第12話

私がPCで作業を始めると、スッと空いてるデスクに座った。


福良さんが何か作業を始めたのを確認し、私は編集室を出た。


まだ心臓がバクバクしている。


キッチンにある冷蔵庫からペットボトルを取り、ガブ飲みした。


緊張して、喉がカラカラだ。


人生で初、五〇〇ミリペットボトル一気飲み。


「ふぅ、、、」


「そんな乾いてたん?」

須貝さんがニコニコしながら、話しかけてきた。


「あ、はい!めちゃめちゃ!」


「そっか!じゃぁ、さぞ美味しかったやろ?

睦くん、それ……僕のやけどね……」


須貝さんが私が飲み干したペットボトルを指さした。



ペットボトルには“ナイスガイ”とデカデカと書いてあった。


「あっ!わぁ‼︎‼︎

すみません‼︎すぐ 同じ物買ってきますね‼︎」


「ちょいちょい!待ちっ!」


須貝さんの横を通り抜け、買いに行こうと飛び出した勢いの前に腕を出され、私は鉄棒に前周りのような状態になった。


「おっと‼︎」


片手でヒョイっと持ち上げられ、私は抱っこ状態になった。


「別に良いって買ってこんでも。午後外出するし。それよりさ〜俺は気にせんけど、間接キスやね〜」

ニヤニヤしながら須貝さんが言う。

須貝さんの顔が近い。


お年頃の乙女ならこうゆう場面は、真っ赤にーってなるんだろうけど、そうゆう年頃はとっくに過ぎた。ホントに好きな人以外は何ともならない。


“わぁ、おっきな目、、綺麗だなぁ、、”

恥ずかしいや、照れるといった感情はなく、見つめてしまった。



「ちょっと‼︎‼︎‼︎‼︎ なにしてんの⁈⁈」


キッチンのドアを開け、大きな声で福良さん叫んだ。あまりのデカさに目が見開いてしまった。


そんな大声にも動じずに須貝さんは、私を抱っこし続けた。

「なにって……抱っこしとるんよ。」


「“しとるんよ”じゃないですよ‼︎ 」


福良さんは強引に私と須貝さんを離そうと間に入った。


「わかった、分かったから!危ないから!」


須貝さんはストンと私を床に下ろして、

「別に何もしとらんよ!そんなムキにならんなよ。 “取って食いやしなーいよ”」

そう言いながら福良さんの肩をポンと叩き、須貝さんはキッチンから出ていった。


私も後に続こうとしたが、腕を掴まれた。


「どうゆう状況になると、あぁなるわけ⁈」


“私が須貝さんの飲み物を飲んでしまって、間接キスだねって言われまして……”


すでに興奮状態の彼に、どストレートに言ったら何と返すだろうか。

私の小さなSが疼いた。

、、少し聞いてみたいな、、


しかし、基本小心な私はすぐに考えを消した。


、、きっともっと機嫌が悪くなる。


じゃぁ、、何て言うか……



「ねぇ、上手い言い訳ないかって、考えてるんでしょ?」


「えっ⁈」


「なんて言ったらこの場を切り抜けられるかなって考えてるでしょ?」


「えっ、、いや、そうゆうわけじゃ、、」


「はぁ、、無防備だなぁ、、ホント」


呆れたような言い方に、私は何だかムッとしてしまった。


「須貝さんは紳士なので何もしてきません‼︎私が無防備で無頓着でズボラでも、このオフィスには紳士な方しかいませんので、誰も何もしてきません!あと、もし、何かあったとしても、福良さんに何か言われる理由はないです!」


私は福良さんの腕を振り払い、キッチンを後にした。



“またやってしまった、、、”


はぁ、、今日はいつもより早く波にのまれた。




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