新しい同居人編 その23 結局連れて帰ることに

「そういえば姉、予備の魔水晶はどうしたんだ?」

「ちゃんと隠してあるよ?」

「ならそれで金貨50枚分返してやって?」

「うん、わかった」


とんとんと2階に登り革袋に入った魔水晶を持って降りてくる。

『大事なものだからちゃんとしまっておく程度の応用は利くんだな?』とか思っちゃった俺は悪くないと思う。

だってダーク姉、見た目や年齢とはウラハラに妙に子供っぽいところがあるんだもん。もし俺が幼馴染だったなら、まかり間違えばそんな仕草に惚れていた可能性も無きにしもあらず。恐ろしきかな幼馴染補正。


そして金貸し・・・じゃなくて商人、別に遠慮はいらないから金額分魔水晶を持っていくといい。

ああ、でもこの先あまり阿漕な取り立てとかしないほうがいいぞ?

世の中には『悪徳高利貸しなら暴れて建物ごと吹き飛ばしても大丈夫』だと思っている狂った奴もいるからな?特に朝から訪れる人間には気をつけるんだぞ?


「さて、エオリア卿、今回は手間をかけて済まなかった。詫びと言っては何だがそこにいる2人というかそこの元酔っぱらいと太ったおばちゃん。その2人が俺に支払う必要がある魔道具の代金、そうだな、金貨20万枚の利権を譲ろうではないか。ああ、もちろん親の借金は子に受け継がせたりはしないよな?」

「ええ、本人たちの労働でキッチリと、2人居れば年に金貨50枚にはなるでしょうから利息込みで4000年払いさせますので問題無いですよ?ああそうだ、もしも閣下がよろしければ積もる話もありますしこれから屋敷で一緒に食事でもいかがでしょう?」


4000年とかエルフでも寿命で何回か死ぬわ。

そして足先から冷えてるし普通に帰ってお風呂にのんびり浸かりたいんだけど?

流石にこっちからわざわざ呼び出した上にそっちから誘われたらラフレーズ家の顔を潰すわけにもいかないし付き合うけどさ。


「あと臭いから両側から腕に抱きつくの止めてもらえる?」

「君、美人を両手に侍らせてその言いぐさはどうなんだい?」

「ならエオリアもこっち来てちょっと臭いを嗅いでみろよ、頭部からなめし革っぽいスメルが漂ってるんだぞ?」

「君の愛妾の臭いを嗅ぐなんて恐れ多くてとてもとても、謹んで遠慮しておくよ」

「絶対に愛妾ではない。我慢できる範疇は限りなく他人に近い知人までだから」


「ハリス・・・捨てないで・・・私だけでいいから連れて行って・・・」

「お姉ちゃん!?私も!私も行くからっ!」

「・・・まぁ新しい領地で2人で食堂を開いてくれるなら付いてきてもいいけどさ」


うん、流されやすすぎだろ俺。

まぁヴィーゼンには飯屋とか一軒もないし?

きっと食べに行く人も居るだろう、たぶん。



ラフレーズ伯爵邸まで向かうのに取り敢えず『馬車と言う名の黒いやつ』を取り出す俺。

いきなり現れた見慣れない物体に何の騒ぎなのかと集まっていた野次馬(オーディエンス)がそこそこざわついてるけど気にしたら負けである。

うん?エオリアも一緒に乗って帰りたいの?ああ、ダーク姉妹も乗るんだ?


