ワタシの踵(かかと)に棲むものは

夜しかない空に

星の軌跡を目で追うと


ワタシは夜の淵に立ち

雨上がりのアスファルト


輝いて闇に煌めくは

天かそれとも

地の表


ワタシはわたしの神になる

そう言い聞かせ

夜を行く独りきりの

暗夜行


見えない光に瞳を閉じて

案ずる視線を背中に浴びるよ

一人ぼっちの神様は

気高くも辛すぎる


此処に光あれ

(誰に向かって)

あまねく光で照らし出せ

(それは何処に)

影のない世界に

(もう逃げられない)


それでも

やっぱり

わたしの足元に潜む影


小さい闇を消せない光

何のための神よ

誰も救えないから無力な神よ

ワタシを救わない無意味な神よ


祈りは誰のため

(ワタシは謡う)

願いは届かない

(あなたは何処に)


ワタシが敬うべきは何者ぞ

ワタシが慕うべきは何者ぞ


足元の黒い染みが囁いた

「アタシを好きにはなれないの」


アタシはずっとここにいる

あなたが死ぬまでここにいる

あなたが死んでも一緒だよ

離れはしないんだ永遠に


永久の祝福を

変わらぬ誓いの言葉を今

さあ

さあ!

さあ!!

結ばれよう、そして

結ばれたいあなたの願いは報われる

頷けば

「アタシはあんたの神になる」

その”神”は哄笑する

救いはここだ

今そこにいる

その幸に祝福を

ハレルヤ!


涙があふれ出た

止まらない嗚咽の声に

止められない涙のしずく

嬉しいのか

哀しいのか

もうわからない


「死ぬこととはこういうモノなんだよ」

誰かのささやきを耳にする

ああ、ああ、

嗚呼!

ワタシは天を仰ぎ頷いた

それで十分だった

ワタシの声は届いたのよ

ワタシの願いは成就する


もう誰の声も聞こえない

静まり返る街の夜

救われたわけじゃない

足元の影は離れない


黙ったまま

ワタシの心に棲んでいる

これからも一緒だ

ずっとずっとそこにいる

神になれなかったがそこにいる


いい所に行こうよ

一緒に行こう

その声は小さくて哀しい


ワタシの声だ


そうだ一緒に行こう

見捨てたりはしない

あなたはそこにいればいい

ワタシが連れて行ってあげるよ

どこへでも


ヒールの踵がこだまする

その先端の小さな世界に潜んでる

ワタシの影が愛おしい

ワタシも誰かの踵の先に

棲んでいるのだろうか


”自分で確かめたらいい”

真夜中がそっと耳打ちする


もう日付が変わる。

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