王都公爵邸編 その21 へびへびエステ
引き続き王都滞在中のフィオーラ嬢御一行(含む俺)。
最近姫騎士様からのボディタッチが増してきたように感じ非常に困惑している。
やたらと腰回りとか腹回りとか太もも回りとかペタペタ触るのは止めようね?
「おい、主(ぬし)よ」
「なんだよ蛇」
「我は蛇ではない!ミヅキだ!」
「そうだなー」
俺の隣に部屋を一つ与えられたのに相変わらず俺の部屋に滞在してやがる白蛇様を軽くいなしながら床の上で寝っ転がる俺。
最近やった事と言えばよく知らない人との顔つなぎ、料理、公爵家のリフォーム、他所のお家(侯爵家)で料理、と、自分が何の仕事をしているのかブレッブレで少々困惑気味の俺なのである。そもそも側仕えとは一体なんなのだろうか・・・。
ほら、勇者やってる時は四六時中剣を振り回してればよかったし、孤児院に居る時は経験値稼ぎだけしてたじゃん?
だからこう言う自由な時間が増えると持て余すんだよねぇ。
もちろん性欲ではないからな?
まぁ寝っ転がって魔水晶作ってるんだけどさ。こういうとこ貧乏性なんだよなぁ・・・。
「いや、なぜ会話の途中で勝手に考え込んどるんじゃ!もっとこう自主的に話を広げるとかあるじゃろが!」
「えー・・・で、何用なんだよ?」
「相変わらず覇気のない・・・初対面の時はあれほど凛々し・・・くも無かったような?いや、我って最近退屈じゃないですか?」
「知らねぇよ・・・勝手にどっか行けよ・・・」
「いいのか?ホントにいいのか?我これでなかなか厄介ぞ?肩が触れたとか足を踏んだとかちょっとしたことで街の人間に祟るぞ?」
はた迷惑この上ないな!!それ神様じゃなくただのチンピラじゃん!!
まぁ蛇だから仕方ない気もするけどさ。イメージが執念深そうって定着してるもん。
「はぁ・・・よし、明日!・・・もしくは明後日・・・」
「それ絶対に行かないヤツじゃろ!?いーやーだー!でーかーけーるー!!」
「よし、食堂で酒を貰ってきてやろう、つまみもいるか?」
「我出掛けない!うむ、瓶じゃのうて出来れば樽でな?つまみはあっさりしたモノがいいぞ?」
まぁ蛇と言えば酒好き!って事で何か面倒くさい時はだいたいコレで片付くんだけどな。
蛇の酒好きイメージってどこからなんだろうか?日本だとヤマタノオロチ?世界的にはどうだったんだろう?
てかさ、コイツ実は最初から出掛けたいんじゃなくて酒が飲みたいだけじゃないかとも思うが・・・。
タダ飯食わせてるだけじゃここん家(公爵家)にも嫌がられるかもしれないしなぁ。穀潰しは俺一人で十分なのだ!
いや、俺、一応働いてるから(震え声)
と言う訳で「やっぱ酒は後な?そのかわりいい仕事したらいつのより高級酒を進呈する!さらに量も二倍!」「おかのした!」と蛇を説得し、メイドさんに案内されてやってきたのは
「オースティア姉さま、いらっしゃいますでしょうか?少しご相談したいことがありまして」
「あら?ハリスくん?どうしたのかしら?」
フィオーラママ事オースティア様のお部屋。
さすがに「あーそーぼー」と声を掛ける訳にもいかないので普通にご挨拶から。
相変わらずお美しい・・・。ちょっとゆったりとしたこの大人の雰囲気。でも人妻・・・。
「実はですね、今使われている石鹸やシャン・・・洗髪剤よりも素晴らしい効果のある美容法が」
「しっ!!静かに。ハリス、直ぐに部屋の中に入って、そう扉も閉めて。あなた達!・・・そうねクリスだけ残って他は出ていくように!」
「「「はい、奥様」」」
えっ?何?いきなりオースティア様が歴戦の将軍みたいになっちゃってるんだけど?
今の会話の中に何か緊急連絡の符帳(合言葉)的なモノが含まれていたとか?
「はやくそこに腰掛けて、そして迅速かつ丁寧にそしてわかりやすく説明を!!」
「イエスマム!」
てことで蛇の能力を説明。実はこいつ、こう見えて神様なんスよ。
それでですね、少しの時間だけ体が鱗だらけになっちゃうんスけどその後
「・・・もしかしてリリアナちゃんとマリア様の肌と髪が最近ツヤツヤプルプルモチモチサラサラなのは・・・」
「あ、はい、ご病気の治療の際に・・・ってリリアナ様もマリア様もお食事会の折にチラッと見た程度しかないですよね?そこまで気付」
「当たり前でしょう!?いい?貴族家の女はね、社交の場でシワ一本、シミ一つを見抜いて相手をあげつらうことによって如何に自分が美しさに気を使っているか、そして美貌を維持するためにどれだけの我儘を許されるだけの愛情を注がれているかを競い合っているのよ?」
「お、おう・・・」
何そのおっかない世界・・・。
てか食い気味にグイグイくるな。
「それなのに・・・あなた、他所の家の女にあれだけの事をして私にはいままでそれをひた隠しにしていたと?」
「別に隠していたわけでは」
「いいかしら?確かに今は件の侯爵家との間に軋轢はないわ。いえ、無かったわ。でもあなたのその技が仮にこの先もフリューネ家だけの為に使われていたとしたら。そしてそれを知ったのがあなたの口ではなく間諜の口からだとしたら」
真剣な瞳で射すくめられゴクッとつばを飲み込む俺。
「その時は・・・コロシアイよ?」
マジでおっかねぇなおい!えっ?小遣いでも稼ぎながら少しくらいはお姉さんの好感度が上がればいいなーなんて軽い気持ちでいたのに殺し合いにまで発展する問題だったの!?!?
