王都公爵邸編 その14 すごくかっこよかったよ!大好き!
「はっ!誠に殿下に相応しいお相手かと!」「さてもさても!」などとお追随をする取り巻きの男たち。
いや、久々に貴族らしい貴族を見た。もちろん頭に『馬鹿』が付く方の貴族だけどな!
「これはリリアナ様、いきなりお見えとはお体の具合がまたお優れにならないのでしょうか?」
「むぅ、リリおねえちゃまでしょうハリスちゃん?いえ、体調はとてもいいですよ?まるで生まれ変わったみたいに。ふふっ、これもハリスちゃんのおかげね。あ、今日は昨日のお礼をちゃんと伝えていなかったからお礼を言いに来たのとお父様からハリスちゃんに晩餐のご招待のお手紙を持ってきたの」
「リリアナさん、お体の調子が良さそうで本当によかったわ。でももうしばらくは安静になさったほうがよろしいのではないかしら?そしてハリスはうちの、いえ、私の身の回りのお世話で忙しいのよ。なのでご招待などはまず私を通していただかないと困りますわよ?」
「もちろん!ですので私がお願いに来ましたもの。体の方は本当に大丈夫ですよ?ほら、お肌もこんなにツルツルプニプニで髪もサラサラですもの!あ、ハリスちゃんも触ってみて?ほらほら」
「私も毎日ハリスの入れてくれたお風呂でハリスの用意してくれた石鹸と洗髪剤を使ってますもの。お返しに触ってみてくださいな。ほら、シミひとつ無い綺麗なお肌でしょう?」
『ウフフフ』と微笑みあうお二人の御令嬢。もちろん背景には殴り合うカンガルーの幻影が見える。
そして侯爵家のお食事会とか微塵もお呼ばれしたくねぇなぁ・・・。
「お父様がハリスちゃんのお料理のお話をお母様にしたらとても食べたいとおっしゃっていて。もちろん私もハリスちゃんのお料理食べたいなぁ?」
「大(おお)おねぇちゃまが!?もちろん今からすぐにでもお伺いさせていただきます!!」
「ハリスっ!?」
フィオーラ嬢が『こいつ普通に寝返りやがった!?』って目で見てくるけど・・・だってリリアナ嬢のお母様のためならたとえ火の中水の中。
あ、お名前は『マリア』様と言うらしい。むっちゃこっち見てそう。
「・・・貴様ら。俺を無視して話をするとかいい度胸だな」
「あら、申し訳ございません殿下。ところで本日はどの様なご用向でございましたでしょう?」
完全に煽りに行くスタイルのお嬢、おそらくは『いい歳』発言にガチギレしてるんだろうなぁ・・・。
「大体その男はなんだ!嫁入り前の貴族の娘がそのような者をそばに置くなど何を考えているのだ!!」
「ああ、ご紹介が遅れて申し訳ありません。こちらはハリス、私の婚約者ですわ」
今度はリリアナ嬢が『こいつ別の女にも唾つけてやがるのか!?』って目で見てきた。そんな事実は微塵も無いんだけどね?
「・・・婚約者だと?その様な話聞いたこともないが?」
「ええ、今年に入り決まったことですのでまだ王家にもご連絡は通達しておりませんわね」
「ふざけるな!そもそもこの俺の話を差し置いてどこの馬の骨ともわからん男と婚約など公爵家の娘としての自覚を持っているのか!!」
「あら、リリアナが病に倒れた途端に王家と侯爵家の繋がりも考えずにご婚約を破棄された殿下のお言葉とはとても思えませんわね」
両者言ってることは正しいんだけどねぇ?でも片方は嘘で片方は自分のことは棚に上げてるのが玉に瑕。
「ハリスちゃん、お二人は難しいお話されてるみたいだし一緒にお家に帰りましょう?」
「リリアナ?あなたは何で他人事のフリして出ていこうとしているのです?そもそもハリスの帰る家はここです!」
「貴様ら・・・また俺を無視するか・・・そこまで俺を虚仮にするか!」
右手をこちらに向け口の中で呪文を唱え始める男・・・。
うん、話の流れで既にお気付きだと思うがこの騒がしい馬鹿貴族、この国の『第三王子殿下』早い話が俺の火傷の間接的な原因なんだ。
もちろん直接的な原因はハリス君本人なので特に恨みはない。いや、無かった。
しかし
あれだけ暴言をお嬢に吐きまくり
さらにキレて魔法をこちらに撃とうとしている
そうだね、完全に俺の『敵』だよね
でも一度目は警告。
光魔法の防御障壁で後ろのお嬢様二人(とメイドさん達)を囲みランク5の威圧を集中させて馬鹿王子に向ける。
魔法が飛んできたら?たかだかこんなザコが撃ってくる火球の魔法程度で俺の鍛え上げた筋肉・・・ではなくMPフィールド(魔法耐性)がびくともするはずがないだろう?
まぁ威圧の効果で詠唱が中断うしろに転けて尻もちをついたままの体勢で後ずさりしていってるけどな。
「失礼、あなた様は今何をされようとなさってましたか?」
「な、なん、だ、お前は!ぶ、無礼だぞ、俺は王子だぞ!!」
「おや?言葉が通じない?仕方ありませんね、少々噛み砕いた言葉でご質問させていただきますね?」
ズリズリと後ずさる王子、起こっていることがイマイチ理解できずぽかんと立ち尽くす取り巻き。護衛として何の意味もなしてないぞそこの無能連中。
一歩ずつ、ゆっくりと進み、王子に追いついた俺はその胸ぐらを掴み上げると同じ目線の高さまで片手で持ち上げる。
「てめぇ、うちのお姫様に何しようとしやがったのかって聞いてんだよ!!返答いかんによっては国ごとチリ一つ残さず焼き尽くすぞあぁん!?!?」
あ、威圧スキルそのままだったわ。うわ、こいつきたねっ!?
泡をふいて白目をむいて尿をたれるという悪い見本の様な気絶の仕方を見せてくれた第三王子を取り巻きに向かって力いっぱい投げ捨てる。
受け取った連中はボーリングのピンの様に倒れながらも王子を抱えると蜘蛛の子を散らすように慌てて走り去って行った。
そして取り残された俺と女子連合。
もうね、言葉を噛み砕きすぎて完全にチンピラだったよね俺。でも反省はしていない。
そんな俺にたたっと駆け寄ってきたかと思うと
「ハリス!すごくかっこよかったよ!大好き!」
ぴょんっと擬音が聞こえそうなジャンプをして抱きつく――メルちゃん。
えっ?メルちゃんはいつからいたのかって?そりゃ最初から(フィオーラ嬢が部屋を訪れた時から)居るにきまってるだろ?だってお嬢の護衛だもん。
てかメルちゃんそんなキャラだったっけ?もっとこう悪の組織の女幹部みたいな感じだったような・・・?
もちろん直ぐにフィオーラ嬢が「メル!何度も言うようにあなたに向けられた感情では無いのです!速やかに離れなさい!」と引き剥がしてくれたが。
うん、鎧姿で抱きつかれても痛いだけで嬉しくもなんとも無いからね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます