南の都編 その14 Q:これは領主ですか? A:いいえ、代官です
てことで面倒事(皇国方面の処置)は一旦放置することにして貴族問題の解決した南方面の続きである。
まぁすることは
・王都から南に向かい真っ直ぐに道を引く
・王都から少し離れた所に転封する貴族の領地(農地)を整える
・南の山脈の麓に築城する
・南都の城下町を整える
・手が空いたら南の山脈にトンネルを掘って南の商国と繋げるのも面白いかも?
って感じかな?
うん、普通にやってたら100年単位で掛かるなこれ。
トンネルに関しては人力では1000年掛けても無理そうだし。
そして道に関してもいっそのこと鉄道に・・・とも思わなくも無いんだけど俺、汽車も電車も仕組みをよく知らないんだよなぁ。
蒸気機関とか仕組みを見たことは有るんだけどね?
なんでアレで車輪を回せるのかはよくわかってないという。
いや、特に汽車である必要も電車である必要もないのか。そもそもうちの黒馬車からしてすでに馬車じゃないし。
でも長距離の運行とか車両の数を揃えないといけないし整備も大変そうなんだよなぁ。あと運転手さんの育成もしないといけない。
うん、保留の方向で。
あくまでも統治するのは奥さんと愉快なエオリアたちだからね?俺が忙しくなりそうなのはよろしくない。
「というわけでまずは森林地帯というか樹海の手前まで高架道路を敷設したいと思います」
「まったくどういうわけなのか解らんのじゃが?」
「そもそも『こうかどうろ』と言うのがどのようなモノなのか解らない・・・」
「たぶんですけど変身とかするのではないでしょうか?」
車とか電車が変形(トランスフォーム)するのは見たこと有るけど道が変形するのはなかなか斬新だな。何と戦うのかは不明だけど。
ここは王都の南門から少し南の離れたところ。要するにそのまんま王都の南側だな。
集まっているのはもちろんいつものメンバー、ミヅキ、メルちゃん、サーラ、そして俺。
さらに退屈そうにしてた精霊さんも全員集合しているという・・・ちょっとした世界征服なら出来そうなメンバーだ。
もちろん好き好んでそんなクソ面倒くさいことはしないので念の為。
ちなみに何故普通の道路じゃなく高架道路なのか?
だって南方面は平地じゃなくて丘陵地帯って感じで地形がそこそこデコボコしてるからさ。
普通に道を通すだけだと道がいつの間にか川になっちゃう可能性が高いんだよ。
「てことでウサギさん先生、毎度毎度こき使って大変申し訳無いんだけどここから道幅10mで両端には1mの丈夫な柵付き、ここから緩やかに登りのスロープを高さ5m地点まで。その後はまっすぐそのままの高さを維持で遥か向こうの山脈の麓まで、高架の下を行き来出来る様に等間隔にアーチ状に渡り通路を造って・・・行けそう?」
『フスフスフス!フス?』
「ああ、山は・・・トンネル掘れるかな?大丈夫?なら高さ5mくらいのトンネルを掘ってもらう感じで。低い山ならてっぺんを削り取ってもらうとか出来そう?」
『フス!』
「楽勝なんだ?ならそれでお願いします。お礼は」
『フスフス!・・・フスフス?』
「そんなことでいいの?じゃあ完成したら1日中ウサギさん先生だけをモフり倒すってことで」
『フス!!』
「相変わらずはたから見ると大きな独り言じゃの」
そして始まる無人土木工事。
いや、見た目は天地創造じみた大魔法だよなこれ。
舗装はされていないとは言っても強度的にはコンクリートなんて比べ物にならない硬さの道路、それも今回は高架道路が秒速数メートルの速さで『ズモモモモモ・・・』って感じで伸びていくんだから。
あ、完成までは危ないから勝手に使っちゃう人を監視しとかないと駄目だな。
現状途中で下りる場所の無い高速道路状態だし。
まさか居ないとは思うけど何日か真っ直ぐ歩いた先で戻る体力が無くなって死なれたりとかされたら嫌だしさ。
もちろん完成してからは使うのに通行料を取る予定だけど・・・しばらくは俺以外で誰も使う予定はないと言う。
「サーラ、ちょっと南門から暇そうな兵隊さん何人か連れてきてもらえるかな?」
「了解いたしました!」
とりあえず縦の糸・・・じゃなくて縦の道はウサギさんにおまかせで大丈夫そうなので横の道、高速道路に沿って近場から順番に転封する貴族の領地を整えていかないといけないな。
でもその前に各領地の領民数くらいは確認しておかないと必要なお家の数がわからないという。
よし、そのへんはアリシアに丸投げして俺は言われた通りに行動することにしよう。
(とある南部の農民)
いきなりご領主様から領民全員で領地を引っ越すことになったと聞かされたのが今から5日ほど前。
なんでもこのへん、いや、このへんだけじゃなく王国の南の方全部を新しく侯爵様になった方が治めるにあたり、邪魔にならない様に移動しろと言われたらしい。
・・・貴族様からみりゃあ僻地の百姓なんて犬猫以下でしかないだろうがそれにしても『邪魔だからどけ』はあんまりすぎねぇか?