「・・・いや、逆に考えてみよう。薄汚れた美人ダークエルフの姉妹・・・いい方向のみで進めていけば・・・いろいろ捗るよな?」

「どうして僕に同意を求めたのかな?無関係だから、女性関係に関しては僕はノータッチだから」

「てかエオリアって俺より年上だよね?まったく興味はないけど結婚とかしてるの?」

「興味ないのにどうして聞いたのさ・・・結婚はまだだけど婚約者はちゃんといるよ」


「チッ、何なの?婚約者すらいない俺に当てつけなの?」

「いや、君、この前僕に婚約指輪5つも見せびらかしてたじゃないか・・・」

「あれは婚約指輪ではないんだよ、困惑指輪なんだよ」

「ちょっと何言ってるのかわからないんだけど」


だって特殊性癖の道連れが欲しいじゃん。

そして後部車両ではなく助手席に座るエオリア。

・・・男が隣に座るとかあまり嬉しくない。


「て言うか何なのこの馬車!・・・そもそも馬車で合ってるのかな?走ってるのに全然揺れないんだけど?あと急に呼び出すの止めてね?君が街なかで暴れてるって聞いて心臓が止まるかと思ったんだからね?」

「いや、全然暴れてねぇし?・・・まぁ、ちょこっと迷惑をかけた気がするようなしないような?ごめーんね?」

「反省の色がまったく見当たらないんだけど・・・」


仕方がないので伯爵邸に着いた後、エオリアの私室にエアコンの魔道具とコタツセットをそっと置いておく。

備え付け以外の魔水晶は別売りになりますのでディアノ商会でお買い求めください。

あ、どうせだからここん家でダーク姉妹を風呂に入れていいかな?連れて帰ってからだとうちの浴槽がきちゃなくなりそうなんで。

笑顔でとても嫌そうな顔をされたが了承してもらった。


・・・よし、ダークエルフ姉妹、着替えは俺がちゃんと用意してやるからな。


まずは下着、黒い紐パンに黒い紐ブラいや、そこまでするならもういっそマイクロビキニはどうだろうか?玉パンとかいうニッチな製品も悪くないな。

よし、妹はマイクロビキニ、姉は玉パンを置いておこう。


その上に着るのは黒いピッチピチのラバースーツ。キャットスーツって言うのかな?・・・魔導板さん、ジッパーって作れる?大丈夫と。なら背中から腰までとお尻から股間部分までそれで。

あれだぞ?股間部分のジッパーはおトイレ用だからな?けっしていかがわしい目的など無いんだからな?


最後にアウターとして黒い革ジャンをご用意。

靴はもちろんピンヒールで!

マスカレードな感じのマスクも必要かな?



ああどうも、ここのお屋敷のメイドさんかな?今浴場にうら若い女性が2人入っているからご遠慮下さい?

連れなんで大丈夫です、はい、着替えを届けに来たので。

ええ、そこにある古い服は捨てても大丈夫・・・すみません、やっぱり回収するからいいです。


ええ、決して臭いをかぎたいとかそう言う理由で気が変わったはないです。

普通に古着をリサイクル出来るから回収するだけですので。はい。

その汚物を見るような瞳はこの薄汚れた服を見ているからですよね?

俺に向けられたモノではないですよね?


えっ?置いてある着替え用の籠に入った『ヒモ』と『玉の付いたヒモのようなモノ』ですか?

ああ、これは女性用の下着ですよ?もしよろしければメイドさんもいります?

・・・いるんだ。ええ、もちろん喜んでプレゼントいたしましょう。

出来ればここで着替えて見せていただければ・・・旦那さんがいらっしゃる?そうですか、とても、とても残念です・・・。



そういえば前に約束した『俺がエオリアにて料理をごちそうする』とか言う誰得なのかまったくわからないイベントが残っていたので物はついでなので今回でそれを消化しておくことにする。

確かエオリアは揚げ物が食いたいんだよな?

・・・厨に海老とズワイっぽい形の大きい蟹があったから今日は天ぷらだな!

俺、大好きなんだよ、蟹脚の天ぷら。


ちなみに大きな神社の出店などで蟹脚の天ぷらっぽいのがそこそこのお値段で売ってたから買ってみたらただの練り物だったので非常にがっかりした思い出。

ついでにちくわの磯辺揚げもあればベストなんだけどなぁ。そんなに時間もかからないしすり身から作っちゃうか、ちくわ。

・・・ちくわ大・・・いや、何でもないです。


ちなみにこの後ちくわがエルドベーレの特産品になった・・・かもしれない。

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