第4話 必死に生きることにするのです。


おはようございます。

すっかり原始人のような生活……洞穴の住人になった元王子ユーラです。


あれから5日(荒野生活7日目)、満開だった桜も散り、桜花は青々とした葉を生い茂らせている。

風が吹くたびにカサカサと心地良い音を立てている。


高さも見上げないとテッペンが見えないくらい高く、幹も両腕では抱えきれないくらい太くなった。


……うん? 今、桜花から抗議があった?

……な訳ないか。


桜花がすくすくと育ってくれるのはとても嬉しい。

ただお別れの時期が近づいてきた。

そう。物資の底が見えてきましたのです。


薪は使い切ったのでもう火を炊けません。

幸いだったのは、荒野の気温が高いこと。

夜もそこまで冷えないので、火がなくても毛布でなんとか凌げる。


ただ、食料がね………食事も食べる回数を減らして……後5日くらい。

そして、一番の問題は水だ。

水の魔石が限界にきている。


あぁ〜もう終わりだ……。

いっそのこと、何もかも諦めてしまおう……。


そう思って、残りの水を全部を桜花にあげようと決心する。

僕は洞窟を出て桜花に近づく。



〝コツン〟



水をあげようとしていると、頭に何かが当り地面に落ちる。

落ちたものをよく見ると…………それは〝さくらんぼ〟だった。


………あれ? この品種って果実が実るんだっけ?


しかも、前世では食べていた〝さくらんぼ〟より大きい。

とりあえず食べてみる。


………!

…………!!

……………甘い! 美味しい!


それどころか、喉の渇きも治る!

これはもう回収するしかない!



「桜花さん。さくらんぼ落としてくれない?」



何気なしにお願いしてみると、カサカサと枝が揺れ実がボトボトと落ちてきた。


まるで僕の言葉がわかるようだ。

そんな訳ないか……っと独り言を言いながら、この時僕はたまたま風が吹いたんだと思い込んでいた。

すぐに気にするのをやめ、落ちたさくらんぼをマジックバックへ詰め込んでいく。


結構な数が落ちている。

全部で……数百は拾っただろうか。

これでしばらく生き延びれる………。



「桜花さん。ありがとう。僕、必死に生きることにするよ」



希望が見えたせいか……少し涙声になってしまう。

僕はさくらんぼのお返しに、残りわずかの水のほとんどを、桜花へあげることにしたのだった。



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             同瀬馬野抱枕

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