第11話
「普通言う⁈ 言わないでしょ、本人の前で‼︎」
「ごめんよ〜」
私が本当に怒っているのに、ニヤニヤしている“ヨッシー”コト、山本。
「まぁ、そんなプンプンしないでよ〜。よかったねー買えてっ!喜んでたし‼︎」
……まぁ確かに……予想以上の反応だった。
あんなキラキラな目をした二十八歳、、。
可愛すぎる。
だいぶニヤけるのを我慢したつもりだが、バレていないだろうか……
「ねぇ、ねぇ僕も食べていい、ダークチェリーパイ❤︎?きっと甘いだろうなぁ〜」
「くっ、、、」
声にならない。返す言葉が見つからなかった。
頭が回らない。
山本はニヤニヤしながら、撮影室に向かって行った。
私は大きく深呼吸した。
切り替えよう!ふぅ、、仕事!仕事しよう!
早々に“仕事モード”に入ろう。
そうすればこの緩みっぱなしの顔もどうにかなるだろう。
しかし、今日に限って割り振られた映像は、福良さんだった。
しかも私の大好きな『パズル対戦』系
福良さんがメンバーと対戦し、圧勝していく。
ハンデをつけても、何しても圧勝していく。
しかも、ノーカット版‼︎
贅沢な時間……
更にお給料まで貰える
こんな幸せな仕事あるだろうか……
指が勝手に動き、画面加工を施していた。
いつもよりスピードが上がる。
“10分で纏めるのが惜しい、、”
「……えっとー、、せめて、星とかじゃないかなぁって思うんだけど……?」
急に声を後ろからかけられ、体がビクッとしてしまった。
“この声…”
99%、心の中で確定している相手を想像しながら振り向き、ゆっくりと目線を上へと向けた。
やっぱり……
福良さんが立っていた。
口を手で覆っている。手が大きいのと、顔が小さいから顔が半分隠れてしまっている。見える部分の顔が、真っ赤だった。
真っ赤の理由は、私の施した加工のせい、、?
あっ、、、
画面を見なくても分かる。
私が施したんだから。
「えっ⁈何⁈どうしたんっ⁈ 二人とも顔真っ赤っかよ⁈」
編集室に入ってきた須貝さんが大きな声で言うもんだから、編集室中に響き渡った。
編集室は私達しかいなかったが、きっと休憩室まで聞こえている。
私は更に顔が熱くなった。
「だ、大丈夫です。ご、ご心配なく、、」
その反応に何かを察したのか、
「そっ!んじゃ!」
とニコッと笑って須貝さんは用を済ませて、さっさと編集室を出ていった。
「……で、、このハートマークいっぱいなのは……」
福良さんが須貝さんが出ていくのを確認し、聞いてきた。
「これは、、さ……あの…………ほら………………」
「なぁに?」
ドSなやつ。
分かってるくせに。
「、、、、そう!これは、ファンから見た福良さんをイメージしたんです‼︎」
私が照れながら“私の気持ちです”とでも言われると思ったんだろうか、かなり拍子抜けの声で、目が点になっている。
「えっ?」
「ですから、福良さんを好きな方から見た福良さんは、きっとこんな感じに見えるだろうなぁーと思いまして。何と言いますか、ハンデつけても何してもサラッと勝ち上がって、勝った後も“余裕感”あって、しかし、オトナ的な感じだけではなく、少年みたいなキラキラしたお目々でキャッキャ笑ったりして。そうゆう福良さんを見て、きっとファンの方々は“わぁ〜❤︎”ってなるだろうと考え、このような加工にしました。実際、このようなファン目線の加工をした事で登録者数は飛躍的に上昇したのではないかと考えております!」
間髪入れずに一気に捲し立てた。
「な、なるほど、、」
「はい、では私は作業に戻ります」
PCに体を向き替え、呼吸を整え、、
“落ち着け落ち着け”と心の中で唱えた。
口から心臓が飛び出てくるのではないかと、思わず口をグッと強く閉じた。
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