王都公爵邸編 その10 今なら何と!このウサギさんに!
「それで許可が欲しいとは?まさか娘にいかがわしい事でもする気ではあるまいな?」
「おじ様、リリアナとの友誼がありますので治療を引き受けておりますがこれ以上私の使用人を侮辱なさるのならここまでのお話とさせていただいてもよろしいのですよ?」
「・・・ふっ、ハリス、卿は相変わらず歳上の女性に取り入るのが上手いのだな」
「ハリス!行きましょう!」
いや、何なのこれ、ものっすごい険悪なんだけど?てか、おそらくこのオッサンわざと煽ってるよね?
俺の事はいい、自業自得だから。
少し関わっただけの准男爵家の子供の事を覚えているくらいに業腹だったみたいだし、そちら様としては顔も見たくないだろう。
でも、フィオーラ嬢を煽るのはどうなんだ?確かに俺は今彼女の使用人だけどさ。
正直椅子を蹴っ飛ばしてこのまま帰りたいと思うくらいには・・・悔しい。まぁ俺は座ってないけどな!
でも・・・
「お嬢様、帰ったら何かおやつを作って差し上げますので」
「あなたはどうしていきなり私を癇癪を起こした子供扱いしてるのですか!?」
「申し訳ありません、しかしあのままリリアナ様を放っておくと言うのは・・・」
「・・・むぅ・・・わかりました。でも私はもうこの件には感知いたしませんのでそちらの侯爵閣下とはあなたがお話するといいわ!」
ホントにごめんなさい。でもこの件が終わったら俺がこのお屋敷に近づくことは二度とないと思いますので・・・。
「では、申し訳ありませんが閣下、下賤の身ではございますが直言させていただきます。今回の御令嬢の体調悪化、原因は蛇神の祟だと思われます。またその原因につきましてはおそらくはお屋敷の敷地内にあると見ております。場所はここからだと・・・北西方向、そちらに御令嬢が体調不良を訴えられる前に何か置かれた物などはございませんでしょうか?」
「ふむ、庭に・・・思い当たるものが確かにあるな。しかしそれは・・・祟りなどと・・・」
「ご信用頂けない、またはご自分で処理されるのならばこれにて御暇させていただきますがいかが致しましょう?」
伝えたいことは伝えた。これで信じないなら信じないで仕方がない。あの症状のままでリリアナ嬢を放って置くわけにはいかないし最悪掻っ攫って逃げてやる。
だって祟られてるのはこの屋敷なんだから離れてしまえば治療はどうとでもなるし。
侯爵令嬢拉致、完全に国に喧嘩売ってるけどあえて言おう『見つからなければどうということはない』。
「・・・いや、こちらでは一切何も原因がわからなかったことだ。素直に卿に任せるのが最善だろう」
・・・おや?もっとこう・・・ゴネると言うか言い掛かりのようなモノをつけてくると思ったんだけど。
なんなの?俺のことを試したとかそう言う感じなの?ならお嬢を巻き込むような物言いはいかがなものなのかと。
もしかしたらフィオーラ嬢も含めて試された?それはそれでむかっ腹が立つな・・・少し嫌がらせしとくか?
「畏まりました、それでは今すぐにでも取り掛からせていただきます。あ、それでもし宜しければなのですが、今回の報酬としてこちらのお庭で見かけました『ウサギ』を一匹頂けないかと」
「うん?もちろんちゃんとした報酬は支払わせてもらうがウサギ?庭に・・・ウサギ?・・・ふっ・・・くくくっ・・・はははははっ!ウサギか。うむ、卿にやってもいいがその際には家の娘も一緒でなければならんが構わんか?」
「い、いえいえ、そんな・・・御令嬢を頂くなどそのような望外なことは申せません」
「ほう、しかし残念だが『ウサギ』が居なくなると娘が寂しがるのでな。今回は勘弁してもらおう」
チッ、まぁ公爵家の家伝に『光の精霊様のお姿は小さなクマの様』だと伝わってるなら侯爵家にも『大地の精霊様はウサギの様』と伝わってるのも当然か。
そしてもし俺が『はい、お嬢様と一緒にいただきます!』って答えたらどうするつもりだったんだこの親父?
いや、フィオーラ嬢がこちらを半目で睨んでるからそんな返事は絶対にしないけどさ。・・・だから前を向いて下さい。
「しかし、変われば変わる物だな。私が知っている卿はただの我儘な子供でしかなかったのだが」
「すべて主の薫陶を受けたおかげでございます」
「・・・それにウサギか・・・実家は確か準男爵家であったか?」
「はい、既に絶縁されて『元実家』というのも烏滸がましい状況ですが」
「絶縁?どういう事だ?そういえば最近はうわさ話もまったく聞き及ばなかったからあれからずっと謹慎でもしていたのかと思っていたが・・・そちらの公爵家で騒ぎでも起こしたのか?」
あー、これは何と言うか・・・物凄く勘違いされてる?
もしそうなら公爵令嬢にくっついてる俺のこと見たらそりゃあんな態度にもなるわな・・・。
何の事だって?簡単に言うと
娘にちょこちょことちょっかいを出す最下級貴族の子供鬱陶しいなぁ・・・でも一応寄り子(の寄り子の寄り子)らしいしあんまりキツく言うのもなぁ。
ん?婚約者の王子がキレた?子供が大火傷?何してんだよ王子・・・家(うち)まったく関係ないけど世間体悪いし仕方ない、治療代出してやるか。
・・・何なの?治療代出してやったのに治りましたの報告と御礼も無いの?これだから最下級貴族は・・・。まぁ子供は来なくなったし良しとするか。
えっ!?体に鱗が生えてる!?!?娘がエライことに・・・聖女様助けて!
ん?見たこと無い子供だな。ハリス?あの時の子供だよな?えっ、何なの?うちの娘が大変な事になってるのにコイツ今度は公爵家の娘に手ぇ出してんのか?節操の無いガキだな!ぶち殺すぞ!?
むしろあの程度の嫌味で済ませてくれてるのは物凄い大人の対応である。逆の立場なら普通に刃傷沙汰まである。俺の心・・・狭すぎ?
美少女を煽ってくるオッサンとか思って正直すまんかった・・・。
「何と言うかこう、大変申し訳ありませんでした・・・」
「ど、どうしたのハリス、いきなりこんな人に謝りだして」
「御主人様ステイ!いえ、おそらくですが・・・」
お嬢様!いけませんお嬢様!こんな人とか面と向かっての発言は止めて下さい!俺の肩身がどんどんと狭くなっていってます!
俺の考えと俺の今までの状況を失礼にならないように少し言葉を替えながらフィオーラ嬢と侯爵閣下に伝える・・・。
侯爵様絶句である。
「・・・ああ。それは・・・おじ様がお怒りになるのもしかたありませんね」
「・・・いや、むしろ何も知らずに・・・フィオーラ嬢には申し訳ないことをしたな」
「お二人で反省とか止めて下さい完全に針の筵です・・・」
な、仲直りできて良かったね?(震え声)
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