もちろんここの領主様が顔色を変えて従うようなおっかねぇ貴族様に面と向かって逆らうなんてしねぇけどさ。
これでも俺の爺さんの代から何十年もかけてほそぼそと少しずつ広げてきた農地なんだぞ?
もっとも毎日生きていくだけでも精一杯の生活が出来るかどうかの収穫しかねぇんだけどな・・・。
それでも新しい荒れ地に移動させられた上で一から開墾することを思えば楽園みたいな場所だ。
下の子もまだ生まれたばっかりだって言うのにこの先どうなるんだかなぁ。
引っ越しの用意?貧乏人にそんな大層なもんが必要だとでも?
鍋釜せったろうて鍬鎌肩に担いだらそれで終わりだ。
そして今日。
家が
消えた
いや、何いってんだかわかんねぇとは思うんだけどな?
新しいご領主様・・・じゃなくて侯爵様?って方がお迎えに来て下さったんだよ。
貴族様、それもうちの領主様よりも何倍も、下手すりゃ何十倍も偉い方が農民を迎えにきて下さるとかその時点ですでに意味がわかんねぇんだけどさ。
引っ越しの荷物。持ち出そうとしたら
「ああ、荷造りするのも面倒だろうし家?小屋?ごと持っていって向こうについてから引っ越し作業すればいいだろう」
貴族様の言うことは俺たち農民には理解出来ねぇことだけはわかった。
あと一応小屋ではなく家です。で、家が、消えた。
えっ?貴族様の引っ越しって家を持ち歩くのが当たり前なの?
「気にするな、王都の魔法使いなら誰でも出来る」
王都・・・恐ろしいところやでぇ・・・。
その後は領民全員で馬車の後ろに繋がった荷台の様なモノに乗り込む。
・・・いやいやいや、おかしい、いろいろとおかしい。
まず馬車を牽いてる馬。それ、馬なの?ピクリとも身動きしないし見た目むっちゃ硬そう、むしろ鉄で出来てそうなんだけど?
「気にするな、王都ではそれなりの数が出回っている」
王都、マジでどうなってんの!?
大丈夫なのかこれ?だってさ、怖いから今まで触れないようにしてたけどさ、侯爵様の護衛の人?
完全に昔、物語で読み聞かせてもらった事がある魔王そのものなんだけど?それも2人いるんだけど?
これ、村の人間全員生贄にされるとかそんな感じじゃねぇよな?
「じゃあサーラは2号車、メルティスは3号車の運転宜しく!牽いてるのはいつのも客車じゃなくて3連結させた荷車だから安全運転でね?」
「ああ、了解した」
「かしこまりました!」
まさかの魔王様女の人だった!?
ちなみに荷車の乗り心地は悪くはなかった。むしろ良かった。だけど・・・全力で駆ける馬よりも早い馬車とか意味がわかんねぇ。
あと牽いてるのはやっぱり絶対に馬では無いと思いました。
そこから時間にして・・・2時間くらい?
どのくらいの距離を移動したのかはまったくわからねぇけど到着したのは・・・なんだここ?本物の天国?
俺が、親父が、おそろく爺さんが目指した閑静な農村、いや、もうこれ村じゃねぇよな?農町?農街?がそこにあった。
作物こそ実っていないが小石すら混じってなさそうな、土の肥えてそうな農地が広がりその間を石畳の広い道が走る。
何軒かずつかたまって配置されたお屋敷は元領主様の屋敷よりも立派そうな煉瓦で出来た家。
「土地や家の振り分けなどは代官に説明してもらうように!元の小屋は村外れに適当に出しておくから三日以内に引っ越しを済ませておくようにな?3日立ったら小屋事処分するからな?」
・・・えっと、つまりは・・・どう言うことだ?
言われたままだとまるでこの土地で農業してあそこに建ってるお屋敷に住まわせてもらえるみたいに聞こえたんだけど?
「とりあえず年貢・・・税は再来年の収穫からと考えている。収穫量の4割を収めてもらう予定だ。また今年は当然収穫無しだろうから秋まき?冬まき?の小麦が収穫されるまでは食料の配給もおこなう。そのへんの詳しいことも代官に説明してもらうように!では私は次の村に向かう。ああそうだ、もしも代官の不正などを発見した場合は定期的に見回りに来る役人に即座に知らせるように。その場で即刻対応するからな!」
お、おう、なんかもう情報がいっぱいいっぱいだわ。
えっ?税が4割?今まで7割だったんだけど・・・。
それに来年の収穫まで食料の配給?小麦の収穫までまるまる一年近くかかるんだけど・・・。
侯爵様が帰られた後、引き続いて領主様じゃなくて代官様?に説明してもらったところによると・・・おっしゃってた事は全部本当らしい。
広い畑がもらえて、でけぇお屋敷がもらえて、来年の収穫までは食い物の心配もいらなくて、その後の税も4割。
うん、あれだ、たぶんあの侯爵様って方、きっと神様かなんかなんだろう。じゃないと説明が付かねぇもん。
とりあえずこのあとは元の家、小屋じゃなくて家だからな?から新しいお屋敷に家財道具、往復をするほどもないけど荷物を運んで引っ越しだな!
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