王都公爵邸編 その9 蛇神の影・・・
「ま、まぁ昔のことは置いておくとしてですね」
「どうして置いておくの?やっぱり嫌なんでしょう?そうよね、こんな気持ちの悪い鱗の生えた蛇女なんて嫌よね?きっと帰って二人であのラミアの出来損ない死ねばいいのにとか笑いながら話すのよね?今も本当は早くこんな部屋出て行きたいと思ってるんだもんね?」
「ハリス、置いておくのではなく昔の事など捨ててしまうのよ?いいわね?」
「話が進まねぇ・・・」
てかリリアナ嬢ってこんな面倒くさい性格してたっけ?そしてフィオーラ嬢は治療が終わるまでマジ黙ってて?
て事で話し合いだと一向に事態が好転しなさそうなので捲し立てるように状況を説明する。
「つまり・・・今の状況は病ではなく呪いだと言うのですね?」
「そうです、ですので聖女様の癒しの術が効かない、効いても時間が経つと癒やしの効果が無効化、と言うか症状が再発してしまうってわけです」
「そう・・・ですか・・・病ではなく呪い・・・では私はもう全身が鱗に包まれるまで、いえ、手足ももげ落ちて蛇に変わってしまうまでこのままと言うことなのですね・・・」
「ごめんなさいリリアナ・・・」
「フィオーラ様・・・いえ、この様な呪いをかけられるような恨みをどこかでかってしまった私の責任ですので・・・」
うん、超美少女二人がウルウルした目で抱き合う姿は実にいい。ずっと見守っていたいんだけど。・・・公爵家に早く帰って姫騎士さまのお相手しないとプンスコ拗ねちゃうんだよね。
「てことで呪いの原因を取り除こうかと思うんですけども。おそらくお屋敷のどこかに何らかの呪物があると思うので捜索する許可を。まぁお屋敷に来た時から圧迫感を感じるくらいの力を発散してる様な『モノ』ですからもう場所の見当はついてますけど」
「えっ?」
「えっ?」
「ですからお屋敷内を歩き回る許可を・・・」
「ええと、ハリス、あなた呪いをどうこうすることなんて出来るの?」
「まぁ、たぶん?ここまで強い力を感じるとなると呪いじゃなく祟りかも知れませんが」
「祟りってそれもう何らかの神様が関わってるじゃない・・・」
そう、おそらくリリアナ嬢に、と言うよりこの家にかけられてるのは『蛇神様の祟り』。力が強すぎて普通に魔眼でも大元が見えるもん。
何故蛇神様か?いや、だって体に鱗生えてるしさ。トカゲとかドラゴンの可能性もまぁ無きにしもあらずだけど祟と言えば蛇さんがメジャーだろ?
「まぁこちらには光の精霊様だけじゃなく大地の精霊様もいらっしゃいますしね?どうとでもなりますよ」
「えっ?大地の精霊様って・・・ハリス、見えて・・・まぁ見えるわよね」
「ちょっと待ってください!ハリスちゃん、精霊様が見えるの!?」
「・・・見えません」
「・・・見えるわけがないじゃない」
「それって絶対に見えてるの隠してる人の態度じゃないですか!」
ちなみに大地の精霊様、俺がこの屋敷を訪れた時に駆け寄って来たかと思ったらそのまま光の精霊様と戯れている。姿形は服を着たウサギのヌイグルミ。
もう完全にアレにしか見えない。
そう、映画にもなってる『ベ○ジャ○ンラ○ット』!
・・・『そこは「ピー○ー」じゃないのかよ!』って?だって色がこげ茶系だし。
てか『精霊の友』を同じ様に持っているフィオーラ嬢も精霊様の気配は感じてもいいはずなのに精霊ウサギの気配はまったく感じ取れないらしい。
お家の血統的に『光特化』なのだろうか?まぁ分からないことは気にしてもしょうがない。
あんまり細かいこと気にしてたらストレスで自分が『頭光(あたまひかり)の精霊』になっちゃうからな!
てなわけで場所は変わりまして侯爵家の応接間、もちろんでんと構えて待ち受けるのは侯爵閣下だ。
フィオーラ嬢が侯爵が座る前のソファに腰掛けて俺はその後ろに立って控える。
まぁソファって言っても木製のしっかりした幅広の背もたれの付いた椅子に敷物をかぶせたモノだが。
お金持ちになったら是非とも真綿をイッパイ仕入れてふっかふかのソファを・・・いや、それよりも先にふっかふかのお布団だな。
羽毛布団?アレはほら、重さが無いから落ち着かないんだ。日本人ならくっそ重たい真綿の入った布団一択!!
「フィオーラ嬢、いや、今日は光の聖女様とお呼びするべきだな。リリアナの治療の目処が立ったとの話だが。・・・後ろにいるのは公爵家の新しい料理人だと記憶しているが?」
「はい、マルケスおじ様。許可をいただければ直ぐにでも治療・・・いえ、祟の元を断ち切らせていただきます。控えておりますのは料理人ではなく私の側使えをしておりますハリスと申します。この度のリリアナさんの症状、私ではまったくお手上げでしたので連れてまいりました」
「ほう、聖女様がお手上げ・・・と言うのは理解出来んでもないがそれをその少年がどうにか出来ると?いや、待て、ハリス・・・ハリスと言うと・・・ほう、態々出入りを禁じられている少年を連れてくるとはよほど優秀なのか、それとも」
「もちろん優秀です。少なくとも私ではこの7日間何もわからなかった症状をひと目で看破する程度には」
うん、まぁね、俺なんて箱入りのお嬢様に付いた羽虫みたいなもんだからね?ハリスじゃなくハムシ。そんなに変わんねぇな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます