新しい同居人編 その7 謎の闘技場

翌日もダンジョン探索と言うか未開地の探索と言うか――『ここは私がっ!』『おう、背中は任せろっ!』『頼りにしてるわよ!』みたいな好感度が上がるイベントっぽいモノもまったく無いままに――無人の野を進むが如くの遠征が続く。


「何ていうかこう、一応ほら、とても見目麗しい・・・と世間では思われているであろう女の子2人とパーティ組んでるはずなのに心の中が虚無だわ」

「いや、女の子は2人じゃなく3人じゃろが?薄ら笑いを浮かべて刃物を振り回す連中と同列に扱われても嬉しくはないけれども・・・」


新選組で例えるなら『サーラ嬢が沖田総司』で『メルちゃんが沖田総司』だからね?一緒じゃん。新選組じゃなくて沖田総司で例えてるじゃん。

俺の中で一昔前は『沖田総司=病弱な美少年』だったのにいつの間にか『笑いながら人を殺すサイコキラー』みたいなイメージになってる不思議。

てかさ、俺は歳さんポジの人材が欲しかったんだよ?キレる副長みたいな。ん?『2人ともキレてるじゃん?』。キレるの意味合いがちげぇんだよなぁ。

・・・本日も相も変わらず、フリーダムに草原を走り回る2人なのである。字面だけだと『世界名○劇場』みたいなんだけどねぇ。


「しかしあれだな、外は寒いのにここ(迷宮内)は普通にあったかい、むしろ汗ばむくらいの気温だな」

「ようは知らんがダンジョンなんてそんなもんじゃろ?管理された別世界じゃもん」

「やっぱりダンジョンって誰かが管理してるもんなの?ダンジョンマスターとか居てダンジョンコアとかあって。中ボスっぽいのはこの前倒したよな、鉄の塊の奴」

「誰かが管理してる・・・かはわからんが、中心になるモノはあると聞いたことがあるような?・・・ないような?」

「どっちなんだよ・・・」


まぁお婆ちゃん(3000歳)の記憶を遡るのも時間がかかりそうだし『コアがあればラッキー!』そして『マスターがいれば大量に経験値ゲットだぜ!』ってことでいいや。

いや、強そうならもちろん逃げるけどね?フィールドダンジョンでも普通に転移魔法は使えたしさ。


景色に変化が有ったのはその日の昼も過ぎおやつの時間になった頃。そう、迷宮内であろうとミヅキはおやつを食うのだ。

草原が開けたと思ったらいきなり木々が密集しだしてその中央部に人工物が見つかる。

木、日本でもCMとかで見かけたことがある『それって・・・何の樹木なんですかね?(意訳)』みたいなむっちゃ枝が広がってるアレが建物を隠すように上手く点在している。

ちなみにバオバブみたいな木は近くで見るととても気持ち悪いと思いました。

なんかこう奴ってクトゥルフ神話に出てきそうな禍々しい感じの形状してるじゃん?してない?


「木造の・・・楕円形の砦?いや、雰囲気的には小さな円形闘技場(コロッセオ)かな?普通に考えると中にボスっぽいのがいそうな雰囲気だよなこれ」

「まぁそうなんじゃないかの」

「お前、歩くの飽きてどうでもよくなってるだろ・・・」


草の丈の高い所は俺が肩車までしてやってるのにっ!!

せっかくの(たぶん)ボス戦なのでメルちゃんとサーラ嬢を花火(ファイアーボール)を打ち上げて呼び出す。

ボスが居なかったとしても何らかの変化はあるだろうし。



「ふむ、建造物だな」

「そうですね!建物ですね!」


1日半かかって初めて見つけた変化なのに・・・到着した2人揃って感想が雑!小学生の絵日記か。

てか今更だけど2人とも倒した魔物から素材――って言っても無属性の魔水晶くらいだけど――とか一切回収してないよね?

もちろん目的は2人の経験値稼ぎだし魔水晶は時間があればいくらでも作れるからいらないんだけどさ。


ぐるりと闘技場(?)の回りを全員で歩いて一周する。ふむ、入り口らしきものは一ヶ所だけみたいだな。

とりあえず入ってみるか?

ここまでコボルトやゴブリンしか出てこなかった(女子2人が殲滅していくので俺は死体しか見てないけど)んだからボス戦だったとしてもそこまで強くは無いだろう・・・たぶん。

ソースはゴーレムの迷宮。情報源が少なすぎて大して当てにならないな。


そして2人して『入るの?この中に入るの?むしろまだ入らないの?先に入っていい?』みたいなワクワクした顔してるけど・・・


「先に言っておくけど・・・ここからはいきなり吶喊かますのは禁止するからね?」

「はい!そんなことは絶対にいたしません!」


サーラ嬢、返事だけはいいんだよなぁ・・・三歩で忘れそうだけど・・・。


「・・・わかってるよね?」

「ふっ、私は騎士だぞ?集団行動の規則など体に染み付いているさ」


メルちゃん、体に染み付いていてなおも突然走り出すのは救いようがないのでは・・・?


「ミヅキ、もしかしたら危ないかもしれないから一応首に巻き付いておいてくれるか?」

「まぁしょうがないの」


俺の首に手を回したと思ったらそのまま小さな蛇の姿になりくるくると首を三周する。

見た目ちっさいからついつい気を使っちゃうけどこいつ、祟り神だし多少のことでは怪我すらしないだろうなぁ。

あ、メルちゃんはミヅキが蛇神様なのは知ってるけどサーラ嬢は知らなかったから愕然として面白い顔になってるや。


「じゃあ・・・注意しながら進むよ?」


木造の大きな両開きの扉をゆっくりと押して開く。『ギギギギギーーーーー』と音を立てながら動く。

先に続くのは薄暗い通路・・・あ、ここも勝手に松明っぽいのが手前から灯っていくんだ?これってダンジョンの基本仕様なの?

揺らめく松明の灯りに照らされた先には開いたモノと同じ大きさの扉がもう一枚。

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