王都公爵邸編 その15 あー、ごめんその日俺ゲリラ戦だわー
さて、何事もなく北都に帰り着いたフィオーラ嬢と愉快な仲間たち。
・・・
・・・
・・・
・・・なんて事があるわけもなく、普通にそのまま俺の部屋で全員集合中である。
あ、リリアナ嬢のメイドさんはご休憩していただいてます。さすがに全員部屋に入ると身動き取れなくなるから。
例え馬鹿でも相手は王族、それに取り巻きが見つめる中で真っ向から威勢よく啖呵を切った俺。良くて打首、悪くて・・・何だろう?
もちろんあんな馬鹿の為に死んでやる義理も義務も無いので最悪本気で国を相手に大喧嘩、否、ゲリラ戦を仕掛けなければならない。
フフッ、少数や個人での戦争(人はそれをただの殺し合いと呼ぶ)、得意だよ?どうしてかは・・・まぁ察してくれ。
「フィオーラ様、リリアナ様、とりあえず大至急俺に対する絶縁状と糾弾状を回して頂けますかね?」
「あら、どうして私の王子様にそのようなことをしなければならないのかしら?」
「そうですよ?私を助けるためにあんなに頑張ってくれたハリスちゃんにそんな事出来るはずないでしょう?」
・・・普段通りののんびりとした雰囲気でお茶を飲む二人の御令嬢。そんな呑気な事言ってる場合じゃないんだけどなぁ・・・。
変にここで俺に構ってると公爵家と侯爵家まで巻き込むことになるもん。
さすがに責任が大きすぎて俺の貫目ではどうにも出来ない。
「一人だけ連れて逃げるとかならともかく・・・」
「なら私だな!」
「メル、今みんなで難しいお話してるから下がっていなさい」
しゅんとした顔で後ろに下がるメルちゃん可愛い。
そして特にこれと言った考えがまとまらずに時間が過ぎていく中・・・
「お嬢様、リリアナ様、ハリスさん、旦那様とフリューネ侯爵様がお呼びです」
おおう・・・。最悪このまま捕まって王城まで連行だな。
・・・いや、むしろアリかもしれないな。
王城まで行っちゃってから逃げ出せばそれはもう『公爵家の責任』では無くなるもん。
逃げれるのかって?もちろん、回りの被害気にせずに全力で逃げればそれほど難しくない能力値は貰ってるもん。
似たような経験もあるしな!・・・本当にこれまでろくな人生送ってないな俺。
お顔を少々強張らせたメイドさんに案内されたのは入ったことが有る食堂ではなく応接室。うん、調度品がお高そう。
室内でお待ちになっていたのは『キーファー公爵家のご当主であるガイアス様』と『次期ご当主様のコーネリウス様』そして『ブリューネ侯爵家のご当主であるマルケス様』の三名。女の子率が高かった部屋からおっさんオンリーの部屋に移動とかテンションだだ下がりである。
「ハリスです、お呼びとうかがい参上いたしました」
「ほう・・・あれだけの事をしておきながら特にいつもと変わらぬその態度、なかなか大したものだな?」
「いえいえ、表面上だけで心のなかでは泣き崩れて震えております」
「くくっ・・・お前がそのようなたまか・・・」
部屋の中に響く野蛮人、インテリヤクザ、性悪親父の低い笑い声。
どう贔屓目に見てもヤクザの総会、悪巧みの真っ最中にしか見えない。
「ハリス、まずは礼を言っておこう、娘の、フィオーラの名誉を守ってくれたこと感謝する。何度断ってもあの馬鹿は納得してないらしくてな」
「ああ、それに関しては私もだな、卿が王子に言った言葉、リリアナの父としてとても嬉しく思う。リリアナの病が進むと向こうから勝手に婚約破棄しておきながら癒えたなら嫁にもらってやるなどとどの面下げて口に出したのか」
「いやいや、これはフィオーラの側使え、ブリューネ候が気にするようなことは何もないぞ?」
「何をおっしゃいます、もともとは娘の気持ちも考えず二人の気持ちを引き裂いてしまったこの義父(ちち)の不徳の致すところ」
呑気に何いってんだこいつら・・・。
「それでお咎めはどういった話になっておりますでしょう?そもそも今回の件はお嬢様方には何の関係もなく過去に殿下に怪我をさせられた事に対する私的な怨恨の話でありますれば」
「それは違いますよハリス。あなたは確かに『俺の心よりおしたい申し上げる我が永遠(とわ)の愛しい人、フィオーラに対してなんたる狼藉か!』と言ったではないですか?」
「そうですよ?ハリスちゃんは『ぼくの大切なリリおねぇちゃまを傷つけると許さないからな!』って言ってくれたよね?」
・・・俺、そんな事言ったっけ?片方は『おしたい申し上げる』と『愛しい人』が被っちゃってる気がするし、もう片方は『ぼくの大切なリリおねぇちゃま』とか完全に小学生の喧嘩だよな?
「それで、本当の所はどうだったのだメルティス?」
「では僭越ながら・・・んんんっ!ゴホン、アーアー・・・『てめぇ、うちのお姫様に何しようとしやがったのかって聞いてんだよ!!返答いかんによっては国ごとチリ一つ残さず焼き尽くすぞあぁん!?!?』・・・です。ちなみにそこに登場する『お姫様』は私のことだと思われます!」
モノマネ上手ぇなおい!?
まぁ強く否定はしないけどあの時の『お姫様』にメルちゃんは含まれていなかったよ?
だってあれくらいの相手ならメルちゃん一人でも無傷でらくらくと殲滅出来るじゃん?
「くっ、ふふふふはははははは!中々の啖呵だな。その時の王子の顔を見てみたかったわ」
「くくくくくく・・・確かに、あの馬鹿者にはいい薬であろう」
相変わらず低い声で笑い合うおっさん二人としょうがないにゃぁって顔のインテリヤクザ。どこ需要なんだそれ。いいよ?って言われても困るわ。
「まぁ今回の件に関してそれほど心配する必要はない。既に王家との話も付いているのでな」
「そうだな、発端はうちの娘との婚約破棄のようなものだからな。むしろこちらが謝罪してもらいたいくらいだ」
「一応向こうの言い分として『決闘による正当性の主張』をしてきたので受けておいたよ」
そうか、特に問題なく・・・ん?
いやいやいや、決闘?
「えっと、コーネリウス様、決闘とは?」
「ん?決闘。知らないかい?互いにルールを取り決めてから行う殺し合い。いや、殺しちゃうのは結果論であって本題じゃないか」
そのくらいは知ってるよ!てか全然問題なくないじゃん。さらに結果論が殺し合いって意味がわからねぇ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます