北都・公爵館 その5 ┌|∵|┘ (埴輪)

 てか少々話がそれたけどさ、あれだ、何が言いたいかと言うと


「男性用のトイレが欲しいです!!あわよくば風呂も!」

「おそらく予算的に無理じゃないかなーと思いますよ?」

「でもですねAさん!皆さんも女性の中に男が一人混ざってると、特に生理現象的な方面ではとてもご不便するじゃないですか?便だけに!」

「いや、何を力説してるのかちょっとよくわかりませんけれども・・・。そこまで気にされるほど特に不便はしていないと思いますよ?そ、それに『エイさん』とかいきなり愛称呼びなんて照れちゃいますよう・・・」


 ここはメイド寮の食堂。偶然見かけたAさん(仮名)を捕獲して何とかならないか相談中。

 何故か頬を両手で挟んでクネクネしている妖怪っぽい動きのAさん。相談に乗ってもらっている相手に対し少々失礼だがそこそこ不気味である。


「もちろん!私が一人で建設しますので裏手に場所さえいただければ予算はいりませんので!」

「一人で建設ってそんな砂場でお城を作るみたいに・・・」

「ふふっ、知らないでしょうけど俺って泥遊びが得意なんですよ?」

「それは・・・エッチなお話ですか?」

「全く何言ってるかわからないです」


 ナニイッテンダコイツ・・・相談相手・・・間違えたかもしれないなぁ・・・。

 てか自分でフィオーラ嬢に話した方が早い?いやいや、新人が頭越しに上司と話を決めるとか集団行動で駄目な行為第一位だからね?

 一段ずつ上に上に報告していってもらう。このプロセスがとても大切なんだ。


 新しい相談相手を探すか、それとも断念するか・・・。

 しかしここで諦めてしまっては近々に新しい特殊性癖を獲得してしまう恐れがある。

 今ですらそこそこ危険領域(年上好き、嫌な顔されながら、戦闘職好き、下着はふんどしもイケる)ではないかと思われるのにここに『ソレ』関連のモノが加わるとか絶対に阻止しなければならないのだ。


 あれだな、少々荒業になるが『コイツならトイレくらいは作れそう』とAさんに想像させることが出来るだけの実績を見せつけるべきだな。


 幸いにして俺に『土魔法』が使えるのはフィオーラ嬢も知っているのだ。もちろんメイドさんは知らないだろうが。

 ならここでまず作るべきは『洋式の便器』ではなかろうか?うん、和式とも言えない床に四角い穴が空いただけの空間より俺の精神面も安定するし。

 問題点は一点、今までの生活で便器なんて作ったことがないってことだけど・・・まぁ姿形は見慣れたものである、なんとかなるだろう。・・・なるかな?


 てわけでAさんには上司のお姉様(お局様?綺麗なお姉さんって感じの人だった)に敷地(寮の裏手の空き地)の使用許可をとって欲しいと言い含めて『男子トイレ設置緊急会議場所』の食堂を後にする。

 う○この話を食堂でするのはマナー的には完全にアウトだと理解はしているが知らない娘さんを部屋に連れ込むわけにもいかないしね?食事時では無かったので勘弁してもらいたい。


 一人で庭に移動した俺、早速『土魔法』で便器の作成を試してみることに。

 トイレットペーパーの生産で必要そうなスキルは揃ってるし(ランクも全部5まで上げたし)大丈夫・・・だと思う。


 てなわけで


「製造、洋式水洗便器!」


 ・・・大丈夫なのか?こんなむっちゃ曖昧なコマンドワードで?


『時空庫の中に作成しますか?』

「あ、それでお願いします」


 出来たらしい。魔導板さん、相変わらずの高性能ツールである。まぁ記憶の中から情報を引き出してくれるらしいもんね?俺の頭がSSD。

 ちなみに『SSD』を伏せ字にしてしまうと『S○D』となり頭の中でエッチな妄想(動画)ばっかりしてる男の子みたいになってしまうから要注意。

 それも企画モノと言われるニッチな方面の作品だからな?


 前に述べられている俺の性癖でタイトルを出すなら


『ふんどしをしめた女騎士様に嫌な顔されながらおもらししてもらいたい』


 みたいな感じの。


 なにそれむっちゃ面白そうなんだけど?是非ともS○Dさんにはコラボしていただきたい。いや、SSDとコラボってなんだよ。


 まったく関係のない妄想に入ってしまったが一旦置いといて・・・便器である。

 いや、でもここまで優秀な魔導板さんなのだから『作成、動画、ふんどしをしめた女騎士様に嫌な顔されながらおもらししてもらいたい、女優さんはメルちゃんで』


『I can't do it』


 出来ないんだ・・・。それよりもどうしていきなり英語?何となく魔導板さんとの距離感を感じるんだけど・・・。

 うん、馬鹿なことをしてないで便器だよ便器。


 時空庫から新しく作成されたソレを取り出す。目の前に現れたのは


「洋式トイレの・・・埴輪?」


 素焼きで素朴な雰囲気を漂わせる洋式便器だった。

 あ、コロンって転けて水洗タンクの蓋が外れた。

 まぁ固定してないしそこそこ不安定な形だから土の上に取り出したら普通コケるよね・・・。


 てかさ、本体も便座も流すためのレバーも水洗タンクの中の浮き部分も全部素焼きで出来てるんだ?

 うん、やっぱりトイレの埴輪以外の何物でもないよね?兵馬俑の片隅にあっても違和感無さそうだもん。


 どうしてこうなった・・・いや、普通に持ってるスキルだけで適当に作れると思った俺がバカだっただけなんだけどさ・・・。

 そもそも土魔法で作れるのは煉瓦だけで陶器は無理だったんだから気付いて然るべきだよなぁ。

 でも土魔法、ランク上がったから煉瓦を出す以外にもいろいろ出来るようになったんだよ?たぶん。


 て事で魔導板で設計を開く。横着してないで最初からそうしろ?だって手を抜けるところは抜きたいじゃないですか!

 そう、行き詰まってこそ成長があるのだ。そしてトイレなんだから詰まって当たり前なのだ。・・・何でもないです。


「オッケー魔導板さん、トイレ・・・じゃなくて便器の作り方教えて?」


 そして広がる説明文とワイヤーフレーム画像。なにこれ機動する兵器の設計図みたい。

 むっちゃサイバー空間しててカッケェ!!・・・まぁワイヤーフレームになってるモノは便器なんだけどな。


『ベンキの生産には (土魔法ランク3+火魔法ランク3+陶工ランク3)+(設計ランク1+製造ランク1)+錬金術ランク3 のスキルが必要です』


 ふむ、必要なのは本体の加工をする『陶工スキル』と便座やタンク内の浮きを作る『木工スキル』レバーとか金具の作成に『鍛冶スキル』と『細工スキル』だな。

 加工する金属を持ってないことだけはわかった。

 いや、そもそも水洗にしようと思ったら水道が必要だよな。


 使う時に魔法で水を用意する?いや、他の人が「あ、トイレだ、していこう」ってなった時にそのまま放置されてしまうかもしれないし駄目だ。

 いや、そんなサンド○イッチマンのコントみたいな人はそうそう居ないだろうけどさ。

 なら毎回井戸から汲んで・・・めんどくさすぎる。

 そもそも汚水を何処に流すかも問題だよなぁ。


 ・・・失敗は発明の母だとかそんな感じの事誰かが言ってた様な気もするしな!一度で上手くいく恋なんて無いもんな!作ってるのは便器だけど!

 一度部屋に戻って問題点を洗い出すか。水洗便器だけに。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る