北都・公爵館 閑話 お嬢様と騎士様とメイドさんは見た!
こちらは稽古(?)終了後のお嬢様主従である。
息を整え寝転んだ体勢からどうにか座り直したメルティスとその斜め前に腰を下ろすフィオーラ。
公爵令嬢と護衛騎士としては少々はしたない姿勢なのだが特にそれを咎める人間も近くにはいない。
「メル、あなたそこそこ全力で剣を振るってましたよね?」
「そこそこどころか完全に殺す気で斬り掛かってました。むしろ王都の騎士なら二人や三人なら殺せていたはずです」
「それはそれで大問題になるので絶対に止めてくださいね?」
「善処いたします」
「まぁいいですけど・・・あれだけ走り回っていたのに息切れもしない、その後同じくらいの時間あなたと剣の稽古をしても汗ひとつ流さない、彼は今まで一体どんな鍛錬をしていたのでしょうか?」
「そもそも鍛えただけでどうこうなる力量ではないかと思われます。特に身の躱し方などは達人と呼ばれる域だったと思いますが」
「彼の実家であるポウム家の長男は確かに剣術に少々優れてはいるらしいですが・・・達人などと言われるには程遠いでしょう。だいたいハリスは剣術の才能スキルなど持っていないはず。それに昔からあれだけの能力があるなら実家が、いえ、寄り親が放っておくわけもないでしょうし」
「そうですね。と言うか彼は何故孤児院などに?」
「ああ、あなたには言っていませんでしたか?詳しくは後で王都で調べた報告書を見せてあげますけど・・・彼、リリアナに横恋慕したらしいですよ?それで『あの』第三王子に魔法で大火傷をさせられたとか」
「は?『あの』第三王子にですか?いえ、それよりもリリアナ様に恋・・・ですか」
「ええ、私達が見てる今のあの子からは想像できないでしょう?でも三年前、リリアナからも聞いたことがありましたから本当のことだと思いますよ?」
「そうですか。しかし恋とか愛とか興味があるようには見えませんが。あの年齢の割に飄々としすぎていると言いますか、達観しすぎていると言いますか」
「まぁあれだけの疵痕になる大火傷を負った上に実家に捨てられたのです、孤児院でも色々あったみたいですし」
「考え方や性格が変わる・・・いえ、老成しても仕方がない、と?」
「私達が知りようのない何かがあったのかもしれませんしね」
「現状では本人に聞こうにもそれほどの信頼関係はまだ構築出来ていないですか」
「そうですね、それに、あなたやわたしの胸のおお・・・ごほん、体型も分かるような事を言っていましたし。精霊様が視える事以外にも色々と隠し事がありそうですね」
「・・・やはりあの様なエロガキは出来るだけ早めに処分しておくのがよろしいかと」
「処分とか剣呑な発言は止めてくださいね?わ、私の未来の旦那様最有力候補なんですからね?・・・やはり出来るだけ早めにお父様にご相談しておくべきね」
―・―・―・―・―
水洗便器第一号の作成に失敗し、トボトボとハリス君が部屋に戻った後の作業現場。
・・・色々と改良点などを考えながら部屋に戻った彼は『洋式便器の埴輪』の回収を失念して放置していた。
「あれは何でしょうか?」
「さぁ・・・さっきまで例の彼がこのへんで何かしてたみたいだけど」
「ちょっと落ち込んでたよね可愛い。おっぱい揉む?って聞いてあげようかな可愛い」
「落ち着けブショラタコン。でも本当に何でしょうかアレは」
「エリーナ、少し前にあの子と食堂で話してたわよね?なにか聞いてないかしら羨まシネ?」
「いきなりの暴言!?色々・・・は聞いてないけどお話はしたよ!彼ったら私のこといきなりエーさんなんて呼ぶのよ?もう・・・」
「誰もそんな事聞いてねぇし。ぶち転がすぞ?」
「恐いわね!?て言うか言葉遣い!!」
「それで、ハリスたんはなんて言ってたの?」
「ん~まとめると自分用のトイレとお風呂が欲しいので敷地の提供お願いします?」
「何そのブルジョワ発言・・・やはり貴族様か・・・早めにつばつけとかないと・・・」
「あ、自分で作るから場所だけで大丈夫って言ってた!」
「おっと話が変わってきた」
「貴族様じゃなくてまさかの大工さんだったと?」
「でもどうしていきなり自分用のトイレなんて欲しいのかしら?」
「あ~、なんか恥ずかしいみたいなこと言ってたよ?」
「あっ、それ、もしかしてあたしがあの子がトイレ入るの確認してから隣に入ってお小水したからじゃないかな?いやん、小さくてもオ・ト・コ・ノ・コ」
「黙れド変態!間違いなくあんたのせいだわ」
「じゃああなたは同じチャンスがあっても行動に出ないと?どうしてそこでベストを尽くそうとしないのよ!」
「あんたと私ではチャンスの定義が違いすぎるわ・・・」
「確かに恥ずかしがる顔は見てみたいけどその後の事を考えれば諸刃の剣過ぎるでしょ・・・」
「むしろ扉の外で全裸待機するべき」
「トイレから出たら裸の女が立ってるとか普通に悲鳴あげるわよ!」
「新手の妖怪かな?」
「話は戻るけど・・・そこのアレ、土って言うか粘土で出来てるよね?」
「このへんに粘土なんてあったっけ?いえ、そもそもアレって焼物よね?そこそこ重そうだし」
「つまりハリスちゃんは力持ち、または魔法使い」
「・・・魔法であんな複雑そうな形のもの作れるの?いや、粘土で形作ってから焼いたとか?火魔法?錬金術?」
「知らないわよ、魔法使いの知り合いなんていないし」
「あのルックス、公爵家との繋がり、そして特殊な魔法使い」
「「「超優良物件・・・」」」
「問題はお嬢様との関係性」
「「「それ大問題・・・」」」
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