第5話 恐怖でしかないんだけど……です。


おはようございます。

荒野生活8日目。

荒野の野生猿こと元王子のユーラです。


明るくなったら起き、桜花に水をあげるという一連の流れ作業が構築されました。


さて、毎日桜花へ水をあげていて気づいたことが一つ。

桜花を中心にした周りに青々とした草花が生い茂っているのだ。

前から気にはなって調べていましたが。

ついにわかりました!


どうやら桜花の樹高と草花が生い茂る範囲の半径が大体同じ長さになっているっぽいのです。


すごくない!?

うまくいけば、荒野が林もしくは草原になるんだよ。

あれ? 僕って神なの?

神じゃなければ……ある種、恐怖でしかないんだけど………。


とりあえず、使えないスキル? 言った奴出てこい! 神様は御立腹だぞ!!


試しに穴を掘ってみる。

荒野とは思えないくらい、いい土だ。


悔しい……水さえあれば………。

先程、桜花に水をあげたら、ついに水の魔石が限界を迎えて割れてしまった。

もう、うつ手がない。

この力を使って、世界を青々とさせたかった……。


桜花の幹にそっと触ると、自然と涙がこぼれてくるのだった。


▼▼▼


そして、荒野生活9日目。



「おはよう。桜花」



朝を迎え、桜花さんの下へ行き元気な挨拶をする。

桜花は枝葉を揺すって返答をしてくれる。

そのまま桜花に近づいた際、桜花の横に何かの死体が横たわっていた。


よく見ると抱きつき魔ハギングウルフの死体だ。

それも複数の死体が山積みになっている。


なにこれ……恐怖でしかないんだけど……。



「桜花さんが退治したの?」


〝カサカサカサカサ〟



枝葉を揺らして答えてくれた。

どうやら桜花が倒してくれたようだ。



「ありがとう」



幹に触りながら御礼を言うと、再び枝葉を揺らしてくれる。

いいやつだ。


………。

…………。

……………って、そうじゃない!!



「桜花さん。桜花さん。どうやって抱きつき魔ハギングウルフを倒したんだい?」



僕が優しく問いただすと…………桜花さんは、ズボリと土から這い出し動き出した。

そして、どこかに向かって走っていった。

あまりのことに僕のお目目は空の彼方へ。


待つこと数時間。


桜花さんが抱きつき魔ハギングウルフを四匹、小脇に抱えて戻ってきた。

……うん。桜花さん……君はいつのまにかになってたのね………。


嬉しいけど……話を聞いてなかったから、恐怖でしかなかったよ。




《備考》

・ハギングウルフ 

▶︎ 冒険者が付けた渾名は〝抱きつき魔〟。森に一定数いる魔獣。2〜5匹の群れをなす。獲物を狩る際は二足で立ち上がり、両手を広げて突っ込んでタックルをかまして押し倒す。そして、押し倒した獲物の喉元を噛み砕く。その肉は脂が乗ってなかなかの美味。毛皮は外套によく使われ、初級の冒険者に人気。


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いつも読んでいただきありがとうございます。

フォローもありがとうございます。

【☆☆☆】の評価の方もよろしくお願いします。

                  同瀬馬野抱枕

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