新しい年編 その17 ついでに干拓
細心の注意をはらってはいたけれど、身内に怪我人が出ることもなく帝国軍の撃退も完了したのでホッと一息の俺。
向こうからの飛び道具は風の精霊さんが完全防御してくれてはいるけど、ヴェルフィーナ嬢は生身だったからさ。
そして今回の殊勲賞は間違いなくウサギさんである。
後で人参型の土の魔水晶をプレゼントしないとな!味はもちろん変わらないと思うけど。そもそも魔水晶って味があるのだろうか?
まぁ北の方は『王国軍約2万』に対して『皇国軍1万弱』と数的には圧倒的優位だから急いで報告&確認に行かなくとも特に問題はないだろう。
・・・無いよね?
俺が知ってるだけでも有能な貴族様多数だしアリシア王女のカリスマ性もあるし。
うん?なぜアリシア王女が戦場にいるのかって?
もちろん彼女がこの度の王国軍の総大将だからである。
いや、あの人本気と書いてマジと読むくらいには優秀な人材なんだよ?
信○の野望で言うと義姫くらいのステータスは有るはず。
ちなみに俺が嫁にしたい姫ベスト3は『濃姫、義姫、諏訪姫』なんだけどさ、諏訪姫だけ登場期間がビックリするくらい短いんだよ。知っての通り薄命だしさ・・・。
その上武将全員登場みたいなシナリオでも出てこないとか不具合ではないだろうか?
完全に何の話やねんって方向に話が逸れだしたので軌道修正。
それを躊躇なく実行した人間が言うのも何だが、さすがに大量の生き埋めの発生現場で寝泊まりするのはぞっとしないので、とっとと長城の片付けをして帰宅することに。
壁、このまま放置したら嫌がらせレベルでご近所の領民さん達の邪魔になるからね?出入り口とか通路もないし。
てかついでに泥濘んでるこの一帯、湿地帯の土壌改善とかもしておけば広大な穀倉地帯になるよね、ここ。
五大精霊さんも揃ってるしみんなにお願いして手助けしてもらえばあっと言う間だもんね?
精霊さんの協力でどんどんと変化していく湿地帯。
ウネウネと畝る地面が見ていて少々不安感を煽るんだけど・・・。
ついでに地中から大量の粘土素材や石材、さらに植生していた木材や植物素材・・・何故だかわからない、そう、どうしてだかわからないけど鉄や金や銀や銅、そして加工された宝石までゲットだぜ!!
この時はまだ回収した植物素材の中に『野生の奴』がいることに俺は気付いていなかった。
「いや、ヴァンブス家としてもそれなりの金額を投資し続けて、それでも数十年かかって全く進まなかったオーヴェスト平原の干拓が物のついでで小一時間で出来ちゃうとかどうなってるのさ・・・」
「今回は完全に俺じゃなく精霊さん達のお力だからね?ちゃんとお礼を言っとかないと駄目だよ?」
「そもそも私は精霊様とお話出来ないんだけどね?ありがとう、精霊様、それとハリスも」
素直に頭を下げるヴェルフィーナ嬢。・・・まぁ地中深くには帝国軍が埋まってるんだけどさ。
もし恨むなら無能な皇帝と俺だけにしておいてもらいたいものである。
さて、今ここで出来る事はもう無さそうなのでヴェルフィーナ嬢を王都のお屋敷まで送り届けて帰宅・・・しようとしたら物凄く寂しそうな顔をされてしまった。
・・・しょうがないのでヴィーゼンにつれて帰っちゃった。
そこそこ長期間一緒に過ごしたからね?仲間はずれ、イクナイ。
いや、だってさ、こういうしおらしい態度取られるとむっちゃキュンとしちゃうんだもん。これでも純真無垢(つまりDT)な男の子だからね?
自分で言うのも何だけど俺って攻略法さえ押さえられたらむっちゃチョロインだよね。
可愛い子にウザくならない程度に健気さを前面に出してお願いとかされたら大概のことは受け入れちゃうというかさ・・・。
そしてヴェルフィーナ嬢、その匙加減が物凄く上手いのだ。
てか俺、少し気を引き締めないと対女性防御力がどんどん下がってきている気がする。昔と比べて絶対に感情の振れ幅が大きくなってるもん。
ヴェルフィーナ嬢、風の魔水晶を探すために東都までは来ていたけどまだ海は見たことがないらしく『じゃあ一緒に来てみる?』って声をかけるとむっちゃ喜ばれた。
冬の透き通った空気の海っていいよね?ドが3つくらい付くどどど田舎だから夏でも空気が悪いなんてことは全く無いんだけど。
海辺に有る工場もたぶん二酸化炭素を排出しないクリーンな工場だしな!
・・・灯台も無いし人家も少ないから月や星が出てないと夜は海だか何だかわからないくらいに真っ暗になってちょっと怖いんだけどさ。
真っ暗な海って怖くない?
夜に泳ぐ人とかいるけど俺には絶対に真似できないわ・・・。
忘れ物が無いか確認をしてから全員で手を繋いで男爵邸まで転移する。
精霊さんは全員定位置についてるかな?丸太は持たなくていいからね?
何だかんだでたまに様子見には帰ってきていたけれどみんな揃っての帰宅はほぼひと月ぶりと言う・・・陽が出てるともうすっかり暖かくなったよな。
特にいつ帰るか伝えてもいないのに屋敷の入口にはミヅキとヴィオラがちょこんと座ってた。
「何なの?家出娘ごっこ?残念ながら俺にはまだヒゲが生えてないので拾わないよ?いや、そもそも知らない幼女なんて部屋に入れるだけで・・・それを言うなら知らない女子高生でも部屋に入れたら捕まるわ」
「相変わらずよくわからんことを言う奴なのじゃ。思ったほど酷い顔はしてはいないようじゃな?・・・お帰りなさい?なのじゃ!!」
「うおっ!?いきなり飛びついて来るんじゃない。お前は世間一般の認識では捕食者なんだからな!蛇に飛び掛かられるとかちょっとしたマングース気分だわ!そして・・・ただいま、ミヅキ」
姫騎士様と同じ様に飛びついてきたミヅキを抱えあげてクルクルと5回転。今日はいつもより多めに回ってみた。
そしてマングースはマングースで蛇のこと食っちゃうよな。
もちろん俺が幼女を(性的な意味で)食うことは永遠にないからね?
「あんたは出かける度に女を連れて帰って来ないと死ぬ病気かなんかなの?」
「あー、それ、他所でも(某公爵令嬢にも)似たようなこと言われてるわー」
「何処で言われてるのよ!!もう・・・おかえりなさい」
「ただいまヴィオラ。ちなみにそちらにおわすのはこの領のために色々と手回ししてもらってる塩の総元締めの公爵様の御令嬢だから失礼のないようにね?木っ端男爵家くらいはくしゃみしただけで取り潰されるぞ?ああ、土産に帝国人の首とか期待してたなら残念ながら持ち帰って無いからな?」
「そんな気味の悪いものいらないわよ!!ようこそお越しくださいました?」
まぁここの男爵様(ヴィオラ)はあんまり他所様との接触がないから挨拶とかオカシイのは大目に見てやっていただきたい。
ちなみにドーリスはこの無職幼女2人とは違い、この時間は塩の精製に忙しいのでそちら(塩精製場と言うプレートを貼り付けただけの倉庫)にいるはず・・・なので男爵邸の倉庫に向かう。
ちゃんと顔を見せたいし俺も早く顔を見たいから。
「ただいまドーリス」
「お帰りなさいませ御主人様」
扉を開け、声を掛けた俺を見つけると柔らかな笑みを浮かべてから作業を中止し、ゆっくりと歩いてきたかと思ったらポスっと俺の胸にうまるメイドさん。
みんな、これが『年上が見せる正しい可愛いさ』だからね?
是非とも見習うように!!
「とりあえず今すぐにプレイに入られますか?」
「ちょっと褒めたらこれだよ!てか帰宅早々プレイになんて入らねぇよ・・・いや、確かにドーリスは戻ってからって言ったけどね?まだ戦争は終わってないからね?あと戻ってからのも求婚であっていきなりヤっちゃうとか言う意味合いじゃないからね?てか何でそんな驚愕の表情してるんだよ」
「御主人様がお留守の間も自己鍛錬を欠かしませんでしたのにまだお預けなのですね・・・」
自己鍛錬って何をしてたんだよ、物凄く気になるよ、ちょっと今から目の前で実演してくれませんかね?
・・・うん、お帰りって言って貰える場所があるって実にいいもんだ。
「よし、今日は全員お休み・・・そもそも働いてるの一名だけだったけど。部屋に戻って晩飯までゴロゴロするぞ!!」
日がな一日ドーリスの膝枕でダラダラしながら両手に幼女を侍らせる俺だった。
まぁそんな俺がダラダラしてるお屋敷に隣接してるお寺・・・じゃなく神殿ではそこそこの騒ぎになってたんだけどさ。
ほら、精霊様が全員うちに遊びに来てるじゃないですか?自分の似姿の御神体に乗り移ったら動かせたらしいんだよ。
後日興奮した様子のバケツ幼女に伝えられてむっちゃ驚いたわ。
その時フィオーラ嬢の像は動かないのかって聞かれたけどあの人は生霊とかじゃないからそんな特殊能力は持ち合わせていない・・・はず。
大丈夫だよね?そう信じてるからね?
そしてリリおねぇちゃまなら出来そうだとか思ったのは秘密だ。
てかさ、ごはんの後にお風呂に入ったんだけどさすがに全員、7人で入浴は狭すぎでは無かろうか?
てか女の子なのに羞恥心とか・・・ミヅキはいつも一緒に入ってるし、メルちゃんとサーラ嬢は身体の隅々まで知ってるし、ヴィオラは親戚だし、ドーリスはメイドさんだし、ヴェルフィーナ嬢はそもそも露出癖があるからいまさらか。
「物凄く勘違いされてるけど私は露出癖なんて持ってないからね!?あとメイドだからって理由もオカシイよ!?」
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