新しい同居人編 その22 「○れ」ドン!!

さて、どうしよう?

基本的にはほっとけばいいだけの話なんだけどさ。

一度助けたからって二度助けるほどの繋がりはないからね?

・・・ダークエルフサンドはしてもらいたかったけれども。


てか置いていった魔道具を勝手に持ち出そうと、いや持ち出すどころか売り払おうとしたのはちょっと頂けないなぁ。

そして自分勝手な理由で捨てた子供に寄生するような人間はしねばいいと思うんだ。

俺は大人だから穏便に『謝罪してもらうだけ』で済ませるけどね?

ちなみに『穏便な謝罪』と書いて金銭の要求と読む。


「とりあえず話をつけてやるから魔道具を買い付けようとした商人?金貸し?借金取り?を呼んできてもらえるかな」

「何だてめぇ・・・呼びたきゃ自分で呼んで来やがれってんだ!!」

「いや、マジでそろそろ助走つけてぶん殴るぞ酔っぱらい」

「あんた!こんなガキとっととしつけちまいなよ!!」


こいつらは俺を怒らせたいのかそれとも笑わせたいのか?

そしてこれはアレだろう?有名な


「○れ」ドン!!


の出番なのではないだろうか?異世界生活長いけどこんなチャンスそうそうないからね?

少し頬を緩めながら、ワクワクしながらテーブルの真ん中を叩きつける。

ドン!じゃなくドコォッ!!って感じの音だったけど気にしてはいけない。

・・・テーブル、想像よりも粉々になったな、てか机の足で床が突き抜けてるし。

あ、「○れ」って言うの忘れてた!これじゃただの「ドン!」だよ!

「黙○」が無いとただただ机を殴り壊しただけのならず者だよ!

てか別に黙れは伏せ字にする必要ないよな・・・。


「とっとと呼んでくるか?それともその机みたいに床に埋まるか?」

「い、いそいで呼んでめぇりやす!!」


『猫と鼠』じゃないんだから上から思いっきり叩いても人は床には埋まらないと思う。

そして関係はないけど『F15イーグル』より『F14トムキャット』の方がカッコいいよね?可変翼とか言う圧倒的な厨二力(ちゅうにちから)が狂おしい程愛おしいじゃん?

繰り返すけど『トム』と『猫』は何の関係も無いんだからねっ!!


俺のいきなりの奇行に青い顔をしてほうほうの体で外に駆け出していく酔っぱらいと青い顔で震えながら立ちすくむおばさん。

てか酒飲んで走ったりしたら急性アルコール中毒で死ぬのではないだろうか?

そしてしばらく待ち、酔っぱらいが連れてきたのは


「貴様か!!若い娘を人質に取り店で暴れているやくざ者と言うのは!!」


衛兵隊だった。


いや、とりあえずそいつと俺を交互に見比べてくれないかな?

どうみてもそいつがやくざ者に見えると思うんだけど?

これ、一から状況を説明しないと駄目かな?非常に面倒くさいんだけど・・・。

それほどややこしくもない問題が目に見えてこんがらがって行くのは俺の日頃の行いが悪いからなのだろうか?ちょっと凹むわ。


もう疲れたし、この際ここの領主に丸投げで構わないよね?


「はぁ・・・私はハリス・ガイウス・プリメル・アプフェル伯爵である。だるくなってきたんでラフレーズ伯爵か御次男のエオリア卿を呼んできてもらえるかな?ああ、あとそこの馬鹿に聞いて借金取りの一族郎党も連れてこい」

「き、貴様・・・貴族を騙るとは・・・正気か?」

「二度は言わんぞ?早くしろ」


久々に威圧スキルを強めに使い命令する。こう言う時にこそメルちゃんとかサーラ嬢を連れてくるべきなんだけどなぁ。

いや、さすがにちょっと様子見に来た顔見知りの流行りの飯屋が潰れててなおかつ衛兵に絡まれるとか思わないじゃないですか?

