孤児院編 その5 極悪人顔のおっさん
グリグリ・・・ブチブチ・・・バサバサ・・・ギロリ・・・ザッザッザッ・・・ふっふふふ~ん♪
いきなり出だしから挙動不審感満載で申し訳ない。
ん?何の音かって?
グリグリ(草を掴んで左右に振り回す)・・・ブチブチ(根っこが千切れる)・・・バサバサ(抜けた草の根っこに残った土をはたいて落とす)・・・ギロリ(草を真剣な眼差しで見つめる)ザッザッザッ(空いた穴を埋める)・・・ふっふふふ~ん♪(鼻歌)
どうも、不審者です。
教会(付属孤児院)付近の草を駆逐し尽くしたので街中の空き地や道端での草むしり活動を開始しました。
もうね、最初の頃のご近所の皆さんの怪訝な眼差しが痛いのなんの。
いや、胡散臭そうに見られるだけだったらいいんだけどさ。年寄りとかあれだぞ?いきなり桶で水ぶっかけてきたりするからな?
排他的と言うか何と言うか・・・見た目が見た目だから仕方ないって言えば仕方ないんだけどさ、それでもせめて水より先に声掛けくらいからにしてくれないかな・・・。
春先だからよかったようなものの冬なら凍え死んでるからな?ちなみに着替えなんて無いのでその日は濡れたままで草むしりという更に不審者感三倍増しで一日過ごしたさ。
年寄りだけじゃなく普通のご家庭の子供達に小石とか投げられたりもするけど気にしたら負けである。小さな怪我くらいなら自分で治せるしね?
でも悪いことばかりでも無いんだよ、孤児院の草むしりしてた頃と違い
「お、坊主、今日も気持ちわりぃ顔で頑張ってんな!」
「おっさんも昼間っから人殺して来たような顔で元気そうだね!」
知らない人との会話なども発生するので割と楽しくもあったりする。
ちなみにさっきのおっさんの服装
『薄汚れた赤黒い染みのある革鎧に片手用の使い込んだ片手剣と小剣、背中と腰に小汚い袋』
とどう見ても山賊or場末の破落戸だがあれでも立派な『探索者』なのだ。
Q:『探索者』ってなんぞ?
A:簡単に言えば迷宮ダンジョン専門の冒険者だな。
Q:えっ?迷宮なんて有るの?
A:うん、結構いろんな場所にある。この北都だけでも3つあるし。
Q:もっと詳しく!
A:知るわけねぇだろ!ハリス君だぞ!?
「相変わらず口の悪いガキだな!まぁいいや、ほら、残りモンで悪ぃがそろそろ傷みそうだからくれてやるよ!」
「おおう・・・いつもすまないねぇ・・・これで病気のおっかさんも少しは元気になるよ!まぁ親に捨てられたから俺にお母さんとか居ないけどな!」
「どう反応しても俺が悪者になりそうな切り返しはやめろ!」
干し肉ゲットである!ちなみにおっさん干し肉が痛みそうなどと言ってるがただの照れ隠しで本当に賞味期限が近い訳ではない。おっさん、いわゆるツンデレ親父なのである。
だってホントに古い干し肉は色がね、すごいことになるもん。前の異世界で見た。孤児院?あそこはほら、肉っ気は一切ないから。
「この恩は必ず、必ず来世くらいで俺の知人が返すからね!」
「ふんわりした恩返しだな!てか来世は仕方なくてもせめて本人が返せよ!」
などと軽口で返すが動物系タンパク質と塩分の濃い味が育ち盛りの少年には本当にありがたい。
帰ったらシーナちゃんとわけわけして食べるんだ!いぢめっ子に取られないのかって?
大丈夫、火傷が伝染るとか言って誰も俺の身体には触れたがらないからね?つまりポケットに入れておけば見つからないのである。
てかさ、最初に干し肉もらった時にシーナちゃんにお裾分けしたら『おにく・・・』って呟いたかと思うと涙を流しながらはぐはぐしてたからな。
もらい泣きしちゃうから泣くな幼女、おっさんの涙腺は緩いんだ。
あと『わたし、ハリスのお嫁さんになってあげてもいいよ?』とか干し肉一切れで心ほだされ過ぎだからね?
とりあえず『そうだね、お嫁の貰い手が無くて売れ残ったら貰おうかな?』って答えたら『こんな顔だもん、貰い手なんてあるはずないじゃん・・・』とかもうね・・・。
すきあらば俺の心を折りに来るソードブレイカーも真っ青な性能のシーナちゃんである。
そしてちょくちょく見かけると干し肉をくれるさっきのおっさん以外にも声をかけてくれる人はいる。
軒先店先中庭などなどの草むしりを依頼してくる人や単純に人のいいおっちゃんおばちゃんなどなど。
爺さん婆さん?奴らは駄目だ、大多数が俺を見かけると排除する方に動きやがるからな!
日本でも――おっと、この話を続けるのは危険すぎると俺のファントムが警鐘を鳴らしている。
てか草むしりの報酬やお駄賃で小腹がふくれるのでこれらもものすごく有り難い。
まぁ労働時間から換算すると吃驚するくらいの低収入だけどな!時給ウン十円レベル。でも目的はお金稼ぎじゃなく経験値稼ぎだから!
(前世で)あちらこちらと駆けずり回って命懸けで魔物退治してた頃を思うと心底ラクラクオキラクな経験値稼ぎである。
そして繰り返しになるがご飯貰えるのホントに有り難いです!シーナちゃんに次ぐ生命線だもん。
持ち帰れるものは持ち帰ってシーナちゃんとはんぶんこすると『わたし、はりすのお嫁ry』うん、歴史は繰り返すんだ。
幼女の微笑みとか荒みきった心が癒やされるよね。もちろん恋愛感情ではなく父性本能的な何かだけど。
でも夜に水桶と手ぬぐい持ってきたと思ったら背中はだけて『拭いて?』って言うのはおじさんどうかと思うんだ。
いや、俺は大丈夫だから、自分で出来るから、拭いてくれなくていいから!わかった、わかったから背中だけでっ!!
そんなこんなでブチブチと草むしりに励みながら幼女とイチャイチャ(?)してるうちにも日にちは過ぎて行き・・・早ひと月。
俺がこっちに来た(来たという表現が正しいのかどうかは分からないけど・・・)のが
『(聖暦338年の)花中月の上小月の1の日(4月1日だな)』
そして今が
『花下月の中小月の6の日(5月16日)』
毎日毎日(子供と年寄りに)そこそこの嫌がらせされながら草むしりよく頑張った!
前回スキルを上げてから溜まった経験値は『121,000』
そう、いよいよである、とうとう『トイレ用の紙』が作れるようになるのだ!!
辛かったよ・・・ク○ベラ生活・・・あれほど人間としての尊厳を削ってゆくモノは中々存在しないのではなかろうか?
いや、削るのは尊厳じゃなくてう○こなんだけどさ。
○門を魔法で治癒したのも一度や二度じゃなかった、そして小さな木片からはみ出した・・・いや、多くは語るまい。
きっと異世界に迷い込んだ旅人の誰もが通る道だと思うから・・・。
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