「その目、事の重要さが少しは分かったようね?それでその秘術を受けるにはどうすればいいのかしら?」
「はっ、はぃぃ!普通にどこかに寝転んでいただければ大丈夫でありますっっ!!」
「そう、なら早速お願いできるかしら?」
いやいや、効果は見て(リリアナ嬢の時に無理やり見せられて)知ってるけど俺の話聞いただけでいきなり本人が実践するの!?
「えっと、どなたかで試されたりはしなくて大丈夫なのですか?」
「ええ、話を持ってきたのがあなただもの。ハリスくんは私に不利益が出るような酷いことはしないでしょう?」
さっきとはうってかわって完全に聖母の微笑みでそっと俺の頬をさわさわと撫でるオースティアお姉さま。
これは・・・是非ともご期待にお答えしなければなるまい!
「蛇、失敗は許されない、気合を入れてやれ」
「お主・・・洗脳されとりゃせんか・・・?」
ふっ、そんな事あるはずがなかろうが。
て事で俺は部屋を退出する。流石に人妻、それも公爵夫人のあられもない姿を見るわけにはいかないもんね?お名残惜しや。
いや、冷静に考えると脱皮だった。リリアナ嬢のを見たけどちょっと怖いんだよねアレ・・・。
蛇に確認すると「半時間も有れば十分じゃ」とのことなので部屋を出て食堂に
「あら?ハリス?・・・あなた、今お母様の部屋から出てきたわよね?」
「そ、そそそ、そそ」
ビックリした!?何でこんな所にフィオーラ嬢が・・・まぁお部屋すぐそこだもんね?
そしてあまり『そそそそ』言ってると日本の地方によってはエライことになる。何故かは・・・自分で確かめてもらいたいな。うん。
まぁ隠しても半時間後にはすぐにバレてしまうのでオースティア様に脱皮エステを行っていると説明。
「へぇ・・・私がお願いした時は断ったのにお母様はいいのねぇ?」
「だって御主人様には必要ないじゃないですか・・・」
「いいかしら?貴族家の女は――」
何このデジャヴュ・・・それ、少し前に同じ話聞いたとこだわー・・・。
何故か廊下に正座させられて懇々(こんこん)と説教される俺。
・・・
・・・
・・・
ちょっと長くないですかね?普通に寝ちゃいそうになってたんだけど?
「それでね」
「ハリスくん!ハリスくん!」
「あ、ほら!お呼びです、お姉様がお呼びです!」
「お母様よ!まったくもう・・・」
お邪魔しまーすとオースティア様の部屋に入っていく俺とフィオーラ嬢。
部屋の中に立っていたオースティア様は!・・・うん?変わった・・・かな?
何となくお肌の色が少し明るくなった気もしないでもないけど・・・どうなんだろう?ほら、フィオーラ嬢も無反応
「お、お母様!?すごい・・・」
「ふふっ、そうでしょう?ツヤツヤのサラサラのプニプニのツルツルよ?」
「うう・・・ハリスのお風呂のお湯と石鹸だけでもあれだけの効果があったので油断していましたがこれはもう・・・生まれ変わったと言っても・・・」
「そうね、過言ではないわね」
むっちゃ過言だと思います!まったくわからないであります!
でもこんな時は横から口出ししてはいけない。わけ知り顔でうんうんと頷いてるくらいで丁度いいのだ。
そしてツルツル・・・ツルツルだけ気になります!
ちょっとそのツルツルになった部分のモサモサがどこにいったのかだけでも教えてもらえませんかね?(ゲス顔)
「ハリス」
「はい?」
「次は私よ?」
「いや、別に」
「ハ リ ス」
「蛇!やれ!」
うん、まぁそれでお嬢様のご機嫌が良くなるなら良いんじゃないかな?
新陳代謝が上がるからなのか少し腹が空くだけで害はまったくないらしいし。
・・・
・・・
・・・
なぜか翌日公爵閣下からお褒めのお言葉とお小遣いを頂きました。
わーい、これで蛇にいっぱい高いお酒を
「ハリス」
「ふあっ!?・・・物陰から出てきていきなり腕を掴まないで下さい。少しでも殺気が混じってたりしたら冗談抜きで危険(反撃しちゃう)なんですからね?それでどうかなさいましたかコーネリウス様?」
「頼む、うちの妻にもオースティア母上に施した施術を!!」
コーネリウス、お前もか!お前もツルツルが好きなのか!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます