南の都編 その4 泣いてる子もいるんですよ!?
ほぼ初対面に近いメルちゃんのご家族、顔は知ってるけどお付き合いは特に無かったサーラ嬢のご家族、一応は以前にもお参りはしていたがちゃんとしたご挨拶は今回が初めてというヴィオラとドーリスのご両親のお墓にもお参りが終わりなんとなくほっと一息。
まだまだ他のお嬢様方のお家にも正装してご挨拶回りに行かないといけないんだけど他のお宅はほら、全員それなりにご家族と交流があるしさ。
当然お伺いする前に結納品の用意をしないといけないし。
てかさ、ご令嬢方のご実家ってそもそもこの国のお金持ち代表とも言えるお貴族様、それも上から数えて4家じゃないですか?1番上は王家だし。
何を用意すれば良いのかなんてまったく見当がつかないんだけど?
今の俺、小さいお子さんがいるご家庭のクリスマス前のお父さんの気分だよ?
まぁ何を持っていっても特に何も言われないだろうけどどうせなら喜んでもらえるものがいいじゃん?
てことで各ご当主様にアンケートを取ってみた。
その結果
「甘いものが食べたい」
「美味しいものが食べたい」
「エビ料理が食べたい」
「アイスを所望する」
全員食いしん坊だった。参考にならなすぎてビックリした。
あと『美味しいもの』とか言うふわっとした回答。
「今日は何食べたい?」って聞かれてるのに「何でもいい」って答える日本人のお父さんに通じるものがあるよね?
そもそも俺、食べ物の話とか全然してないしさ・・・。
まったく役に立たなかったお父様方の回答は一旦放置して娘さんに聞いてみることに。
集まったのはもちろんフィオーラ嬢、リリアナ嬢、ヴェルフィーナ嬢、アリシア王女、ヘルミーナ嬢の5名。
・・・1人多いね?でもここでツッコミを入れるとプクってなるからそのまま受け入れなければいけない。
だって上機嫌な4人と比べると姫騎士様だけ表情が硬いもん。
「結納品ですか?特にこれといった決まり事があるわけでもないですが・・・何か大きな物がある方が良いかも知れませんね。搬送中に回りのお屋敷から見られますから」
「んー、美術品の類はあったほうがいいかも?貴族としての審美眼とか芸術家のパトロンとしてどのくらいの財力があるか回りのおうちから見られるから」
「そうだねぇ・・・武具の類もあったほうが良いかな?豪華な甲冑や長柄武器などは回りのお宅から見ても目立つしね」
「寄り子の小貴族やご近所のお屋敷に配れる様なものが無いと気が利かない奴だと馬鹿にされるのです」
「むしろあの魔導馬車で荷物を牽いて行けばそれだけで十分に目立つから何でも良いのではないか?」
なるほどなー。てか品物選びの理由がほぼほぼご近所からの視線と言う。
借金してでも見栄をはり通すところがマジ貴族。まったく見習いたくねぇ・・・。
まずデカイもの・・・家具とか?なんかこう昔の映画かなんかで紅白の帯を付けてトラック一杯に家具を積んでるの見たことある気もする。
問題はあれって本当に結納品だったかどうかだよな。
もしかしてただの夜逃げだったら縁起悪そうだし。
いや、そもそもあれって一般家庭の嫁入りだろうし貴族様のお宅に持っていくには貧乏くさくないだろうか?荷台一杯の家具。
デカイもの、デカイもの、デカイもの・・・よし、ここは美術品との合わせ技で『大きな娘さんの水晶像』と『大きな精霊様の大理石像』で行こう。
俺個人的には捨てられないけどいらないもの代表だけどな!
次の武具は簡単だな。黄○聖衣・・・じゃなくてご家庭の色に合わせた甲冑と大剣にハルバードとかでよさそうだもん。
ついでだから鎧は精霊さんの似姿で・・・熊(子グマちゃん)と獅子(にゃんこちゃん)は良いとしてうさぎさん、あまつさえペンギンさんの鎧とかちょっと意味がわからない。
鎧じゃなくて防御力全振りのキグルミパジャマとかだとさらに意味がわからないし。
でもキグルミパジャマのおっさん勢揃いとかちょっと見てみたくない?見た後は間違いなく後悔しか残らないだろうけどさ。
よし、鳥繋がりでペンギンさんを朱雀、耳繋がりでうさぎさんは麒麟にしようそうしよう。麒麟のは耳じゃなく角?似たようなものだから!
フェニックスアリシア含めて鎧着た全員で教会勢力と戦争しそうだけど気にしたら負けである。
そして朱雀とフェニックスでダダ被りしてるけどこちらも気にしてはいけない。
装備品の性能的には黒竜装備にはまったく及ばないけれど白い人が持っていた三色の剣とか言うのよりは使えるはず。
続いて配るもので大量に用意できるもの。
特に戦争が長引くこともなかったので仕入れたまま大量在庫になってる農作物があるから糖分を抽出しちゃうか。そもそもの目的は砂糖作りだったし。
入れ物を素焼きの壺じゃなくガラスの壺にすればご貴族様に配るのにもなんら問題無いだろう。砂糖、将来的には南都の特産品になる予定だしさ。
あとは・・・こちらも廃品回収したまま放置気味のボロ布をリサイクルして高級反物に。
ヘルミーナ嬢が「白い粉を配ってそれがないと生きていけない身体にしてしまうのですね?」とかとても不穏当な発言をしてるけどこの白い粉はただの甘くて白いだけの粉だからね?
でも砂糖ってケミカルな白い粉よりも依存性高そうなんだよなぁ。まぁスプーンで食べるのはガイウス様くらいだろう。早死しそうだからマジ止めようね?
そして用意する品物全部時空庫内の在庫で用意出来そうだから一切費用が発生しないのもポイント高いと思いました。
まぁもちろんそんな簡単に用意が終わるはずもなく・・・お嬢様の水晶像の整形にご本人からやたらと注文が入るんだけどさ。
「ハリス、少しこの像の胸部の膨らみが薄いのではないかしら?ええ、もちろん美術品としての見栄えのためにあえて、そう、あえて小ぶりにしているのは分かっているのですよ?しかしもう少し真実を伝えるためにも大きくしたほうがいいわ」
「現時点で大きさはすでに3割増しなんだよなぁ・・・」
「3割などと・・・そのようなものはただの誤差でしかありません。いっそ3倍にしてしまいなさい」
「お嬢様の自虐で私が涙を流しそうなので『誤差』とか言うのはおやめください」
「ハリスちゃん、おねぇちゃまのお腹はもっと細いと思うの。あとお尻もこんなに大きくないです?それと妙な威圧感を出してるのも気になるかな?ほら、あなたのおねぇちゃまこんなにも輝いているでしょう?」
「いえ、昔と比べると最近はお身体が少し丸みを帯びてきてると思いますが・・・そもそも妙な威圧感についてはリリおねぇちゃまから直接乗り移ってる気が・・・」
「もう!おねぇちゃまは丸くなどなってませんからね?でも胸はこの半年でかなりふくらみましたけど」
「止めてあげてっ!!泣いてる人(俺)もいるんですよっ!?」
「ハリス、どうして私の像だけ全裸なのかな!?さすがに実家にこんなもの置いておけないからね!?」
「なんとなくエルフさん=全裸のイメージがありましたのでつい」
「ついで嫁入り前の娘を裸にするのは止めようね?と言うよりも君の中での私のイメージはいつまで露出狂なのさ・・・」
「恐らくは墓場まで?」
「ハリス、他の像は女の子って感じなのにどうして妾の像は鎧姿なのだ?もっとこう愛らしくしてもよいのだぞ?」
「十分に愛らしいですよー」
「相変わらず雑な返事だな!・・・でもそんなツレナイところも・・・だいしゅき」
「王女様、公衆の面前でドM発言はお控えください」
「ハリス、ミーナのは成人女性の感じでお願いするのです!」
「最近はもう完全に話し方から子供らしさを消してますよね?あとヘルミーナ様のは(今回は)無いです」
「もう拇印入の誓約書はこちらにあるのですから時間の問題なのですよ?」
「怖い、幼女怖い」
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