新しい年編 その6 裏面的な成人式
年末年始のごたごた、いや、別にごたごたはしてなかったな、ただ俺が個人的にパーティに参加するのがクソ面倒くさかっただけで。
まぁそのおかげでこうして新しい家族が増えたんだけどさ。
もちろん嫁じゃないからね?否、もしかして嫁と言っても過言では無いのかも知れないけれども。
そう、頭の上で『キュー』って可愛く鳴いてるラッコちゃん。
お嬢様連中がどうして精霊様を頭に乗せてるのか完全に理解したよ、だってとても愛らしいんだもの。
精霊様、それは心をとても豊かな気持ちにさせてくれる存在。
いや、お嬢様は自分で乗せてるんじゃなく勝手に乗られてるだけだったわ。
まぁそんなこんなで水の精霊様をお持ち帰りした俺。この子、迷子だったらしいけど今までどこにいたんだろうか?
そしてよく考えなくても国王陛下の挨拶の後はすぐに別室に移動したので会場では食べ物を何も摘んでいない俺、少々小腹がすいた気がする。
昨日およばれした感じだとあんまり俺には合わない味だったから特に残念でもないんだけどさ。
素材も調味料もあって料理人も居てそれなりに手の込んだ料理もあるのに美味しくない不思議。
早く帰って何か食べ
「あなた、屋敷に到着した刹那にどこかに行こうとするのはどう言う了見なのですか?」
「いえ、お腹がすいたので帰ろうかと」
「いいですか?この屋敷には貴方の部屋があるのですよ?つまりこの屋敷こそが貴方の帰る場所なのです」
「だってここのお部屋にいても人の出入りが激しくて落ち着かないんだもん」
「それならば私の家にも部屋があるよ?ハリスの部屋ではなく2人の部屋だけどね。あそこなら誰も入ってこないよ?」
「あそこは俺の部屋じゃなくて転移部屋だからね?そこに勝手にエルフさんが私物を持ち込んでるだけだからね?」
仕方がないので公爵家でお昼ご飯(と言うか間食?)の用意をすることに。
フィオーラ嬢以外のみなさんはまだ帰宅なさらないのかな?いえ、別に追い出そうとしているとかではなくてですね・・・。
仕方がないのでいっぱい作ることに。どうせ余ってもAさんが平らげるから大丈夫。
てか前の料理長、第二夫人と一緒に追い出されたから厨が使いやすくなったんだよね。新しい料理長は親切だし。
決して怯えられているのではないと思いたい。
さて、何を作ろうか?間食、アフタヌーンティ、飲茶。
・・・とても、とても点心が食べたくなったのであります!!
・・・
・・・
・・・
「てことでご用意したのがこちら」
「あなた軽く食べるような物を作ってくるって言ったわよね?ガッツリと1時間くらい経過しているのだけど?」
だっていろんな下準備に時間がかかったんだから仕方がない。
思いつきだけで点心とか作るもんじゃねぇな・・・。
点心では一番の大好物である『もち米の揚餃子(ハムスイコー)』はもち米がないから作れなかったし。定番のフカヒレ系も無いし。
もちろんもち米やフカヒレ以外にも素材は大量にないんだけどね?足りない分は似たような味や食感の物で代用。
そして今度海に出てサメを乱獲してやろう。むしろ普通に市場で買うか漁師さんに頼む方が早そうだな。
「てことで本日のメニュー。蒸し物がこちらから『海老蒸し餃子、小籠包、ブタさんの焼売、カニさんの焼売、少し大きいのがチャーシューまん』です。続いて揚げ物が『海老クルトン、春巻き、揚げたワンタンを添えたエビマヨ』になります。出来上がりすぐに時空庫に入れましたので全品アツアツですのでお気をつけてお召し上がり下さい」
「軽くつまむどころか普通にお食事会じゃない・・・あとすべて聞き覚えがないお料理なのだけれど、どこでこんな料理を覚えてきたのよ」
「ノーコメントで」
やたらと海老素材の料理が多い気がするのは港町に行く度にいっぱい仕入れてあるから。揚げ物には海老!
ああ、俺は蒸し物に酢醤油どころか焼き餃子にタレも付けないで食べるけどみんなには一応出しておかないとダメかな?
薬味に生姜の刻んだのとかもいる?そもそもの食べ方がわからない?もっともである。
ちなみに海老蒸し餃子の透明の皮は普通の小麦粉ではなく、小麦粉からグルテンを取り除いて精製した浮き粉って言う粉を使うのである。薄っすらと透き通ってて綺麗だよね。
てかそんなものどうしたのかって?料理スキルと魔導板さんに頼んだに決まってるじゃん。
食事風景は・・・割愛。みんな幸せそうな顔でモクモクと食べてたし。
リリアナ嬢が見た目よりよく召し上がるのはやはりそのおっぱいに・・・特にフィオーラ嬢が少食ってわけでもないし関係ないな。
あっ、そう言えば焼き小龍包を忘れてた!帰ってから晩ごはんに作ろう。
でもひとつだけ、女の子が小籠包を食べる時に「熱いお汁(意味深)がお口(意味深)から・・・溢れて(意味深)きちゃうのぉ・・・」とか言うのいいよね!!
そんな事言わない?せやな。
そして意味はそのままなので特に深くはなかった。
そして月日は流れ・・・てもないんだよな。数日しか経ってないし。
ほら、俺って今年成人式があるじゃないですか?
街とか村の人はちょこちょこっと教会に行って『成人したよー』と神様に報告(要・お布施)するだけでいいんだけどご貴族様はそうもいかないらしい。
メルちゃんに聞いたところだと・・・昔の日本みたいな感じって言えばいいのかな?基本は寄り親にお世話してもらうみたいな。
もちろん帽子をかぶせられたりはしないんだけど・・・メルちゃんは女の子だから男の成人の作法なんて詳しくは知らなかった。
そしてもちろん俺も知らない。何故ならハリス君だからな!
さすがに変なことする(またはしない)とキーファー家に迷惑をかけるのでコーネリウス様にご相談する。
ほら、俺のせいで『あそこの家は寄り子の成人の面倒もちゃんと見ない』とか言われると困るじゃん?
「てことでどうすればいいんです?」
「・・・まさかハリスの方から相談に来るなんて・・・成長したんだね?」
「このまま帰りますよ?」
うん、成人式、表面的には普通に『お誕生日会』みたいなものだった。
そしてなぜ『表面的』なのか?それはもちろん『裏面的にも成人』させてもらえるから。
もっとわかりやすく?だから成人だよ成人!!
わかるだろ?大人の階段だよ!言わせんな嬉し恥ずかしい。
「えっと・・・それは絶対にです?いや、もちろんそれ自体には何の問題も無い、むしろどんとこいなんですけどね?ほら、お相手の指名とか」
「そういうお店じゃないんだから指名とかあるわけ無いだろう・・・」
そうだね、最初から気付いてたけど駄目だよね。そもそも顔見知りが出て来たりしたら非常に気不味いかちょっと興奮するかどっちかだよね。
まぁあれだ、結婚してちゃんと前後、左右、上下に運動出来ないとお家の大事になっちゃうからさ。
こっそりと経験豊富な後家さんとかをあてがわれるらしい。
初夜に隣の部屋で誰かが控えてて成否を声で確認されたりするよりはいいと思う。
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