第21話 凶賊が来たのです。(裏)


最近、ここ『交路のオアシス』でまことしやかな噂が流れている。


なんでも、誰も行きたがらない『忘れられたオアシス』が、『木々に囲まれた楽園のオアシス』に生まれ変わったと言う話だ。


噂の元が領主の息子なのらしいが誰も信じなかった。


そりゃそうだ。

信じて行ってみて、何もなければ野垂れ死ぬかもしれないのだから。


そんな中、一人の小娘が『木々に囲まれた楽園のオアシス』へ向かったらしい。

大爆笑だ。 いい酒のつまみだ。

その晩、その話だけでオアシス中の飲み屋が儲かっただろう。


▼▼▼


10日もすれば、小娘の話などみんな忘れていた。

そんな中、小娘が帰ってきた。

珍しい果物と共に。


オアシス中が大騒ぎになった。

そりゃそうだ。

品数こそ少ないが、ここいらじゃ手に入らないりんごや梨を手に入れてきたのだ。

特に〝さくらぼん〟? とか何とか言う見たこともない果物を領主へ献上したらしく。

一躍時の人になりやがった。


数日前に商隊を襲ったばかりで懐はまだ暖かいが、こんな美味しい話を野放しにしていいわけがない。

すぐに仲間を集めた。


仲間たちも話を聞いたのかノリノリだ。

あわよくば、新しい拠点にすると盛り上がったほどだ。


俺たちは多めの食糧と水を持って出発したのだ。


▼▼▼


出発から8日目。


食料と水を多めに持ったとは言え、そろそろ引き返すかどうかを決める必要が出てきた。

そんな時、俺たちはそれを見つけたのだ。


砂漠の遠い向こうに、大量の木々が生い茂っていたのだ。


近づくにつれ、その異常さに気づく。

木々だけでも驚きなのに、砂漠のど真ん中に草原があるのだ。


夕方ごろにそこへたどり着いた。

俺は斥候を一人放つと、木々の中へと行かせた。

斥候はすぐに戻ってきた。

木々の中には泉があり、その中心にある島に一人だけ人が住んでいるらしい。


そこで俺は考える。

砂漠のど真ん中にこんな草原を作れるのだ。

きっとすごい魔法使いなのだろう。

襲撃するなら夜中だ。

俺達は木々の前の草原で息を潜め、日が暮れるのを待った。


日が沈むと同時に再び斥候を放ち、泉の島の明かりも消えたのが確認できた。

もうしばらく待ち、仲間へ指示をする。



「捕まえなくていい! 殺せ! それで全部が俺達の物だ!」



俺たちは一斉に剣を抜き構え、木々の中へと入った。

その瞬間…………………


〝ドゴン!!〟


とてつもない衝撃で、俺の身体が吹っ飛ぶ。

何が起きたのかわからない。


〝ドガッ!!〟


激しく地面に叩きつけられる。


………今わかるのは、身体が動かないことだけだ………。



「く、来るな!!」

「助けくれ!!」

「ぎゃー!!」

「離せ!! 離しやがれ!!」



聞こえてくる仲間の怒号と悲鳴。

吹き飛ぶ仲間たち……。


仲間が何かと戦っている……戦って?

いや、一方的に蹂躙されている……何に?


目だけを動かして周りを見る。

なんだあれは……人……?


〝ガサッ〟


足元で音がしたので視線を動かす。

そこにいたのは3m位の木の人形………違う……あれはトレントだ。

気がついた時にはもう遅かった。


殴られ吹き飛ばされ、阿鼻叫喚に宙を舞う仲間達………。

そこは地獄と化したのだ。


俺達は、大小様々なトレントに囲まれ、なすすべもなく蹂躙されるのだった。


⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘

異世界ファンタジー週間 108位をいただき、

アクセス数も10.0KPVを超えました。

本当にありがとうございます。

皆様に育てていただいているこの作品。

今後も楽しく書いて投稿していきますのでよろ

しくお願いします。

         2022.6.22 同瀬馬野抱枕

⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘⌘

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る