東の果て編 その19 暗黒卿の暗黒魔法です
商会長も帰したし、お互いに挨拶も終わったのでそれではこれで・・・とはいかないのが宮仕えの悲しさ。
「それで・・・奥に通されたと言うことは何かお話があるんですよね?」
「ふっ、話が早くて助かる。ああ、そうだ。と言うより卿も薄々は気づいているのではないのかな?」
「あー・・・やっぱりそんな感じの話になっちゃってます?」
「ああ、まだ確実性は無いがな、十中八九そうだろう」
「難儀な話ですね・・・」
「えっと、二人は何のお話してるんだろう?」
「ん?ああ、君のお父様も犠牲になってしまった魔物の氾濫と・・・おそらくは最近の荷留に近い状況のことだと思うよ?」
「やっぱりエオリアも気付いてたのかよ」
「ちなみに君、話が出るまでは知らないフリで通そうとしてたでしょ?」
「当たり前だ、どうして態々国の揉め事に口出ししないといけないんだよ」
「いや、君もすでに国家の運営に関わる上級貴族なんだからさ・・・」
「ふっ、いざとなったら・・・逃げるし」
「最低だよこいつ・・・」
だって別に国には世話になってないもの。
まぁ現状お世話になってる相手が多すぎてそうも言ってられないのが玉に瑕なんだよなぁ・・・。
「それで、卿の認識としてはどの程度の話だと思っているのかな?」
「そうですね、魔物関連の情報として個人的に知っているのは北部の黒竜とこの街の東部で起こった魔物、ゴブリン種の氾濫だけ。情報として知っているのは東部で他に2箇所、西部で4箇所、北部で2箇所、中央で5箇所・・・ですかね?まぁ竜種の様な大物の話はありませんでしたが」
「・・・驚いたな、自分で言うのも何だがこんな東の端でそこまでの情報を集めてるとは・・・」
別に自分で情報を集めたわけじゃなくペルーサに『調べておいてね☆』って頼んでただけなんだけどね。
古今東西問わずそれこそネットでも無ければ商人の情報網が一番早くて広いもん。
「そして王国最大の・・・と言うか唯一の貿易港であるこの街に入ってくる物資の減少と出ていく物資の増加。ここまで来ると誰かが糸をひいてるとしか考えられないですから」
「で、卿の見解では何方だと?」
「仕掛けが大掛かり過ぎますので間違いなく外ですね」
「そうか・・・戦になるだろうか?」
「むしろもう始まってるのではないかと」
「なんか難しそうな話ししてるね?」
「そうだね。て言うか彼が居ると僕がすごく楽できそうだしずっとこのまま屋敷でいてくれないかなぁ」
「そ、それは駄目よっ!!晩御飯までには帰らないといけないし!」
「いや、一応国家の大事の話ししてるんだけどなぁ?晩御飯って・・・」
隣でコソコソと気の抜けた話するの止めてくれるかな?
「私は大至急王都に戻ろうと思うが卿はどうする?」
帰って晩御飯らしいです。って言ったら怒るだろうなぁ。はぁ、まぁ早めに一度戻っておいた方が御令嬢のお怒りも小さいかな?
「そうですね、お急ぎでしょうしお供しますよ」
一緒に行くとぐずる幼女(ヴィオラ)を連れて帰り幼女(蛇)と交換した上でグリューデン伯を連れて王都のキーファー公爵家の庭へ転移する。
・・・あ、姫騎士様、お久しぶりです。今日もお庭で剣のお稽古ですか?むっちゃビックリした顔してるけどとても愛らしいですねえあっ!?
「ハリスっ!!」
「・・・危険ですからいきなり飛びつくのは止めましょうね?」
「ハリスはちゃんとうけとめてくれるでしょう?」
「まぁお怪我でもさせたらお父様とお祖父様に殺されかねませんからね・・・」
胸に飛び込んできたヘルミーナ嬢の勢いを逃がすのに抱えてその場でくるくると二回転。
「ていうか今どこからきたの?いきなり出てきたよね?」
「ふふっ、暗黒卿の暗黒魔法です」
「ずるい!わたしもれんしゅうしたらできるようになる?」
「日々の鍛錬でどうにでもなります」
「なるわけないじゃろ」
余計なこと言うを言うな蛇。話が長くなるから!
「では私は少々用事がありますので」
「叔母様に会いにいくの?」
「そうですね、正式には公爵閣下にお取次ぎをお願いしに、ですけどね」
しがみつく幼女を下ろして・・・廊下からこちらを睨みつける叔母様・・・おほん、フィオーラお嬢様のもとに歩いていく。
そして近くまで行くと片膝をついて
「お嬢様、お久しぶりです。先だっては私のいきなりの我儘を聞いて頂き誠にありがとうございました」
「待ちなさい、少しやり直しを要求します」
「へっ?あ、はぁ」
リテイク命令がくだされた。
少し離れてから歩きだすと駆け寄ってくるフィオーラ嬢が先程のヘルミーナ嬢と同じ様に飛んで抱きついてきたので同じ様にくるくると二回転。
なんだこの茶番。
うん、何ていうかこう、温かいし落ち着くいい匂いがする。
ちなみに抱っこして寝るのに一番落ち着くのは精霊子グマ、二番目はミヅキなので
「んー、暫定3位?」
「何の順位なのですかそれは!そしてどう考えても私が一位で無ければおかしいでしょう!!・・・まったくあなたは・・・ようやく帰ってきましたね」
「ようやく、ですか?もしかしたらもうずっと戻らないとは思われなかったのですか?」
「ええ、私にお願いごとをしたのですからその恩を返す為に絶対に戻ってくるのはわかっていましたから。それに・・・あなたは私が大好きだからこの身に何かあれば必ず駆けつけてくれるでしょう?」
「すごい自信ですね?・・・確かに・・・例え月まででもお迎えに行きますよ」
「ハリス・・・」
「フィオーラ様・・・」
そっと目を閉じて唇をこちらに近づけてくる彼女。
「あ、話は変わるんですが」
「何故このタイミングで変える必要があるのですか!?」
「いえ、不法侵入者もこちらを見つめておりますし」
「メルティス、殺りなさい」
「私は卿に連れてこられて尚且放置されていたのだがね!?」
メルちゃんを放って置くと本当に伯爵が分割されそうなのでこちらもよしよしと頭をポンポンしておく。
五等分の伯爵とか完全に事件だからな。
「御主人様、確実性が有るわけではなく、恐らくはとうに閣下もご存知とは思われますが・・・至急お伝えしておくべき事案が御座いますのでお取次ぎをお願いいたします」
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