第7話

「わぉ‼︎川上君‼︎」

須貝が川上に駆け寄った。

さっきまでグッタリしていたのに、飛び上がる須貝さんは体力あるなぁと、未だ立ち上がれずにいる福良は思った。

「“川上君”やなくて、髪めちゃくちゃですよ?」

「いやさー聞いてくれるかい、コレはだね、福良さんがー」

「どうしたの、急に⁈」

須貝さんが変な事言い出す前に咄嗟に飛び上がり、二人の間に割って入った。


「あー、、次回企画時に使うやつ、事前に見たいかなーって」


「あっ!マジ‼︎ さすが気が利くわ‼︎見たいと思ってた‼︎」

須貝さんは川上さんから機器を受け取ると、そそくさと実験室へと入っていってしまった。


今、川上はある企業で働いていて、僕らはその企業とタイアップで動画を撮影している。


「……お世話になってます……」

後ろからひょこっと顔が出てきた。

「あぁ‼︎こんにちわー」

彼女は川上の会社の上司で、企画担当者。

「あぁ……どんな風にやってんか見たいゆーて……」

キョロキョロ部屋を見る彼女に、川上は丁寧に説明した。


――川上は彼女のコト、好きなのかな――



キッチンに行き“コーヒー、お願いしてもいいかな”と声をかけ、撮影室に戻ると二人の姿はなかった。


……編集室かな……?


ドアを開ける前から聞こえてくるこの声。

……明らかに俺と話す時より声が弾んでいる。


ガチャ


……やっぱり……


「じゃぁ、やっぱり今も計算早いんですか⁉︎」

「えー‼︎すごーーーい‼︎」


睦がキラキラした目をしながら川上と話していた。


「仕事……終わったの?」

話す二人の横に立ち、会話を遮った。

「……」

むくれた顔をして、彼女は俺を睨んだ。


「終わったの?」

嫌味っぽく、強く。


彼女は無言のままドカッと席に着き、パソコンに向かった。


ご不満な様子だが、あのキャッキャした態度を見続けるよりはいい。


「あの子、新しい子です?」

「あぁ……編集をお願いしてるんだ。今は本数も増やして、アップも頻度上げたからさ。」

「福良さん……」

川上はニヤニヤしている。

「なに?」

彼はコソッと耳打ちし、

「ヤキモチ妬くんすね……」

そう言って声を上げて笑った。


少しムッとしたが、笑う川上を見て何だか嬉しかった。

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