閑話:第10話 それ行け! 僕らの桜花さん!!③


「まったく……仕方がないのじゃ……あやつユーラときたら……まったく……」



今、妾はガルボちゃんの中で迷子になっているユーラを探しているのじゃ。



「桜花さん。ガルボちゃんの中を探索しない?」



『忘れられたオアシス』に帰る途中のある日。

ユーラから提案されたのじゃ。

まったく……こやつユーラは子供でしょうがないのじゃ……。


もちろん妾はOKを出し、2人並んでガルボちゃんの中を見て回ったのだが………。

あやつはすぐにウロチョロとし始め、最終的に迷子になっているのじゃ。

これだから……お子様は………。


まずは……ガルボの甲羅の上にいく………。

樹木でできているのか? っと思うぐらいに凹凸も少ない綺麗な甲羅、その上には屋敷の以外にも、さまざまは樹木が生えているのじゃ。

ユーラの〝結合〟能力のお陰で、皆生き生きと生い茂っているのじゃ。


そんな甲羅の中心には……妾の本体が綺麗に咲き誇っている。

我ながら綺麗だと思ってしまうくらいの満開じゃ。


そばにいた猫娘の仲間に声をかける。

ユーラを見なかったか? っと………何故に生暖かい目でこちらを見てくる?

何故にしゃがんで目線をあわせ頭を撫でてくる………。


は? はい? うもぉ〜! 妾は迷子じゃないのじゃ!!

あやつユーラが迷子になってい………はいはい。じゃないのじゃ!!

話をちゃんと聞くのじゃ!


妾は頭を撫でる手を払い除け、その場から走って逃げ出すのだった。



次にやってきたのが、ガルボのお腹の中。

樹木が絡み合ってできたガルボには内臓はないのじゃ。

駄々広い空間が広がり、色々な物資が保管されている……まぁ、倉庫なのじゃ。


食料、酒、日常品。

王都で買い漁った物資で一杯なのじゃ。


そんな中、クソエル………ルーディアが人夫に指示を出して荷物の整理をしていた。


なぁ? ユーラを知らぬか?

迷子? そう、ユーラが迷子に……なっ! 妾ではない!! ユーラが迷子になったのじゃ!!

何故? 皆は妾を迷子にする。 えぇえい!! 話を最後まで聞くのじゃ!!

もういうのじゃ!!


妾はプリプリと怒りながら、その場を後にする。


さて、屋敷に戻るか……ガルボの頭に行くか……。


ガルボの頭の上に人影を見つけた。

間違いないあやつユーラなのじゃ。


声をかけると、振り向き手を振ってくる。

妾は走って近づくと、両手をこやつに突き出す。

こやつはすぐに気がついたのか、妾を抱き抱えてくれる。

やっと指定席に戻れたのじゃ。


その後、迷子には気をつけるように注意をしたのじゃ。

姉であり、母親であり、保護者なのだから当たり前なのである。


こやつは微妙な顔をして頬を掻く。

何か言いたいことでもあるのか? と聞くと、



「迷子になってごめんね」



っと言って、視線を風景へ向ける。

妾は大人なので、すぐに許してあげるのじゃ。

そして、妾も風景へ目をやる。


それからしばらく、2人で流れる景色を楽しんだのじゃ。



おまけ

ユ 「桜花さん、ガルボちゃんってトレントさんの集合体でしょ。」


桜 「そうじゃが、それがどうしたのじゃ?」


ユ 「なら、普通に僕の居場所を聞けばよかったんじゃ?」


桜 「…………。」


ユ 「…………。」


桜 「お、鬼ごっこの練習……そう、練習をしていたのじゃ……。」


ユ 「そっか。なら今度、鬼ごっこしようね。」


桜 「グヌヌヌヌ。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る