王都公爵邸編 その16 それはきっと愛とか恋とか、そう言うものではなく
「・・・決闘のお相手はもちろんあのバ・・・第三王子殿下ではありませんよね?」
「そうだね、でも王宮内で今更彼に力を貸そうなんて物好きはいないだろうから高ランクの探索者でも雇うんじゃないかな?」
それ、下手な騎士より危険じゃね?俺の知ってる冒険者、そこそこのバケモノが何人か居たんだけど?まぁあの頃の俺なら負ける事は無かったけどさ。
決闘については三日後に詳しい話が来るということなので今ジタバタしてもどうしようもない。
「怪我はせんでくれよ?君に何かあったらうちの長女に叱られるからな?しかし本当に全く動揺もしないんだね?」
「えっ?あ、はい、王都内の全衛兵と鬼ごっこしたあと国内の全兵力と殺し合いすることを思えば何のことはないので」
「君は令嬢二人の為に本気で一人で国と戦争をする気だったのか?」
「もちろん最悪の結末としてですがそれもやむなしかと考えておりました。繰り返しますが、今回の喧嘩はお姫さまお二人の為と言うのではなくあくまでも私の私怨ですよ?」
むっちゃ呆れた顔で首を振るコーネリウス様。
まぁあれだ、決闘なら相手は一人、どうとでもなるさ。
公爵家にも侯爵家にもこれ以上迷惑をかけないって条件さえクリア出来てるならば難易度的にはナイトメアからイージーまで下がったみたいなもんだしな。
さて、王城におわします高貴な方々やお偉いさんとの話し合いになど参加したくない俺、申し訳ないが決闘の条件の話し合いは全て公爵閣下と御嫡嗣にお任せする事に。
決闘方法が剣一本での斬り合いであろうが魔法の撃ち合いであろうが問題は無い。いざとなれば必要なスキルを取るくらいの経験値的余裕はあるし。
問題は勝利した時の条件。
あまりに度が過ぎた物は第三王子以外の王族にまで睨まれるしあまりに遠慮しすぎると今度は他の貴族に馬鹿にされると言う思ったよりも面倒くさい代物。
まぁ俺の求めるものはもう決まっているので何としても通してもらうが。
てことで公爵家内で細かい詰の話し合い。俺の前にはガイウス様(ご当主)ではなくコーネリウス様が座る。正直少しホッとしている俺がいる。
だって・・・ガイウス様・・・顔が厳ついんだもん、身体もごついしさ。
「ふむ、1つ目が『第三王子による公爵令嬢フィオーラと侯爵令嬢リリアナに対する公式な場での丁寧な謝罪と今後一切関わりを持たないことの証言』。そして2つ目が『王家は今後何があろうともハリスとは関わりを持たないことの証言』」
「はい、その2つでお願いします」
「王家にこの条件を飲ませるということは君は今後都貴族(王家直属の貴族)になる事は無くなってしまうと言うことだよ?」
「ええ、元々貴族になるつもりはまったくありませんでしたし、あの様な馬鹿を放置する様な王家に仕えたいとも思えませんし」
1つ目は王族に頭を下げろという結構な無茶振りであるが相手は最近色々とやらかしてるらしい第三王子、なおかつ決闘を申し込んでいる側である。断れば『何?お前決闘申し込んで負けるのが恐いの?』とまさしく物笑いの種を蒔くことになる。2つ目はそもそも王家にとって俺なんて『お前、誰だよ?』って話なので何の問題もない。
「なのに我が家に仕えているのはやはりフィオーラに惚れているからかい?」
「いえ、惚れているのではなく・・・もちろん、惹かれていないと言えば嘘になるとは思うのですが。それはきっと愛とか恋とか、そう言うものではなく・・・お姫さまの優しさに惹かれていると言いますか・・・そもそも私はただの孤児ですので。何かお世話になったご恩返しが出来ればと日々思って仕えさせて頂いているのですがこれがなかなか」
せめて迷惑をかけないようにしようと注意しててもこの騒ぎだしさ。
こちらからの条件は伝えたので次にやっておかなければいけないことは『敵情視察』。情報を制する者は~ってヤツだ。何を制するのかはよく覚えていない。真っ先に出てくるのは『受験』なんだけど・・・たぶん違うよね。
もちろん王城に忍び込むなんて真似はしないよ?見つかった時のデメリットが大きすぎる上にそもそもの相手が王子でも騎士でもなく上級の探索者になるんじゃないかって話だし。
なので当然向かうのは探索者組合(ギルド)。
・・・で、結果としては特に警戒しなければいけないような人間は居なかった。むしろレベルが低すぎて逆の意味で心配になった。今回の件には何の関係もないけど昔懐かしい知り合いに合えたのでまぁ良しとする。
とりあえず当日までにすることなくなっちゃったんだけど?
姫騎士様と剣術の稽古でもしておくか。
てことで普段の日常生活に戻る。
いや、決闘の日付は決まったんだ。5日後の正午。普通なら最低ひと月くらいは段取りにかかるらしいからかなり早い。
たぶんこちらにちゃんとした準備をさせたくないのだろう。
決闘方法は素手で交互に倒れるまで殴り合い。何その酔っぱらいのロ○ア人みたいな決闘方法。あれはビンタらしいけど。
まぁ子供相手だと思いこんでるだろうから素手での殴り合いなら『屈強な探索者(笑い、むしろ草。それも5つくらい並べて)』には勝てないと思いこんでるんだろうなぁ。
今なら屏風の中から虎が出てきても素手で殴り殺せるのに。釜に入ったタヌキに続いて屏風に入ったトラも巻き込まれ事故である。
ちなみに時間もあるので侯爵家に一度食事を作りに行ったらマリア様に物凄く喜ばれた。
うむ、是非とも料理だけではなく俺も食べていただきたいものである。侯爵、離婚しねぇかなぁ。
さて、特に誰かに襲われただとか毒をもられたなどと言う事もなく決闘当日。
もともと地元であって地元ではない王都での仮り暮らしのヒキコモリー、公爵家のお屋敷からほぼ出ることもないし何らかの妨害をされる心配もなかったしさ。
ちなみに蛇は普通に俺の部屋で食っちゃ寝している。メイドさんにはフィオーラ嬢が俺の妹と説明していた。いや、外見的に似てる部分皆無じゃん?
俺は黒髪で蛇は白髪(はくはつ)。俺は黒目で蛇は赤目。どう考えても無理筋すぎる。
どうやら本気で居座るようなので名前を付けた。命名『ミヅキ』。
蛇で神様っぽいって事で最初はミズチ(蛟)にしようかと思ったんだけど一応女の子だしね?ちょこっと可愛い感じにしてみた。本人も気に入ってるのでヨシ!
いや、今は蛇のことはどうでもいいんだよ!決闘だよ決闘。
時は本日正午、場所は王城にある近衛兵の練兵場。
関係者――第三王子やその取り巻き、キーファー公爵家やブリューネ侯爵家の家人、国王陛下は居ないけれど第一王子と第二王子も観戦するらしい。
まぁ他にも大量に関係の無い貴族が集まってるんだけどね?暇人どもめ。チケット代はぜひ折半で!あ、観戦チケット売り出してないんだ。
結構な興行収入が得られそうなのに!賭けも行われてないのでよくある『自分の勝利に全額ドン!』も出来やしねぇ。
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