新しい同居人編 その21 壺の中から太ったおっさんが出てきそうな挨拶

新年明けましておめでとうございます♪m(_ _)m

・・・と書いてるのが12/31という現実(笑)


今年も皆さんに少しでも笑顔になっていただけるようなコメディ作品にしていけたらいいなぁと思っております!!

・・・ラブ要素とファンタジー要素が迷子になってる・・・。


―・―・―・―・―


何となく毎日まったりと過ごしていると妙に落ち着かなくなる貧乏性の俺。

働いてるふりをするためにディアノ商会で商品の在庫確認や領内での行商と店舗の出店のお願いやペルーサとの雑談をする。

きちんとまとまった報告を聞くだけなのでそれほど時間は潰せなかった。

てか俺とは違い年末で普通にバタバタしてるからあまり邪魔も出来ないしさ。


そうだな、エルトベーレまで来たんだし久しぶりにダーク姉妹の顔でも見ておくか!と飯屋に向かう。


「・・・どうして潰れてるんだよ・・・」


店舗の扉や壁に『借金返せ!』などと書かれた張り紙が多数。

雑なツッコミで悪いが昔か!

あれだよね?人が出入りしたかどうか確認できるようにドアに紙切れ挟んでおいたりするんだよね?セロテープ貼っておいたり。


いや、普通に料理も出来るようになって普通に美人姉妹が経営してる普通以上に美味いはずの店がちょっと目を離しただけで潰れるとかおかしくね?

姉妹の、特に姉の性格をしらなかったら俺なら週5で通うぞ?


とりあえず声を掛けて戸をたた・・・いや、なんて声かけるのが正解なんだコレ?

まぁいいや


「おーい」


すごく曖昧な感じに声を掛けて戸を叩き待つことしばし。

扉の隙間からそっと覗く目は


「・・・妹か?久しぶりだな」

「は、は、は」

「何だその壺の中から太ったおっさんが出てきそうな挨拶は」

「ハリスっ!!!」


扉が開き抱きついてくるダーク妹ことリアーティ。

やはり再会はおっさんではなく女の子が最高!

・・・さい・・・こう・・・のはずなんだけど・・・。


「うん、頭皮がちょっと、いや、そこそこ臭いから離れて?」

「久しぶりに再会した女の子にその感想はどうなのよっ!?」


だって、本当に、臭いんだもの。

基本女の子の髪の匂い大好きっ子な俺が『こいつの頭は臭い』と思うとか女性としては完全にアウトだからな?


「いや、出る時に風呂桶置いていっただろう?魔水晶の予備もあったはずなのにどうして臭いんだよ?飲食店の従業員なんだから毎日清潔にするのは常識だぞ?見た感じ潰れてるから従業員じゃないかもしれないけど」

「うう、そんな臭い臭い繰り返さなくてもいいじゃん・・・ううう、ごめんなさいぃぃ・・・」


ダーク妹が離れてくれないのでそっと力を入れて引き剥がす。

服はちゃんと洗濯してるみたいだけど身体は・・・不明。

開いた扉から見える客入りの良かった店舗内はがらんとしてて寂しさが半端ない。


てか厨房に置いていった魔道具とか全部無いんだけど?

そして俺とダーク妹に忍び寄る影。


「ああん?お前ぇ誰だ?人ん家の前で人の娘と乳繰り合うとかどう言う了見だごらっ!」


えー・・・。

借金の取り立て方法が昔っぽいと思ったら、後ろからかけられたセリフもまた昔っぽいんだけど?

何なの?いきなり時代劇時空にでも迷い込んじゃったの?

振り返るとそこには酔っ払った筋肉質なおっさんとケバい感じのダークエル太ったおばさん。


何だよそのダークエルフの無駄遣い!

