!それも指揮を執られるのが竜殺し、いや、救国の英雄殿!お声がけがあれば全力でお手伝いさせて頂きたく存じます!」
「そうですな!国の大事業、転封であろうが減封であろうが国に仕える我らが口を挟むようなこと、何もございませぬ!」
「お、おう」
さっきまで黙っていた小貴族連合、いきなり饒舌になって売り込み開始である。
なんかこう中間管理職的な悲哀を感じるから控えてもらいたい。
あわよくば面倒そうな南部の全小貴族取り潰し・・・なんて事もちょこっとだけ思っていたんだけどどう考えても無理があるので次善の策、プランBに移行する。
こちらで面倒を見る条件として
・これまで一切の不正のない貴族家は爵位及び領地もそのまま。
・不正はあったが自身で報告に来るならば一階級降爵の上で転封する。
・報告無くこちらで不正を発見の場合は御家取り潰し。不正の度合いによっては国外退去させる。
ちなみにこれ、ヘルミーナ嬢の提案である。
読んだだけなら凄く真っ当な感じの提案なんだけど・・・もちろん『ヘル(地獄の)ミーナ嬢』の考えることなのでそんな甘いものではない。
彼女の説明によると
「まず1番上の『これまで一切の不正のない貴族家』の文言なのですが、生まれてから一度も嘘をついたことがない人間が居ないように不正をしたことがない貴族なんて存在するはずないのです」
「うん、まぁ・・・そうなのかな?俺、特に不正とかした記憶がないんだけど」
「ふふっ、ハリスにだって振り返れば色々と引っ張れるところはあるのですよ?その最たるものは国家存亡の危機に叔母様とイチャイチャしていたことなのです!ミーナは絶対に忘れないのです!」
「う・・・その件に感しましては多大なる反省をしている所存であります。あと引っ張るとかもう気分は憲兵隊じゃないですか」
「そして1番に関わってくるのが3番目の『報告無くこちらで不正を発見の場合は御家取り潰し』なのです。」
「まぁ言い換えるならば懲罰の厳しい報連相だもんね?」
「つまり選択肢がある様で実質2番目の『不正はあったが自身で報告に来るならば一階級降爵の上で転封する』しか全員選べないのです。そしてこの程度の事に気付かない、不正などしていないと言い張る様な頭の足りない貴族は遠慮なく淘汰すると良いのです!」
「幼女怖い。てか最初から重箱の隅をつつく所か『四隅から削って分解する』気満々じゃないですか・・・」
「もちろんそれだけじゃないのですよ?きっちりと追い込めるだけ追い込んだ後で
・尚、転封先で一定以上の成果を収める事が出来れば年度末に順次元の地位まで昇爵させるものとする。
・また優秀な成果を出すことが出来れば分家の立ち上げも認めるものとする。
と、優しい笑顔でささやくのです」
「もう完全に暴力をふるった後で優しく抱くヤクザの手口じゃないですか・・・」
「お馬鹿を間引いて忠誠心を試して能力のある人間を引き上げていくにはこれが一番早いと思うのですよ?」
これ、8歳の幼女の意見なんだぜ?
他の貴族家と比べてキーファー家だけ戦国感と言うか世紀末感が凄いんだけど?
物静かで可愛い小物が好きなコーネリウス様のご長男も内面はこんな感じなの?
てなわけで伝えることだけ伝えた後はおっさん連中の顔から流れる脂汗の臭いが充満してそうな会議室からとっとと退避することに。
ああ、報告は10日以内によろしくね?それ意向は一切の苦情陳情など受け付けずに取り潰しの方向で動くからね?
そしてこの件に関しましてはヘルミーナ嬢にお任せいたしますのでよきに計らってください。
えっ?うちの屋敷に執務室が欲しい?通いじゃなく住み込みで?
いや、さすがにコーネリウス様が難色を示すのでは?特に何のお小言もなく笑顔で見送ってくれたと?
ちょっと俺の方からお父様に苦情を入れておきますね・・・。
ちなみに結果としては
子爵家6家のうち男爵家に降爵しての転封が3家、領地の返還が3家
男爵家22家のうち准男爵家に降爵しての転封が13家、領地の返還が7家、取り潰しが2家
准男爵家38家のうち士爵家に降爵しての転封が20家、領地の返還が8家、取り潰しが10家
と、全員素直に納得(納得しているとは言っていない)してくれました。
てか領地の返還希望を出してきた貴族家当主、全員が全員『ブラック企業から開放されたフリーター』みたいな、晴れ晴れとしていて少し物悲しいというなんとも言えない顔をしてたのだけ印象的だった。
田舎領主なんて今のヴァイデ男爵領の領民以下の生活だからね?
まぁ働いても働いても(特に働いてなかったみたいだけどさ)暮らしが楽になるわけでもない領地とかいらないって言えばいらないわな。
もちろん希望者はエオリアの下で南都での内勤、それ以外は王都で小役人コースで再出発だ。
「いや、使え無さそうな人材を丸投げとかされても困るんだけど・・・」
「最悪飼い殺しでオッケーだってヘルミーナ嬢が言ってたよ?順次ご家庭に不幸が起こるらしいけど」
「ちょっとあの子怖すぎるんだけど!?ぼくの直属の上司にするのだけは絶対に止めてね!?」
さて、年始からのバタバタ、皇国の侵略戦争と言う名の嫌がらせが始まり結婚式も挟んで既に8月初めである。
去年の密度が濃すぎたのでもう既に今年も半ばを軽く過ぎているという事実にちょっと愕然としてしまう。
いや、去年忙しかった内訳の半分以上は俺が放浪してたからなんだけどね?
旅先で知り合ったダークエルフ姉妹、今も元気にしてるかなぁ・・・。まぁ一昨日朝から顔を合わせたんだけどさ。
うん、君たちを嫁にする予定は今の所とくにないんだ。
西の帝国に関しては先の戦争でのゴタゴタは『第一皇子とその取り巻きの不祥事』として処理されたのでそろそろ落ち着きを取り戻してきている。
年明けには第二皇子が譲位されるので是非王国からも使節団を派遣してほしいとのことだ。
・・・なんとなく俺が行かされそうな気がする。
まぁ一度は帝都も見に行っておきたいから別にいいんだけどね?
北の皇国に関しては経済封鎖を続行中。それなりに密貿易などを行っている商人もいるみたいだけど見つけ次第容赦なく叩き潰しているのでそれほどの影響はない。
贅沢品はほぼ全滅、食料や衣料なども不足気味でかなり不満が高まっているらしいのでそのまま内乱でも起こってくれれば面倒がなくていいんだけどさ。
こちらも一度確認に行っておいたほうがいいかもしれないんだけど・・・絶対に何かしらのトラブルに巻き込まれるだろうしなぁ。
―・―・―・―・―
ちょっとお久しぶりの更新になってしまい申し訳ございませんm(_ _)m
はい、アレ(三文字の流行病)では無いんです
Steam版が出るまで我慢しようと思ってた女神○生Ⅴをどうしても我慢できなくてSwitch本体から衝動買い・・・したのはいいんだけど肝心の女○転生Ⅴが売り切れてて結局ファイアーエン○レムしか買えなかったという
ヨド○シ梅田、もっと仕入れ頑張って?
つまり『ゲームしてたら更新遅れましたごめんなさい・・・』という言い訳にならない言い訳でした・・・テヘッ☆
大丈夫、もう2周終わったから大丈夫
メガテンは来月まで買わないから大丈夫
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