第3話 目を擦りすぎただけです。


おはようございます。

荒野でぼっち生活を始めた元王子ことユーラです。


ぼっちじゃねぇし!


洞穴の入り口が明るくなって目を覚ましました。

今となっては唯一の友達に会うために外に出る。



「おはよう。おう…………おっつ!!」



そこには、5m程度まで育った〝桜花〟が居た。


………うん。

…………ううん?

……………どうなってるの?


目を擦るが現状は変わらない。


枝には花の蕾がついていた。

とりあえず桜花に近づいて幹に触ってみる。

うん。触れる。幻覚ではない。



「お、おはよう。桜花」



僕が挨拶すると、サワサワと枝が揺れる。

返答してくれたみたいで嬉しい。



「たんとお飲み」



水の魔石から水を出す。

本当はいっぱいやりたいが、自分の分もあるから我慢してもらう。

こんな状況でも生にしがみつく自分が情けない。


とりあえず、桜花に背を預けるように座り朝食を食べる。

木陰が気持ちいい。


アイテムバッグに入っていた味気ない食事をとる。食べる量を減らし、1日でも長く保つようにする。


それから周辺の探索を始める。

うん………一面見渡す限りの荒野。

見事に周りに何もない。


昨日降ろされた道まで戻るが、誰も通る気配がない。

風が吹いて、回転草が転がって行く。


好き好んで最果ての街に行く人はいないか……。

まぁ、元々荒くれ者や訳あって流れていった者が集まる街だ。


諦めてその日は洞穴に戻る。

やることが無い………仕方なく毛布に包まり横になる。


日はまだ高いが、その日はそのまま寝て過ごした。


▼▼▼


次の日。

周りが明るくなって目を覚ます。

結局、ほぼ一日寝てしまった……。


けど、桜花の成長が楽しみですぐに外へ出る。


…………。

……………。

………………グスン。


自然と涙が流れてしまう……不覚にもそのまま号泣してしまう。

ち、違うし……目にゴミが入っただけだし、目を擦りすぎただけだし……。

誰に共なく言い訳をしてしまう。


目の前に広がる光景はあまりにも神々しかった。


荒野に聳える一本の桜の木。

昨日より倍以上に育った桜花は、満開の花を咲かせていた。


世界をピンク色に染める咲き誇った桜の花。

それと、風に舞う花びら……もう、死んでもいいと思えるくらいに美しかった。


気がつくと夕方だった。

それくらいその景色に心を奪われていたのだ。

急いで水をやり、自分の食事を取る。


それだけで一日が終わってしまった。


そろそろ、物資に不安が出てきたが、この景色の前ではどうでもいいことだったのだ。



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             同瀬馬野抱枕

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