新しい同居人編 その28 きっと前世は真田昌幸

・・・適齢期のご令嬢の誰かと入場したらぜったいに角が立つからこの申し出は非常にありがたいかも?

などと思っていた時期もありました・・・。


「ミーナ、いくら貴女が私の姪であっても今回は譲れないわよ?そもそも貴女にはコレがないのだからその資格がないのだもの」

「そうよ、ヘルミーナちゃん。今日はそんなワガママは駄目な日なのよ?・・・コレ、着けてないでしょう?」

「まぁ今日の所は私に譲ってくれたまえ。私は彼の婚約者なのだからな」

「そうだぞ少女よ。いや、そもそも年若いのだからもっと若いのを捕まえればいいだろうが、どうして私の物を奪おうとするのだ!!」


よくわからないが全員で誇らしげに馬車の起動キーであるところの腕輪を誇示する。

あと後半二人、特に赤い人は見てて辛くなりそうだから幼女にそういうこと言うの止めてもらえるかな?

必死過ぎて俺が貰っちゃいそうに・・・なんだろうこの既視感。


てかさ、全員で小さな子に『私達は馬車貰ったけどあなたにはなかったでしょ』アピール、大人気なさ過ぎてちょっと引くわー。

ほら、姫騎士様が涙目に・・・なってないな?あれれー?

むしろ『このおばさんたち何いってんの?馬鹿なの?死ぬの?』みたいな顔してるぞ?


「あら、おばさまたちがしてるのは『うでわ』です?それってたしか『ばしゃをうごかすためのまどうぐ』ですよね?ふふっ、そんなのでよろこぶなんてあんがいみなさんかわいいのです」

「私以外の方が気にするかもしれないから叔母様は止めてさしあげなさい。あら、ミーナは腕輪を贈られるのがどう言う意味か知らないのかしら?」

「そ、そうよミーナちゃん。私はおねぇちゃまだから大丈夫だけど叔母様の一言が胸に刺さる方がいらっしゃるからね?」

「ちなみに私は全然気にならないから大丈夫だよ?婚約者もいるしね」

「お、お前らは全員で妾だけが叔母様だと言いたいのだな!?あれだぞ?傍から見れば十把一絡げ、この場にいる全員行き遅れだからな!!・・・まぁそんな妾も求婚されたのだがな」


いい歳の淑女が四人がかりで7歳の幼女を追い詰める図。いや追い詰められてる様にしか見えないけれども。

だって当の幼女、姫騎士様は薄っすらと笑顔を浮かべて勝ち誇ってるからさ。

そして会話の端々に気になる言葉が混じってるんだけど?

特に一番不穏当な感じなのが『腕輪を贈られるのがどう言う意味か』と言う所。


・・・確かにみんなに馬車をプレゼントした時に、馬車そっちのけで腕輪の方を喜んでたんだよなぁ。


「ええと、コーネリウス様、少しご質問が」

「アレに巻き込もうとしていないのなら答えるけどどうしたんだい?」

「いきなりの予防線・・・参考までに、異性に対する求婚、特に男性から女性に対するプロポーズの際には・・・何か贈り物などするものなのでしょうか?」

「そうだね、物と言う括りならば指輪、腕輪、首飾りなどの相手の身体を拘束するアクセサリー系だね。指輪より腕輪、腕輪よりも首飾りの方が相手を求める気持ちが強いと受け取られるよ?その中でも相手や相手の家に関連する色のもの、さらに自分の」


・・・アレだわ、俺、全員に『各ご家庭のカラーの馬車』を送ってるわー。

いや、馬車は関係ないけどご令嬢全員が身に着けてるアレ『同系統の色の作動キー(腕輪)』も渡してるわー。

ちょっとおかしいとは思ったんだよ?腕輪を渡す時に軽い感じで渡そうとしたら何度かリテイクくらったもん。

車のキー渡すだけなのに『もっと心を込めた感じで!』とか意味わからなかったもん。

てか『求婚イコール指輪』という圧倒的な刷り込みがあったから腕輪とかまったくノーマークだったんだけど?

コーネリウス様、その『さらに自分の』の後の言葉はもしかしなくても


「ふふふっ、ハリスがミーナにくれたものはそんなぜんいんおそろいのものではないのですよ?ちゃんとミーナのことを想って、目の前で作ってくれた・・・『ハリスの名前入りの首飾り』なのですから」


『ピンクゴールドの首飾り』を愛おし気に指先で撫でる恋する女の顔をしたヘルミーナ嬢。

えっ?姫騎士様ってそんな顔もするの?いつもの純真無垢な天使の微笑みはどこに消えたの?

それといつもの少し舌っ足らずな感じの話し方じゃなくなってるんですけど?


「なっ!?ハリスっ!?どう言うことなのかしらっ!?!?」

「・・・」

「は、は、は、ハリス?君はどちらかと言えば年上が好きだと聞いていたのだが?」

「ハリス、大丈夫、妾は側室であろうと全然大丈夫だからな?」


ホラー映画のように女性陣全員の首がグリンと回転して、瞳孔を目いっぱいに開いてこちらをむく。怖い怖い怖い!異世界に飲み込まれそうだから向こう向いて!!

・・・いや、ここが既に異世界だったわー・・・。


「贈る人間の名前入りの首飾りとか求婚以外の何物でもないじゃないか。君は娘がまだ7歳だからどうこう言ってたくせに何時の間に・・・もちろん反対はしないよ?今日からパパって呼んでいいからね?」

「呼びませんから・・・」


公爵家ではお嬢様には普段からどの様なご教育をされているのでしょうか?お嬢様と書いて(ぐんし)と読むのでしょうか?

愛読書は孫氏とか呉氏とか六韜とかなのです?すでに諳(そら)んじられたりとかしませんかね?

今日に関しては勝ち確だと思っていたご令嬢方のお顔から表情とか感情とか魂とかが抜けちゃってるけどその顔をしたいのは俺なんだからな!!



入場のエスコート?もちろんヘルミーナ嬢の手を引いた・・・だけでなく、腕輪を渡したお嬢様方、もちろん王女様も含めて全員入場の度に場外に出てエスコートをしたさ・・・。

もうね、会場の視線。

俺の顔を知らない地方貴族の方々の表情が


『あの男の子はそう言う担当の子供なのかな?少し羨ましくはあるが微笑ましいな?』


って感じの前向きな受け取られ方をしたみたいで非常にありがたかったんだからねっ!

手をひかされる俺の心境はタクラマカン砂漠のようだったけどな!俺の楼蘭は何処に・・・。


―・―・―・―・―


いつもコメントありがとうございます、楽しみに見せてもらっております♪

最近個別にお返事できていなくて申し訳ありません・・・m(_ _)m


まさか姫騎士様の謀略に気づく人がいるとはっ!!

・・・わかりやすいとか捻りがないとか言うのは禁止です(笑)

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