王都公爵邸編 その22 しかし回り込まれてしまった!
さて、一昨日、昨日と蛇の力を借りてオースティア様たちをツルッツル、そうツルッツルにしてやったこの俺。
みんなあれから物凄くご機嫌で(何故か)お付きのメイドさん達からも感謝されている今日このごろ。
まぁ御主人様の機嫌が良ければ機嫌が悪い時よりも叱られる頻度は(多少は)減るだろうし、下賜してもらえる物(おやつとか)も増えるもんね?
あ、コーネリウス様からもあの後お小遣いをゲットいたしました!ものすごい笑顔で『またよろしくね?社交辞令じゃ無いからね?本当によろしく頼むよ?』って頼まれながら。何ていうか必死過ぎて・・・引く。
あれだぜ?大貴族様からのお小遣い。軽く一般家庭の年収くらいはあるんだぜ?
てなわけであぶく銭も入ったので蛇と約束してたお酒でも仕入れに行くかとお出かけの用意。さすがに毎回毎回厨(くりや)から貰うのも気が引けるからね。
て事で蛇に「行くぞ!」と伝えると「どこに?」とも聞かずに大喜びで俺の背中に飛び乗・・・ろうとするも華麗に回避する。歩け。
酒が欲しいだけかとちょびっと思っていたが本当にどっかに行きたかったようである。
うむ、疑ってすまない・・・。ほら、日頃の行いとか色々あるじゃないですか?
日頃の行いの悪い神とは一体。まぁこいつ、元々祟り神だから仕方ないか。
しかしここで重大な問題が発生する。
王都生まれの王都育ちであるところの俺氏(ハリス君)、基本家に引きこもっていたので王都の店の場所を知らない。
否、店がうんぬん以前に王都の土地勘が全く無いのだ!!
「行き詰まった・・・」
「何故部屋から一歩出ただけなのに詰まるのじゃ・・・」
うん・・・どうしよう?いや、もちろん素直に誰かに案内を頼めば良いんだけどね?
ほら、俺、友達とかいないし知り合いも少ないじゃないですか?
・・・自分で言ったことなのに心が痛いであります!
とりあえずキョロキョロと辺りを見回す。Aさんと目があった。
用事?いえ、別にないですよ?いえ、本当に大丈夫です、はい、(あなたは)いらないです。
うん、北都の(ポンコツ)メイドさんに案内頼んでも一緒に迷子になってる未来しか見えないから。
・・・いや、そういえばポンコツ繋がりでメルちゃん。北都を出る前に「私が案内してやろう!」とか言ってたような言って無かったような?
て事で探す。と言ってもこの時間ならおそらく中庭で一人で剣を振り回しているはず。もちろん気が狂れている訳ではなく稽古な。
・・・いたいた。でもここで「メルちゃーん!!」などと大声を出してはいけない。
なぜならそれを聞きつけたフィオーラ嬢やリリアナ嬢が駆け付けてくるかも知れないからだ。
特にフィオーラ嬢は北都を出る時に『2人でお出かけとか必ず阻止する』って言ってたしさ。
てか最近週に3日くらいはリリアナ嬢のことお屋敷で見かけるんだけどよほど暇なのだろうか?
そして御令嬢に聞かれたらいけない理由。もちろんメルちゃんとデートがしたいからだけじゃないんだよ?
だってもし『街に買い物に行く』とかバレたら間違いなく付いてきそう・・・と言うよりも絶対に付いてくるじゃないですか?
でもほら、お二人共最上級のお嬢様、箱入り未婚の超美少女。お出かけの際にはお供が当然付いてくる。
まぁ北都ではイン○ン・・・じゃないあん○つ姫の様にメルちゃんとメイドさんと御者さんくらいの少人数で出掛けてたけど・・・。
てかもうだん○つじゃなくイ○リンになると全く意味がわからないなコレ。
そもそも『あ○みつ姫』を知ってる人が現状で2割くらいはいるのだろうか?