いや、よく見なくてもただの色の黒い太ったおばさんだったわ。

ダークエルフ要素特に無かったわ。

壺の中から太ったおっさんじゃなくて普通に歩いて太ったおばさんが出てきたわ。


「なんだいあんた?うちの娘のこれかい?ふん、店の役には立たないくせに男のナニは立たせてるってのかい?」


とりあえず脱力しちゃうからその三下ムーブ満載の喋り方とシモネタは止めたまへ。


「で、姉はどうした妹?」

「お姉ちゃん?お姉ちゃんは・・・」

「・・・まさか売られたのか?」

「・・・『子豚のロースト亭』で働いてる」

「何で一回溜めたんだよ・・・」


久々に聞いたな子豚のロースト亭。

結局一度も行かなかったな子豚のロースト亭。


「妹は・・・もしかしたら軟禁でもされてるのか?」

「私は・・・」

「・・・何かされたのか?」

「・・・働きたくなかっただけ・・・」

「姉だけじゃなく妹もそこそこの問題児だったかー」


うん、そこはかとなく気付いてはいたんだ、この子も駄目な子なのは。

早々に見切りをつけてここを出ておいて大正解だったな。


「じゃあ、俺はこれで。良く知らないけど親子仲良く」

「ハリス・・・お久しぶり・・・っっっ!!」


面倒事に巻き込まれない様にそっと立ち去ろうとしたのに・・・タイミング悪く子豚から帰宅した姉と目が合い、そのまま駆けてきた姉に抱きつかれる。


「うん、妹よりマシだけど頭が臭い、繰り返すが飲食店で働くなら最低限の」

「ううう・・・ハリス・・・おかえりなさいあなた・・・」

「帰ってきてないからね?立ち寄っただけだからね?勘違いしないでね?」


妹より肉感的な姉を引き剥がすのは少しもったいないかと思ったけどやはり臭かったのでそっと押しのけた。


酔っぱらいとNOTダークエルフ(NDE、ここからは『んで』と呼称・・・しない)なおばさんを無視してダーク姉妹と店内に入り、ホコリの溜まった椅子とテーブルを拭いてから腰掛ける俺とダーク姉妹。

2人に俺がいなくなってからこれまでの経緯を聞いてみたものの・・・量産型のよくある話だった。



『そこそこの稼ぎしかなかった飯屋を旦那(ダーク姉妹のお父さんだな)と切り盛りしていたおばさん、いきなり旦那が亡くなり・・・娘と3人で途方に暮れる。』


料理は亡くなった旦那さんがしてたみたいだからまぁ仕方ないな。


『疲れ果てたおばさん、旦那の弟と逃避行』


いや、少しくらいは親子3人で頑張ろうとか思えよ!あと旦那の弟(そこにいる酔っぱらい)女の趣味が悪すぎるだろ!

昔はこの街一番の器量良しだった?知らんがな、今を見ろ今を。


『美人姉妹2人が健気に店を引き継ぎなんとか店の立て直しを図る』


俺がここに来た頃の話だな。てか立て直しどころか知人の土建屋から多額の借金して資金難に陥らせてたよな?


『店が繁盛しだしたのを聞いて新しい男とともに母親が帰ってくる』


俺が出ていった後の話だな。


『なぜか店に魔道具がいろいろあったので娘に黙って勝手に売ろうとするも

持ち出そうとした魔道具が壊れる』


いや、繁盛してるんだから普通に営業を続けろよ!どうして調理器具売っぱらおうとするんだよ!

お前らは川まで毎日往復1時間かけて水くみに行かないといけない集落があったから生活に不便だろうと思い親切心で井戸を作ってやったら次に見た時には金具とか全部取り外して売っぱらっちゃってた国の人かよ!

ちなみに魔道具は防犯のために勝手に動かすと壊れる様に細工をしてあった。

ちゃんと姉には伝えてたんだけどなぁ。


『先に金を払ってあった取引先が『金返せそして迷惑料と慰謝料を払え』とごねる。

どうしようもなく親は飲んだくれて姉が働きに出て妹は引きこもる』


そりゃまぁ先払いしたら品物が無いなら金返せって言われるのは道理だろう。

借金取りには同情の余地あり。そして妹も働け。



・・・そんな時にタイミング悪く俺が久しぶりに訪れてしまったという。

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