貴族の短剣?下っ端の衛兵が見てもわかるわけないじゃん。むしろ武器を抜いたとか言いながら余計に騒ぎ出すだけだわ。


てか俺に人質に取られてるらしいここん家の娘2人、あまり近よらないでくれるかな?

年頃の娘さんにこんな事を言うのは非常に心苦しいんだけど人数が増えてる上に室内だからさっきより臭いんだ。


俺の言葉に5人いた衛兵の内2人が外へと駆け出し、3人が剣の柄に手を添えてこちらの動きを警戒する。

それ、抜いちゃうと俺も庇いようが無くなっちゃうからそっと手を添えるだけに留めておけよ?


・・・そんな中で腹ペコ娘2人に食べ物と飲み物を与えながら小1時間ほどだらだらと待ち人の到着を待つ。

よしよし、たくさん食べてもいいんだぞー。ダークエルフブリーダーか俺は。

是非とも繁殖用の種は任せていただきたいものである。

そしてこの状況でも特に動揺しないでモキュモキュと食事する2人は大物なのか俺を信頼しきっているのか。2人揃ってただのアホの子と言う疑惑もあるな。


冬なのに開け放たれたままの扉の外から馬の足音がしたと思ったら中に駆け込んできたのは・・・ラフレーズ伯爵ではなくご次男のエオリア。

久しぶりに見た男前に似合わない物凄くひきつった笑顔である。


「これはエオリア卿、久しいな」

「はっ、閣下もお元気そうで何よりです!・・・して、お呼び出しのご用件は一体?」


エオリアの畏まった態度に屋敷まで要件を伝えに行って折返しで付いて帰ってきた衛兵もこの場で待機(対峙?)していた衛兵も俯いたまま微動だにしなくなった。

まぁ上司の上司の上司の上司の上司が下から出るような人間に、平民相手にえらそうにするだけの下っ端の衛兵が喧嘩売ったんだからそんな態度にもなるわな・・・。

はたから見ると微妙に俺が悪者っぽい位置に置かれてそうなのが腑に落ちないが。


あれだな、とりあえずさっきの衛兵のことはチクっておこう。

なぜなら俺は心がとても狭いのだから。

いや、こっちが貴族(フルネームで)名乗ってるのに『貴様』とか呼んじゃう奴は普通なら打首だからね?

処罰しようと剣を抜いたエオリアを止めてやったことを感謝して欲しい。反省をもよおす為に、生きられるギリギリの金額までの減給を1年間くらいの処分でいいんじゃなかろうか。


そしてそんな騒ぎの最中に入ってきたのは借金取り。いや、普通に商人だな。

てか俺の顔を見た瞬間に青白かった顔を土気色に変えるとかあまりにも失礼すぎると思うんだ。

・・・確かにここいらの商人はそこそこの数潰してるけどさ。

あれだぞ?そいつら全員俺が無体をしたわけじゃなくて勝手に絡んできて自滅した連中なんだからな?


ここに設置してあった魔道具の取引の話を詳しく聞く。

むっちゃ震えてるし歯をカタカタ鳴らしてるものだから非常に聞き取り辛いんだけど・・・。


「ふむ、それが本当なら特にそちらには非は無さそうだな」

「はいぃぃぃ!もちろんですぅぅぅ!!まさかこのような店に伯爵様の魔道具が置かれているなど夢にも思わず露ほども知らずっ!!もちろん私に出来ます精一杯の謝罪はさせていただく所存でございますれば!!」

「いや、損失を出してるのはむしろそちらだろう?そこの酔っぱらい・・・酔いの醒めた酔っぱらいにいくら前金を払ったんだ?」


・・・どうやら金貨で50枚らしい。


「いくら何でも安すぎるだろ・・・王都で売りに出したらどれもこれも金貨数万枚の価値がある品物だぞ?」


そう、作れるのが俺だけだからどんな値段をつけるのも俺次第なのだから。

メンテナンスが必要だから他人に売るつもりはまったくないけどさ。


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