てか御令嬢がお出かけするとか普通はとんでもないことなんだよねぇ。
それこそ『馬車10台、騎馬50騎、その他総勢200人!』くらいの規模で護衛が付く。ちょっとした大藩の参勤交代である。
そんな大人数が似合うお出かけ場所とか戦場の慰問くらいしか無くね?
まぁ話半分だとしても100人、「ちょっとそこら辺で酒買って来るわ!」で出掛けたら市場も大騒ぎだ。
なのでここは涙を飲んで
「ん?おお、ハリス、こんなところで会うとは奇遇だな!どうした、どこかに出かけるのか?なら私が案内してやろう!」
・・・お、おう・・・。
気さくに俺に声をかけてきた女性・・・。メルちゃん?ちげぇよっ!!
ワインレッドの髪に・・・みなまで言うな?そうだね、もう分かるよね。
『赤い魔神』こと『アリシア』殿下だ。
てか奇遇で他所様の邸宅の庭に不法侵入とかどうなってるのさ・・・。
「これはこれは・・・殿下、お久しゅうございます」
「まったくだぞ?一度くらいは夜這いにでも訪れるかと思ったがいっこうに来ぬからこうして妾から訪れてやったわ」
人、それをありがた迷惑という。
てかなぜ俺が夜這いになど行くと思ったんだこの人?
「ん?そなた三大美女を手篭めにしてまわっているのであろう?なら最後は妾ではないか」
「その様な事実は一切ございません。・・・ええと、本当の御成の理由は聞いてもよろしいのでしょうかね?それともどなたかに取次を?はたまたお供の方が先触れを?」
「理由も何も普通にそなたに会いに来ただけだが?供は連れていないな、逢引に共連れなど無粋であろう」
ちょくちょく表情で考えを読まれる俺。
何と言うか・・・王族だけあって自由な人だなぁ。
まぁ確かにこの前見た真っ赤でエロ・・・少々扇情的なドレスとはことなり、フードが付いた薄手の外套姿だからそれほど目立ちはしないだろうけど。
本物のお姫様が一人でお出かけとか。いや、少なくとも男一人ラクラクと引きずり回すくらいだから何らかの力(スキル)はあるんだろうけどさ。
あれだな『触らぬ神に祟りなし(うちにいる蛇は気ままに祟るけど)』とっとと出掛けてしまおう。
「えっと、私(わたくし)、これから少々街に出かける用件がございまして」
「ん?ああ、最初から案内してやると言ったではないか。もちろんかまわぬぞ?」
どうやら出かけるのではなく引きこもるのが正解だったようだ。
いや、それはそれで部屋まで付いてきそうだからマズイことになりそうだけど。
そ、そうだな、ここはポジティブに、ポジティブに考えるんだ!
『ポンコツ女騎士ちゃんよりも街をよく知る優秀な魔神に案内してもらえるのだから得したんだ』と。
喜べる要素が特になかった。メルちゃんといちゃいちゃしながら街を練り歩きたい人生だったよ・・・。
さて、街に出かけると言ってもここは貴族街、それも王城を囲むように配されている上級貴族の邸宅である。
買い物に行くならここから内壁を一枚超えた上級平民街らからさらに外周部分にあたる平民街まで行かないといけない。
徒歩で行くには少々遠い。距離的には片道1時間以上。もちろん直線距離ならそんなに時間はかからないんだけどね?
お城の防衛の面から見ると平安京みたいに真ん中に大通りがある様な都はそうそう無いのだ。
そもそも上級貴族の邸宅のある地区を徒歩でだらだら歩いていたら衛士に職質待ったなしである。
そして王女様を見て相手が真っ青になるまでがお約束だな。
あ、その王女様であるがここまでは単騎で馬で来たらしい。馬?もちろんそのまま門衛に預けて来てるという。
門番のおっちゃん、いきなり王族に馬を押し付けられるとか顔を真っ青にしてるのではなかろうか。
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